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お調子者の婚約者にも、外面の良い妹にもうんざりでしたが…今の私は、とても幸せです!
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「…本当に逞しくて、頼りになりますわ!あなたの様な素敵な方が婚約者だなんて…お姉様が、羨ましいですわね。」
「いやぁ、それ程でも…!」
そう言って鼻の下を伸ばし、だらしない顔をして居るのは…私の婚約者だ。
どうやら偶然、町で買い物帰りの妹を見かけ…荷物を運ぶのを手伝ってあげたらしい。
どうせ私との婚約など、家同士が決めた事だし…何より、可愛い妹にあんな事を笑顔で言われたら…そんな反応にもなるわよね。
でもね…あの子のあの笑顔、あれは偽物だから。
だって以前、あの子私にこう言ったのよ─?
『お姉様の婚約者って…力だけが取り柄の、体力馬鹿ですよね?そんな野獣の様な方が婚約者だなんて…私だったら、絶対お断りですのに─。』
確かに、彼は体力は自慢できるが、賢さの方は…。
お世辞を真に受け、すぐにああして調子に乗ってしまうしね。
そのせいで、一緒に居る私が何度も恥をかいたりして来たわ。
まぁ、妹も妹で外面がいいから…ああして、コロッと騙されてしまうのも分かるけれど─。
妹は、皆の前では可愛らしく愛嬌がある姿で居るが…私の前では、それはもう意地の悪い顔を見せる。
今の彼に言っても、とても信じて貰えないでしょうがね─。
ところが…それから、数か月後の事だ─。
「俺との婚約だが…無かった事にして欲しい!」
「…はい?」
「俺は君と別れ…君の妹を、新たに婚約者に迎える事にした。」
「あの子には、既に婚約の話が出てますが…?」
「だって…以前あの子、言ってただろう?俺の様な素敵な人を、婚約者に持つ君が羨ましいって。あれは、実は密かに俺の事が好きで…それに気付いて欲しくて、あんな事を言ったんじゃないかと思って─。」
「はぁ…。」
「それで…俺はその後、もう一度妹に確認したんだ。俺を本当に素敵だと思うか…俺が婚約者だったら、君はどう思うかって。」
「…妹は、何と?」
「勿論、素敵だと…。俺には、魅力が溢れている…そんな人が婚約者だったら、私は幸せになれると思う。彼女は、そう言ってくれた。だから俺は、あの子の為に色々尽くしたし…何なら、一緒に住む家まで用意したんだ!もう、今更後には引けない!」
色々と、ねぇ…。
「分かりました。あなたと婚約破棄します。」
私の返事に、彼は飛び上がるほど喜び…そして、私の元を去って行った─。
※※※
「お姉様…どうしてです?どうして、あの人を止めてくれなかったんですか!?」
床に崩れ落ち…涙を滲ませ、恨みがましい目で私を見てくる妹。
それはそうだろう。
長年片思いしていた殿方が居て、漸く婚約まで漕ぎつけたと思ったら…横からどうでもいい男が割り込んで来て、婚約の話が無しになってしまったのだから─。
それどころか─。
「あんなむさくるしい男が婚約者だ何て…絶対に嫌よ!私は、美形で賢い男が好きなのよ!?あんな人、全く正反対じゃないの!」
妹は、私の元婚約者と婚約する事になり…彼が用意した家で、二人で住む事になってしまったのだ。
「だって、今更断れないでしょう?あなた…彼にお世辞を言って調子に乗らせ、ドレスやアクセサリーを好きなだけ買って貰ったそうじゃない?極めつけは、家まで買わせちゃうんだから…あなたも、大したものねぇ。」
「あ、あれは、あの人が勝手に─」
「でも、彼が家を見せた時…あなた、素敵な家だって…ここに住めたら幸せだと、そう言ったんでしょう?だったら、有難く住まわせて貰いなさい。それが嫌なら…彼に使わせたお金を全て返し、婚約を破棄したら?」
「そ、そんなお金、持ってないわよ~!」
号泣する妹に、私は溜息を付きこう言った。
「私、前から言ってたでしょう?外面が良いのも大概にしろと…。中にはあなたの言葉を本気で捉え、勘違いする者も居るのだからって─。特に、あの人にそういう事をするのは、辞めておけと…言ったわよね?」
「そ、そうだけど…でも─」
「なのにあなたは、そういう馬鹿を揶揄うのが面白いのだと、ちっとも真面目に話を聞かなくて…それでこんな事になったのなら、自業自得じゃない─。」
こうして妹は…好きでもない、むしろ嫌いな男と結ばれる事になったのだ。
そして、彼の元で生活しているが…以前の様に愛想の無い妹を見た彼は、妹を酷く責め…今では、妹にきつく当たるようになってしまったと言う。
しかし、妹は借りたお金の事もあるので、そんな彼に強く出る事も出来ず…彼の機嫌を損ね酷い目に遭わない様、必死に愛想を振りまく事にしたらしい。
それがもう、辛くて堪らない…。
こんな生活は地獄の様だと、こっそり私に手紙を送って来たが…私は、それを破って捨ててしまった。
だって…私にはもう、既に新しい婚約者が居たから…今更昔の男の話を持ってこられても、迷惑なだけだもの。
今の相手はとても賢く、紳士的な方で…一緒に居ると、とても心が落ち着くわ。
そしてそういう方だから、私が人前で恥をかかされる心配もない。
彼は本当に、私には勿体ない程の自慢の婚約者だわ。
これまで、お調子者の婚約者にも、外面の良い妹にもうんざりしてきた私だったけれど…その二人が共に消えてくれた上に、そのおかげでこうして良縁を手に出来るなんて…本当に幸せだわ─!
