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14.太陽

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――あれから数日。
僕等は次に向かう目的地が決まり、今日。
シクリーの街を出ることとなった。



「ばぁちゃん、短い間だったけど、世話になったな。」

「お礼なんていらないよ。逆にこっちがしたいくらいだ。アンタらが事件を解決してくれたお陰で、うちの孫がまた元気に外で遊ぶようになったんだ。……本当に、ありがとう」


荷物を纏めて、宿を出る前に宿主のおばあさんや従業員の方々に挨拶をした。

おばあさんは瞳を潤ませて僕ら一人一人の手を優しく握り、「ありがとう」と言って微笑んだ。



次の街へ向かうため、今回は船に乗っての移動だ。
さすがに一瞬で魔力が減る転移魔法を、頻繁に使うことは出来ないのである。


「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」


港で船を待っていた時だ。
咆哮のような大声と共に、僕等を見送るために集まった街の人々をかき分けながらこちらへ向かってくる人物が…一人。


「あれ、この間の少年じゃね?確かリフトとかいう…」

だよ!!人の名前を間違えんな!」

そうですよファルコンさん。僕が彼につけた名前を間違えるなんて酷い――って、そうじゃない。

「リヒト?『待って』て、何かあったんですか?」

「ああ。あった。いっぱいあった。色々あったんだけど、今言いたいことは一つだけだ。――――――――オレを、。」







「え?」 「は?」 「はぇ?」 「ん、?」

「だーかーら、オレをの仲間にしてくれって言ってんの。」


僕を含め、リヒトの言葉を聞いた四人が一瞬、石のように固まった。







「―――――リフト、一旦深呼吸してみろ。はい。すぅー、はぁー。」

「だからリフトじゃねぇよ!!」

「リヒト君、落ち着いて、冷静になって。」

「オレは十分冷静だぞ。美人な猫姉さん」

「採用!!!」

「いやちょっと待て。リヒト、俺達についてくるってことはどんなときでも危険が伴うんだ。お前のような少年が、フラフラ付いて来ていいものじゃない。」

「ンなこと言われなくても知ってるよ。それを承知で今こうしてここに来てるんだから。」

「…カオルちゃんやハルカちゃん達は、どうするんですか?まさか、二人だけで置いていくなんて――…!!」

「そんな酷いことしない。オレは一生二人を守るって決めたんだ。だから、そのためにも強くなる。強くなって、シクリーの街ここに戻ってくるんだ。それまでは――宿のばぁちゃんに、二人を養ってもらうって約束した。

言っとくけどオレ、やると決めたら何を言われたってやめないし、諦めないからな。」


頑として意見を変えないリヒトに、レオンさんは仕方なさそうにため息を吐くと、ちらりと僕等を一人一人見て聞く。

「お前らは、どうしたい?」

「連れて行きましょ」
ミリアさん、とってもニッコリしている。超笑顔。圧が凄い。

ファルコンさんはリヒトを面白いものを見るような目でウンウンと頷き、サムズアップ。多分良いという事なのだろう。

「アルは?」

「僕は……、まぁ、旅に連れて行く分にはいいと思います。けど、…」

けれど、ハルカちゃんやカオルちゃんのことを考えると、すぐにいいとは答え難い。

だってきっと、旅は長い。

いくらおばあさんが預かって下さるとは言え、彼女たちにとっては今まで慕っていた兄がいなくなるのだ。それも、

そんなの、寂しいこと以上の何物でもない。

答えを出せずに俯いていると、前の方から力強い叫び声が聞こえ、僕は思わず顔を上げた。

「にぃちゃん!いってらっしゃい!!」
「にいちゃんも、エルフのおにぃちゃんも、気を付けてね!」
「勇者様方!この子らなら大丈夫さ。アタシがちゃんと、育ててやるよ!!」

そう、少女二人と宿のおばあさんは、笑顔で僕らに伝えた。



「アル。オレ、仲間じゃダメか…?」

どうやら僕の思いは、要らぬ心配だったようだ。


「ダメじゃありません。レオンさん、僕も、賛成です。」

「…わかった。決まりだな。」


レオンさんがそう言って笑うと同時に、僕らの乗る船が、港に着いた。








リヒトが仲間に加わったその日は、どこかの吸血鬼が喜びそうな快晴で。

太陽が、眩しいくらいに輝いていた。
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