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11.哀人
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しばらくは何が起きたのか理解出来ず、ただ一瞬で散ってしまった命の欠片と残された石を茫然と見つめていた。
ドタバタと誰かの足音が聞こえ、そう間もないうちに音の主たちは階段を下りて、こちらへ来た。
息を切らして僕の方に駆け寄ってきた少年―リヒトは、何を言うでもなく、ぎゅっと僕の腰に抱き着いた。
嗚咽が聞こえて、服が湿っていく。
僕は仕方なく視線をリヒトの方に向け、泣きじゃくるその頭を撫でた。
「リヒト、よく、頑張りましたね」
出来るだけ、自然に見えるように。
僕はニコリと、リヒトに向かって微笑んだ。
***
【レオンside】
「―――わかった。ありがとな、ファルコ」
『おうおう。もっと褒めてくれたっていいんだぜ、ってイテテテテッ!!おいミリア、お前病み上がりなんだからっ――――――」
ブチッという音がし、通話が切れた。
俺は苦笑いを浮かべながら、通信魔具を懐にしまった。
…殺風景な部屋の窓から、まだ明けない夜空を見上げているアルは、さっきリヒトと名乗る少年と少し話をしたきり、一言も発さない。
いつにもまして静かなアルを見て、リヒトは何を感じ取ったのか、「オレは一旦カオル達の方を見てくるから、あとは任せた」と言って、小屋を出て行ってしまった。
数か月前にも、似たようなことがあった。
「アル。来るのが遅れてすまなかった」
「いえ。それよりミリアさんは無事ですか?…それと、レオンさん達に迷惑をかけてしまいすみませんでした。」
「謝らなくていい。お前は何も悪くない。ミリアも無事だ。ファルコを殴れるくらいピンピンしてる。」
「…それは、良かったです」
「アル。」
「はい」
「……大丈夫か?」
「大丈夫です。たいした傷はありませんし。」
「そっちじゃない」
何言ってるんですか。と乾いた笑い声を上げ、こちらを向いたアルの目には光が宿っていない。
「大丈夫です」
「嘘だ。」
アルの言葉を即座に否定する。
「っ、嘘なんかじゃありません」
「嘘だ。そんな笑顔を見せるな。」
言った直後にしまった…!と思ったが、遅かった。
アルの顔から表情が消え失せて、まるで人形のように無表情になっていく。
「アルッ…!」
俺の声も無視して、そのままアルは俺の横を何も言わずに通り過ぎていった。
ドタバタと誰かの足音が聞こえ、そう間もないうちに音の主たちは階段を下りて、こちらへ来た。
息を切らして僕の方に駆け寄ってきた少年―リヒトは、何を言うでもなく、ぎゅっと僕の腰に抱き着いた。
嗚咽が聞こえて、服が湿っていく。
僕は仕方なく視線をリヒトの方に向け、泣きじゃくるその頭を撫でた。
「リヒト、よく、頑張りましたね」
出来るだけ、自然に見えるように。
僕はニコリと、リヒトに向かって微笑んだ。
***
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『おうおう。もっと褒めてくれたっていいんだぜ、ってイテテテテッ!!おいミリア、お前病み上がりなんだからっ――――――」
ブチッという音がし、通話が切れた。
俺は苦笑いを浮かべながら、通信魔具を懐にしまった。
…殺風景な部屋の窓から、まだ明けない夜空を見上げているアルは、さっきリヒトと名乗る少年と少し話をしたきり、一言も発さない。
いつにもまして静かなアルを見て、リヒトは何を感じ取ったのか、「オレは一旦カオル達の方を見てくるから、あとは任せた」と言って、小屋を出て行ってしまった。
数か月前にも、似たようなことがあった。
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「いえ。それよりミリアさんは無事ですか?…それと、レオンさん達に迷惑をかけてしまいすみませんでした。」
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「はい」
「……大丈夫か?」
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「大丈夫です」
「嘘だ。」
アルの言葉を即座に否定する。
「っ、嘘なんかじゃありません」
「嘘だ。そんな笑顔を見せるな。」
言った直後にしまった…!と思ったが、遅かった。
アルの顔から表情が消え失せて、まるで人形のように無表情になっていく。
「アルッ…!」
俺の声も無視して、そのままアルは俺の横を何も言わずに通り過ぎていった。
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