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17.告白
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レオンさんが迎えに来るまで、僕は昨日ブライト王子達と話をしたあの噴水広場で、ルキ君とルカ君と一緒に待っていた。
二人と他愛のない会話をしていると、前方から、こちらに向かって見覚えのある人影が駆けて来た。
「レオンさんっ…!」
「アル!!」
僕が小走りで近付くと、険しい顔をしていたレオンさんの表情が少し緩む。
「アル、…どうして何も言わずに宿を出て行ったりしたんだ。ファルコから、お前がまだ帰って来ていないと聞いて、肝が冷えた。」
じっと、真意を探るように見つめられ、僕は思わず視線を逸らしてしまった。
「まあまあ、そういうのはもう少し落ち着いてからでいいんじゃない?今は、アルフレイド君もいっぱいいっぱいみたいだし。ね、ルキ」
「そうだよそうだよ!……っと、そろそろ僕等は帰ろっか。ね、ルカ」
いつの間にか僕等の後ろにいた二人が、ニコニコと笑いながらレオンさんを宥めると、「またね。」と言って、足早に去って行った。
「今の二人は誰だ?」
「…僕を、助けてくれた人達です。」
「助けてくれた、って……。アル、その汚れはなんだ?」
「あ、これはその、」
僕が着ているのは真っ白いワンピースだ。
おそらく地面に押し倒されたときに汚れたのが、わかりやすく残ってしまっていたのだろう。
何かに感づいたレオンさんが、顔を背けた僕の頬を掴み、向き直させる。
「何があった」
「……」
「…ゆっくりでいいぞ」
低くて落ち着いた声が、僕を支えてくれる。
「………何も、凄いこととかじゃ、なくて。ほんと、しょうもないことですよ。人間に…っ、襲われた、ってくらいで……」
言いながら、先程のことを思い出してしまい、恐怖と緊張で声が掠れて、うまく伝えることが出来ない。
「――!」
ぐっと、体を引き寄せられる感覚と、大きくて広いその胸に抱き留められる感触が、僕の体を包み込んだ。
僕を抱き締めているその手は震えていて、きゅぅっと胸が締め付けられる。
僕はそっとレオンさんの背に手を回し、少しでも震えが収まるように、安心させるために摩ってみる。
「……大丈夫です。悪いのは僕を襲った人間で、もっと悪いのは勝手に出て行った僕自身で、それに…、僕が言えたことではないですが、一番悪くないのはレオンさん。あなたです。こんな夜になっても、僕を探してくれたあなたは、何も悪くありません。」
「すまない…、すまない、すまないすまないっ…!俺が、守るって…決めたのに……っ!」
「僕は十分、あなたに守ってもらっています。現に、今僕は、こうしてあなたの傍に居るだけで、その…、安心できているし、恐怖を忘れられます」
本人に向かってそんなことを言うのは恥ずかしいが、本当のことだ。
幸い、赤くなっているであろう顔は今のレオンさんからは見えないのだから、この際、全部言ってしまおう。
「僕は、寂しかったんです。
…いつも、あなたと一緒に居たから。だから、勝手に外に出ました。
ごめんなさい。」
「謝らなくていい。お前は悪くない。俺こそ、何も伝えずに行って悪かった。
…今日俺が外に出ていた理由は、…えっと、色々、相談したいことがあって最初は王城で、ブライトに会いに行ってきた。それから……、これを、買いに…」
レオンさんはそう言って僕の背に回していた手を離すと、おぼつかない手つきで、懐から何かを取り出した。
「…!」
レオンさんが取り出したのは、…リングケースだった。
「本当はもう少し経ってからにしようと思っていたんだが…。東洋の国で言う、善は急げ、というか、思い立ったが吉日というやつだと思って、…………アル、左手、出してくれるか?」
僕は言われた通り左手をレオンさんの前に差し出すと、レオンさんは緊張した様子でパカっと、リングケースを開けた。
そして、中に入った指輪を取り出し、僕の手に、嵌めた。
「綺麗…」
リングの中央にある小さな藍色の宝石が、月の明かりに反射して、キラリと輝いている。
「こういうとき、どんなことを言って、どんな表情で、この気持ちを伝えたらいいのか、よくわからない。