「いやぁ、それ程でも…!」
そう言って鼻の下を伸ばし、だらしない顔をして居るのは…私の婚約者だ。
どうやら偶然、町で買い物帰りの妹を見かけ…荷物を運ぶのを手伝ってあげたらしい。
どうせ私との婚約など、家同士が決めた事だし…何より、可愛い妹にあんな事を笑顔で言われたら…そんな反応にもなるわよね。
でもね…あの子のあの笑顔、あれは偽物だから。
だって以前、あの子私にこう言ったのよ─?
『お姉様の婚約者って…力だけが取り柄の、体力馬鹿ですよね?そんな野獣の様な方が婚約者だなんて…私だったら、絶対お断りですのに─。』
確かに、彼は体力は自慢できるが、賢さの方は…。
お世辞を真に受け、すぐにああして調子に乗ってしまうしね。
そのせいで、一緒に居る私が何度も恥をかいたりして来たわ。
まぁ、妹も妹で外面がいいから…ああして、コロッと騙されてしまうのも分かるけれど─。
妹は、皆の前では可愛らしく愛嬌がある姿で居るが…私の前では、それはもう意地の悪い顔を見せる。
今の彼に言っても、とても信じて貰えないでしょうがね─。
ところが…それから、数か月後の事だ─。
「俺との婚約だが…無かった事にして欲しい!」
「…はい?」
「俺は君と別れ…君の妹を、新たに婚約者に迎える事にした。」
「あの子には、既に婚約の話が出てますが…?」
「だって…以前あの子、言ってただろう?俺の様な素敵な人を、婚約者に持つ君が羨ましいって。あれは、実は密かに俺の事が好きで…それに気付いて欲しくて、あんな事を言ったんじゃないかと思って─。」
「はぁ…。」
「それで…俺はその後、もう一度妹に確認したんだ。俺を本当に素敵だと思うか…俺が婚約者だったら、君はどう思うかって。」
「…妹は、何と?」
「勿論、素敵だと…。俺には、魅力が溢れている…そんな人が婚約者だったら、私は幸せになれると思う。彼女は、そう言ってくれた。だから俺は、あの子の為に色々尽くしたし…何なら、一緒に住む家まで用意したんだ!もう、今更後には引けない!」
色々と、ねぇ…。
「分かりました。あなたと婚約破棄します。」
私の返事に、彼は飛び上がるほど喜び…そして、私の元を去って行った─。
※※※
「お姉様…どうしてです?どうして、あの人を止めてくれなかったんですか!?」
床に崩れ落ち…涙を滲ませ、恨みがましい目で私を見てくる妹。
それはそうだろう。
長年片思いしていた殿方が居て、漸く婚約まで漕ぎつけたと思ったら…横からどうでもいい男が割り込んで来て、婚約の話が無しになってしまったのだから─。
それどころか─。
「あんなむさくるしい男が婚約者だ何て…絶対に嫌よ!私は、美形で賢い男が好きなのよ!?あんな人、全く正反対じゃないの!」
妹は、私の元婚約者と婚約する事になり…彼が用意した家で、二人で住む事になってしまったのだ。
「だって、今更断れないでしょう?あなた…彼にお世辞を言って調子に乗らせ、ドレスやアクセサリーを好きなだけ買って貰ったそうじゃない?極めつけは、家まで買わせちゃうんだから…あなたも、大したものねぇ。」
「あ、あれは、あの人が勝手に─」
「でも、彼が家を見せた時…あなた、素敵な家だって…ここに住めたら幸せだと、そう言ったんでしょう?だったら、有難く住まわせて貰いなさい。それが嫌なら…彼に使わせたお金を全て返し、婚約を破棄したら?」
「そ、そんなお金、持ってないわよ~!」
号泣する妹に、私は溜息を付きこう言った。
「私、前から言ってたでしょう?外面が良いのも大概にしろと…。中にはあなたの言葉を本気で捉え、勘違いする者も居るのだからって─。特に、あの人にそういう事をするのは、辞めておけと…言ったわよね?」
「そ、そうだけど…でも─」
「なのにあなたは、そういう馬鹿を揶揄うのが面白いのだと、ちっとも真面目に話を聞かなくて…それでこんな事になったのなら、自業自得じゃない─。」
こうして妹は…好きでもない、むしろ嫌いな男と結ばれる事になったのだ。
そして、彼の元で生活しているが…以前の様に愛想の無い妹を見た彼は、妹を酷く責め…今では、妹にきつく当たるようになってしまったと言う。
しかし、妹は借りたお金の事もあるので、そんな彼に強く出る事も出来ず…彼の機嫌を損ね酷い目に遭わない様、必死に愛想を振りまく事にしたらしい。
それがもう、辛くて堪らない…。
こんな生活は地獄の様だと、こっそり私に手紙を送って来たが…私は、それを破って捨ててしまった。
だって…私にはもう、既に新しい婚約者が居たから…今更昔の男の話を持ってこられても、迷惑なだけだもの。
今の相手はとても賢く、紳士的な方で…一緒に居ると、とても心が落ち着くわ。
そしてそういう方だから、私が人前で恥をかかされる心配もない。
彼は本当に、私には勿体ない程の自慢の婚約者だわ。
これまで、お調子者の婚約者にも、外面の良い妹にもうんざりしてきた私だったけれど…その二人が共に消えてくれた上に、そのおかげでこうして良縁を手に出来るなんて…本当に幸せだわ─!
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