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第三章 過去が背中を追いかけてくる
干し肉以外の選択肢
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特に問題が起きることもなく、太陽の位置が高くなるまで商隊は進んでいった。
馬を休ませるため街道の要所要所に作られている休憩地についた。
「んー! 座りっぱなしっていうのも疲れるもんだ」
キースが体を伸ばしてぼやくように言った。
アントスたちは、それぞれの報告と休憩後の配置について話し合っているみたいだ。
俺も固くなった筋を伸ばすようにして、ぐっぐっと、関節の曲げ伸ばしをする。
「お若いからじっとしていると余計にお疲れになるのでしょうなぁ」
ほっほっほ、とセドリックさんに笑われた。
この休憩を利用して、皆軽く昼食をとるのだろう。
ガランドン商会の人たちも、従業員が手際よくあれこれ動いている。
「なぁ、キース。昼飯の予定は?」
「んぁ? 干し肉と固パンなら用意してきたけど」
「あれ、ガランティードさんと一緒に食うわけじゃないの?」
「さすがにそこまで図々しくはなれねーって」
仲良さそうだから、キースは食事に呼ばれるものかと思ってた。
もちろん俺も、自分の分はちゃんと用意はしてきている。
初めから食事は別の契約だったけど、道中でちょっとした狩りをして、新鮮な肉を手に入れることも出来るかもしれないって考えてた。だけど、食事中だけでもガランティードさんのとこに任せられないようなら、それは無理か。
キースの護衛は俺一人だから、離れるわけにはいかないもんな。
「俺と一緒か。なら、町に着くまでは干し肉と固パンで我慢かな」
「え、それ以外の選択肢あんの?」
びっくりした顔でキースが聞いてくる。
「何か捕まえられれば肉が食えるし、ちょっと道から外れたら食えるものがたいていあるぞ」
「いいじゃん、それいこうよ!」
楽しそうにキースが草むらに入っていこうとする。
「ちょっと待て。何があるかもわからないのに、どこに行くんだ? 普通、護衛を雇うような奴は休憩地で待ってるものだろうが」
慌てて肩を掴んで止める。
無謀にもほどがあるだろ!
「え、でも、休憩地で待ってたら、俺一人になっちゃうじゃん?」
「あぁ、そうだな」
「でも、肉喰いたいじゃん?」
「……干し肉喰っとけよ」
「干し肉より焼きたての肉の方が美味くない? だから、肉捕まえに行こうぜ」
「それ、捕まえるの俺だろ? 護衛とは別料金取るぞ」
「あ、そうか。俺一人で狩りは無謀だわ。んじゃ、何か果物があるといいなぁ……」
「待て待て待て」
勇んで再び草むらに向かおうとしたキースを止めて引き戻す。
「狩りをしろとは言わないし、俺も美味そうなもの見つけたら分けるよ?」
何で止められたのかがわからなさそうに、キースはきょとんとしている。
俺は大きく溜息をついた。
「人間が食って美味いものなんて、動物や魔獣にとっても美味いに決まってるだろ。食えそうなものがあるところには、魔獣も出るんだって。何のために採取依頼なんてものがあると思ってるんだよ」
「マジか……」
考えてもみなかった、と言いたげにキースの目が見開かれる。
「じゃあ、町につくまで干し肉と固パンで我慢だな……」
水魔法で水を抜かれたスライムみたいに、しおしおとしてキースが肩を落とした。
「あーもうしょうがねえな。俺から離れるなよ? それから欲張るな?」
村で自分より小さいガキを引き連れて森に入る時と同じ注意をすると、キースの顔がぱっと明るくなる。
「うわ、俺、自分で何か取りに行くって初めてだわ」
「……町で育ったヤツのセリフだな」
一応注意はしたけど、コレは気を付けて見てやった方がいいな?