…だから、俺の想いをそのまま、お前に伝えるよ。
アル、お前が好きだ。俺の婚約者になってほしい」
二人と他愛のない会話をしていると、前方から、こちらに向かって見覚えのある人影が駆けて来た。
「レオンさんっ…!」
「アル!!」
僕が小走りで近付くと、険しい顔をしていたレオンさんの表情が少し緩む。
「アル、…どうして何も言わずに宿を出て行ったりしたんだ。ファルコから、お前がまだ帰って来ていないと聞いて、肝が冷えた。」
じっと、真意を探るように見つめられ、僕は思わず視線を逸らしてしまった。
「まあまあ、そういうのはもう少し落ち着いてからでいいんじゃない?今は、アルフレイド君もいっぱいいっぱいみたいだし。ね、ルキ」
「そうだよそうだよ!……っと、そろそろ僕等は帰ろっか。ね、ルカ」
いつの間にか僕等の後ろにいた二人が、ニコニコと笑いながらレオンさんを宥めると、「またね。」と言って、足早に去って行った。
「今の二人は誰だ?」
「…僕を、助けてくれた人達です。」
「助けてくれた、って……。アル、その汚れはなんだ?」
「あ、これはその、」
僕が着ているのは真っ白いワンピースだ。
おそらく地面に押し倒されたときに汚れたのが、わかりやすく残ってしまっていたのだろう。
何かに感づいたレオンさんが、顔を背けた僕の頬を掴み、向き直させる。
「何があった」
「……」
「…ゆっくりでいいぞ」
低くて落ち着いた声が、僕を支えてくれる。
「………何も、凄いこととかじゃ、なくて。ほんと、しょうもないことですよ。人間に…っ、襲われた、ってくらいで……」
言いながら、先程のことを思い出してしまい、恐怖と緊張で声が掠れて、うまく伝えることが出来ない。
「――!」
ぐっと、体を引き寄せられる感覚と、大きくて広いその胸に抱き留められる感触が、僕の体を包み込んだ。
僕を抱き締めているその手は震えていて、きゅぅっと胸が締め付けられる。
僕はそっとレオンさんの背に手を回し、少しでも震えが収まるように、安心させるために摩ってみる。
「……大丈夫です。悪いのは僕を襲った人間で、もっと悪いのは勝手に出て行った僕自身で、それに…、僕が言えたことではないですが、一番悪くないのはレオンさん。あなたです。こんな夜になっても、僕を探してくれたあなたは、何も悪くありません。」
「すまない…、すまない、すまないすまないっ…!俺が、守るって…決めたのに……っ!」
「僕は十分、あなたに守ってもらっています。現に、今僕は、こうしてあなたの傍に居るだけで、その…、安心できているし、恐怖を忘れられます」
本人に向かってそんなことを言うのは恥ずかしいが、本当のことだ。
幸い、赤くなっているであろう顔は今のレオンさんからは見えないのだから、この際、全部言ってしまおう。
「僕は、寂しかったんです。
…いつも、あなたと一緒に居たから。だから、勝手に外に出ました。
ごめんなさい。」
「謝らなくていい。お前は悪くない。俺こそ、何も伝えずに行って悪かった。
…今日俺が外に出ていた理由は、…えっと、色々、相談したいことがあって最初は王城で、ブライトに会いに行ってきた。それから……、これを、買いに…」
レオンさんはそう言って僕の背に回していた手を離すと、おぼつかない手つきで、懐から何かを取り出した。
「…!」
レオンさんが取り出したのは、…リングケースだった。
「本当はもう少し経ってからにしようと思っていたんだが…。東洋の国で言う、善は急げ、というか、思い立ったが吉日というやつだと思って、…………アル、左手、出してくれるか?」
僕は言われた通り左手をレオンさんの前に差し出すと、レオンさんは緊張した様子でパカっと、リングケースを開けた。
そして、中に入った指輪を取り出し、僕の手に、嵌めた。
「綺麗…」
リングの中央にある小さな藍色の宝石が、月の明かりに反射して、キラリと輝いている。
「こういうとき、どんなことを言って、どんな表情で、この気持ちを伝えたらいいのか、よくわからない。
…だから、俺の想いをそのまま、お前に伝えるよ。
アル、お前が好きだ。俺の婚約者になってほしい」
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