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4.勇者
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【レオンside】
『ちょっとレオン、今いったいどこにいるのよ!』
仲間の大きな声が魔具越しに俺の耳をつんざく。
「森を抜けた。もう着くぞ。」
『もう、なんで帰って来てんのよこの馬鹿!!大変なの!』
「おま、っ……。大変とは、何が?」
そこでミリアは声を潜めた。
『レオンが連れて来た子、名前はなんていうの?』
「名前?…あー、アルフレイドか?」
『ほら、やっぱり!今帝国魔導士たちがその子を探しに行くって、数十人で基地を出て行ったのよ!』
「なんだと!?」
『私達も追い掛けたけど、魔導士たちにバレないように動いてるし、何よりあいつら飛行魔法でどんどん先に行くから、一瞬で見失ってしまったわ。だから、もう着いてるかもしれない。……レオン、どうするかはあなた次第だけど、どうする?』
「決まっているだろう。……助けに行く。」
『了解。ファルコン、私達も行くわよ。レオン王子を護衛しなくっちゃ。』
そこで、通話は切られた。
あの日、俺は宿の者から、最近近くの森で人喰い魔獣がいる。という噂を聞き、それの討伐をするべく森の中へと向かった。
ミリアやファルコと共に、森の魔獣を一通り殺しきった頃には日はもう暮れていて、夜に近付いていた。
そして、そろそろ帰ろうか、と二人と合流した時、俺達の横を一匹の魔獣が走って行った。
俺は思わず駆け出したが、魔獣の足は速い。
そうしてやっと追いついたときには、人が食われる寸前だった。
ぐいっとその身を引き寄せ、大口を開けた魔獣の首をめがけて剣をふるった。
魔獣を倒し、半ば放心状態でいた人間に大丈夫か、と尋ねると、それは頷いてから、ぐらりとよろめき、気絶してしまった。
慌ててその身体を支えると、傾いた拍子にそいつが被っていたフードが脱げた。
雪のように白い肌に、白銀色の長い髪。
先程発せられた声は確かに男の者だったのに、それが間違いだったのではないかとすら思ってしまうほど華奢な体。
そして、人間や獣人とも異なる、エルフ特有の耳の形。
自国では何度もエルフを見てきたが、ここまで美しいエルフを見たことはなかった。
その身体を支えたまま固まっていた俺は、俺を追いかけてきたミリアに背中をはたかれるまでその青年から目を離せなかった。
宿に戻り、ミリアに魔獣の返り血で汚れた青年の服を脱がして、洗浄魔法で綺麗にしてもらった後、自室に青年を連れて行った。
青年の胸元で、赤いダイアモンド型のペンダントがキラリと光った。
「通信魔具…?」
俺がそのペンダントを手に取り、起動させた途端、「無事か?!」と大きな声が部屋に響いた。
「……すまない。魔獣に襲われていたところを助けたら、気絶してしまった。お前が家族か?」
「?!?!?!!?!?…な、な、なんと?!……あ、貴方様は…!!」
「静かに。寝ている青年がすぐ傍に居る。それと今は、ただの旅人だ。敬語もいらん。様もつけるな。」
「し、しかし、貴方の様なお方が、なぜ…!!」
「救える命を救って何が悪いんだ?」
「……!!」
それから暫く、俺は老父――ルドルフという男と、青年について話した。
青年の名は聞かなかったが、青年の過去や、性格などを聞いた。
そして、ルドルフは泣きながら、何度も何度も感謝の言葉を繰り返し、通話を切った。
良い奴なのだな、と直感する。
ルドルフに聞いた話では、この赤いペンダントは結構高度なもので、実は起動せずとも叫べば通話が繋がるらしい。だから、何かあった時のためにと、俺の通信魔具にも繋がるように少し改造した。
「お前は、優しい人間に育ててもらえて、よかったな。」
青年のサラサラの髪を梳いて、ぽんぽんと、優しく頭を撫でてやった。
翌日。
何が何だかわからないといった様子で慌てていた青年に、俺は軽く自己紹介をし、二人で宿を出た。
アルフレイド。
そう名乗った青年は、本当に体が細く、おまけに軽かった。
運んでいるときに「本当は女なんじゃ、」と聞こうとしたが、キリッと下から睨まれたため、俺は何も言っていないとごまかした。
ちなみに、姫抱きで運んだのは完全に俺の欲だ。
アルフレイドには申し訳ないが、抱き上げた時の恥じらう姿はそれはそれは可愛らしく、どこぞの令嬢と一緒にいるときよりも数倍心が躍った。
小屋に着いたときなど、ルドルフに見られるのが相当恥ずかしいのか、俺の腕の中に顔をうずめてきた。
