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10.『黄色』
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『悠木 璃黄』
その名前を、白蓮は知っている。
ずっと、戻ってくるのを待っていた人の中の一人だ。
「白蓮、待たせてごめんね。ずっと一人にさせて、本当にごめん。」
外見はシークのままなのに、その声は確かに璃黄のものだった。
唖然として固まる僕を、璃黄はそっと抱き寄せた。
「本当はもっと、たくさん言いたいんだけど…、もう、時間がないんだ。」
脈絡のない言葉に、僕は困惑する。
「白蓮が亡くなった後、俺等、すっごい後悔した。
一人にしてごめんって、無視してごめんって、学園の生徒も、生徒会のみんなも…、泣いてた。」
「そう、なんですか…?」
てっきり、誰も僕のことで涙なんて流さないと思っていた。
「それから、暗くて、重くて、色んな不の感情が詰まった俺等の心を、闇が包んだ。これは比喩とかじゃない。本当のことなんだ。」
話しが急に飛ぶ。璃黄のこういうところは変わらない。
「うまく説明できないんだけど…、いま、俺がシークっていう奴になっていたように、他の奴らも、きっと誰かの中に、いる、はずなんだ。そして、そいつらは多分、白蓮を狙って、る。」
璃黄の息が荒くなっていく。
僕は咄嗟に璃黄の背中をさすった。
「…は、ぁ、…、ごめ、ん、はく、れ…、そ、ろそろ、ダメ、だ…。
ホント…に、ごめ、ん…よ…。
は、くれ…ん、みんなを…助けて、あげ……て……。」
「…バカですね」
口ではそんなことを言いながらも、僕は頷く。
そうして、少し寂しそうに微笑んだ璃黄の首が、カクンと下を向いた。
背に回していた手を引き、ゆっくり後退る。
フラリ、フラリとよろけた体がピタッと止まり、顔が上がる。
瞳孔をこれでもかというくらいに見開き、こちらを見据えるその様子に、璃黄の面影はなかった。
その名前を、白蓮は知っている。
ずっと、戻ってくるのを待っていた人の中の一人だ。
「白蓮、待たせてごめんね。ずっと一人にさせて、本当にごめん。」
外見はシークのままなのに、その声は確かに璃黄のものだった。
唖然として固まる僕を、璃黄はそっと抱き寄せた。
「本当はもっと、たくさん言いたいんだけど…、もう、時間がないんだ。」
脈絡のない言葉に、僕は困惑する。
「白蓮が亡くなった後、俺等、すっごい後悔した。
一人にしてごめんって、無視してごめんって、学園の生徒も、生徒会のみんなも…、泣いてた。」
「そう、なんですか…?」
てっきり、誰も僕のことで涙なんて流さないと思っていた。
「それから、暗くて、重くて、色んな不の感情が詰まった俺等の心を、闇が包んだ。これは比喩とかじゃない。本当のことなんだ。」
話しが急に飛ぶ。璃黄のこういうところは変わらない。
「うまく説明できないんだけど…、いま、俺がシークっていう奴になっていたように、他の奴らも、きっと誰かの中に、いる、はずなんだ。そして、そいつらは多分、白蓮を狙って、る。」
璃黄の息が荒くなっていく。
僕は咄嗟に璃黄の背中をさすった。
「…は、ぁ、…、ごめ、ん、はく、れ…、そ、ろそろ、ダメ、だ…。
ホント…に、ごめ、ん…よ…。
は、くれ…ん、みんなを…助けて、あげ……て……。」
「…バカですね」
口ではそんなことを言いながらも、僕は頷く。
そうして、少し寂しそうに微笑んだ璃黄の首が、カクンと下を向いた。
背に回していた手を引き、ゆっくり後退る。
フラリ、フラリとよろけた体がピタッと止まり、顔が上がる。
瞳孔をこれでもかというくらいに見開き、こちらを見据えるその様子に、璃黄の面影はなかった。
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