大体初めてだって言って喜ぶ奴は、暴走して事を起こす。
これは村で培った経験だ。
ちなみに俺の目の前でこれをやらかした最初の人間はガリオンだ。
俺たちを森に連れて行ってくれた兄貴分の言うことを聞かずに、ちっちゃいガキみたいに突然走り出し、迷子になった。
そして何で手を離したんだと、俺まで叱られた。
チビたちは手を繋いでおけ、って言われてたんだよ。
でも同い年の小さいガキに、突然手を振り払って走り出すようなガキが、どうにかできるわけがないだろ。
「必ず何かが取れるってわけでもないからな?」
「わかってるって」
ワクワクした顔をしている自分より年上の男に呆れるけど、せっかくこんなに楽しみそうにしてるんだから、何か見つかるといいな。
馬を休ませるため街道の要所要所に作られている休憩地についた。
「んー! 座りっぱなしっていうのも疲れるもんだ」
キースが体を伸ばしてぼやくように言った。
アントスたちは、それぞれの報告と休憩後の配置について話し合っているみたいだ。
俺も固くなった筋を伸ばすようにして、ぐっぐっと、関節の曲げ伸ばしをする。
「お若いからじっとしていると余計にお疲れになるのでしょうなぁ」
ほっほっほ、とセドリックさんに笑われた。
この休憩を利用して、皆軽く昼食をとるのだろう。
ガランドン商会の人たちも、従業員が手際よくあれこれ動いている。
「なぁ、キース。昼飯の予定は?」
「んぁ? 干し肉と固パンなら用意してきたけど」
「あれ、ガランティードさんと一緒に食うわけじゃないの?」
「さすがにそこまで図々しくはなれねーって」
仲良さそうだから、キースは食事に呼ばれるものかと思ってた。
もちろん俺も、自分の分はちゃんと用意はしてきている。
初めから食事は別の契約だったけど、道中でちょっとした狩りをして、新鮮な肉を手に入れることも出来るかもしれないって考えてた。だけど、食事中だけでもガランティードさんのとこに任せられないようなら、それは無理か。
キースの護衛は俺一人だから、離れるわけにはいかないもんな。
「俺と一緒か。なら、町に着くまでは干し肉と固パンで我慢かな」
「え、それ以外の選択肢あんの?」
びっくりした顔でキースが聞いてくる。
「何か捕まえられれば肉が食えるし、ちょっと道から外れたら食えるものがたいていあるぞ」
「いいじゃん、それいこうよ!」
楽しそうにキースが草むらに入っていこうとする。
「ちょっと待て。何があるかもわからないのに、どこに行くんだ? 普通、護衛を雇うような奴は休憩地で待ってるものだろうが」
慌てて肩を掴んで止める。
無謀にもほどがあるだろ!
「え、でも、休憩地で待ってたら、俺一人になっちゃうじゃん?」
「あぁ、そうだな」
「でも、肉喰いたいじゃん?」
「……干し肉喰っとけよ」
「干し肉より焼きたての肉の方が美味くない? だから、肉捕まえに行こうぜ」
「それ、捕まえるの俺だろ? 護衛とは別料金取るぞ」
「あ、そうか。俺一人で狩りは無謀だわ。んじゃ、何か果物があるといいなぁ……」
「待て待て待て」
勇んで再び草むらに向かおうとしたキースを止めて引き戻す。
「狩りをしろとは言わないし、俺も美味そうなもの見つけたら分けるよ?」
何で止められたのかがわからなさそうに、キースはきょとんとしている。
俺は大きく溜息をついた。
「人間が食って美味いものなんて、動物や魔獣にとっても美味いに決まってるだろ。食えそうなものがあるところには、魔獣も出るんだって。何のために採取依頼なんてものがあると思ってるんだよ」
「マジか……」
考えてもみなかった、と言いたげにキースの目が見開かれる。
「じゃあ、町につくまで干し肉と固パンで我慢だな……」
水魔法で水を抜かれたスライムみたいに、しおしおとしてキースが肩を落とした。
「あーもうしょうがねえな。俺から離れるなよ? それから欲張るな?」
村で自分より小さいガキを引き連れて森に入る時と同じ注意をすると、キースの顔がぱっと明るくなる。
「うわ、俺、自分で何か取りに行くって初めてだわ」
「……町で育ったヤツのセリフだな」
一応注意はしたけど、コレは気を付けて見てやった方がいいな?
大体初めてだって言って喜ぶ奴は、暴走して事を起こす。
これは村で培った経験だ。
ちなみに俺の目の前でこれをやらかした最初の人間はガリオンだ。
俺たちを森に連れて行ってくれた兄貴分の言うことを聞かずに、ちっちゃいガキみたいに突然走り出し、迷子になった。
そして何で手を離したんだと、俺まで叱られた。
チビたちは手を繋いでおけ、って言われてたんだよ。
でも同い年の小さいガキに、突然手を振り払って走り出すようなガキが、どうにかできるわけがないだろ。
「必ず何かが取れるってわけでもないからな?」
「わかってるって」
ワクワクした顔をしている自分より年上の男に呆れるけど、せっかくこんなに楽しみそうにしてるんだから、何か見つかるといいな。
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