ピクリと肩が反応してしまったが、ポーカーフェイスだけは保った。
『ちょっとレオン、今いったいどこにいるのよ!』
仲間の大きな声が魔具越しに俺の耳をつんざく。
「森を抜けた。もう着くぞ。」
『もう、なんで帰って来てんのよこの馬鹿!!大変なの!』
「おま、っ……。大変とは、何が?」
そこでミリアは声を潜めた。
『レオンが連れて来た子、名前はなんていうの?』
「名前?…あー、アルフレイドか?」
『ほら、やっぱり!今帝国魔導士たちがその子を探しに行くって、数十人で基地を出て行ったのよ!』
「なんだと!?」
『私達も追い掛けたけど、魔導士たちにバレないように動いてるし、何よりあいつら飛行魔法でどんどん先に行くから、一瞬で見失ってしまったわ。だから、もう着いてるかもしれない。……レオン、どうするかはあなた次第だけど、どうする?』
「決まっているだろう。……助けに行く。」
『了解。ファルコン、私達も行くわよ。レオン王子を護衛しなくっちゃ。』
そこで、通話は切られた。
あの日、俺は宿の者から、最近近くの森で人喰い魔獣がいる。という噂を聞き、それの討伐をするべく森の中へと向かった。
ミリアやファルコと共に、森の魔獣を一通り殺しきった頃には日はもう暮れていて、夜に近付いていた。
そして、そろそろ帰ろうか、と二人と合流した時、俺達の横を一匹の魔獣が走って行った。
俺は思わず駆け出したが、魔獣の足は速い。
そうしてやっと追いついたときには、人が食われる寸前だった。
ぐいっとその身を引き寄せ、大口を開けた魔獣の首をめがけて剣をふるった。
魔獣を倒し、半ば放心状態でいた人間に大丈夫か、と尋ねると、それは頷いてから、ぐらりとよろめき、気絶してしまった。
慌ててその身体を支えると、傾いた拍子にそいつが被っていたフードが脱げた。
雪のように白い肌に、白銀色の長い髪。
先程発せられた声は確かに男の者だったのに、それが間違いだったのではないかとすら思ってしまうほど華奢な体。
そして、人間や獣人とも異なる、エルフ特有の耳の形。
自国では何度もエルフを見てきたが、ここまで美しいエルフを見たことはなかった。
その身体を支えたまま固まっていた俺は、俺を追いかけてきたミリアに背中をはたかれるまでその青年から目を離せなかった。
宿に戻り、ミリアに魔獣の返り血で汚れた青年の服を脱がして、洗浄魔法で綺麗にしてもらった後、自室に青年を連れて行った。
青年の胸元で、赤いダイアモンド型のペンダントがキラリと光った。
「通信魔具…?」
俺がそのペンダントを手に取り、起動させた途端、「無事か?!」と大きな声が部屋に響いた。
「……すまない。魔獣に襲われていたところを助けたら、気絶してしまった。お前が家族か?」
「?!?!?!!?!?…な、な、なんと?!……あ、貴方様は…!!」
「静かに。寝ている青年がすぐ傍に居る。それと今は、ただの旅人だ。敬語もいらん。様もつけるな。」
「し、しかし、貴方の様なお方が、なぜ…!!」
「救える命を救って何が悪いんだ?」
「……!!」
それから暫く、俺は老父――ルドルフという男と、青年について話した。
青年の名は聞かなかったが、青年の過去や、性格などを聞いた。
そして、ルドルフは泣きながら、何度も何度も感謝の言葉を繰り返し、通話を切った。
良い奴なのだな、と直感する。
ルドルフに聞いた話では、この赤いペンダントは結構高度なもので、実は起動せずとも叫べば通話が繋がるらしい。だから、何かあった時のためにと、俺の通信魔具にも繋がるように少し改造した。
「お前は、優しい人間に育ててもらえて、よかったな。」
青年のサラサラの髪を梳いて、ぽんぽんと、優しく頭を撫でてやった。
翌日。
何が何だかわからないといった様子で慌てていた青年に、俺は軽く自己紹介をし、二人で宿を出た。
アルフレイド。
そう名乗った青年は、本当に体が細く、おまけに軽かった。
運んでいるときに「本当は女なんじゃ、」と聞こうとしたが、キリッと下から睨まれたため、俺は何も言っていないとごまかした。
ちなみに、姫抱きで運んだのは完全に俺の欲だ。
アルフレイドには申し訳ないが、抱き上げた時の恥じらう姿はそれはそれは可愛らしく、どこぞの令嬢と一緒にいるときよりも数倍心が躍った。
小屋に着いたときなど、ルドルフに見られるのが相当恥ずかしいのか、俺の腕の中に顔をうずめてきた。
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