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プロローグ 勝手な奴は自覚がない

誰のせいだと思ってるんだ

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「なぁ、俺レベル30越えたんだよ」
「はぁ」

 呼び出されて唐突な報告は、自慢なのか?
 『暁の星』で時間借りしたギルドの会議室に集まったメンバーたちも難しい顔をしている。
 確かに、冒険者になって2年目の16歳にしては、レベル30越えはそこそこ頑張ってる方だと思う。
 全く同じ条件の俺は、まだレベル14なんだけどな。

 この男ガリオンと、俺アディは同じ村の出身で幼馴染だ。
 同じ年に生まれ、5歳の時に受けたギフトではお互いに『剣士』で、いつか一旗揚げてやろうと、10歳の時、共に冒険者ギルドの門を叩いた。
 薬草採取や運搬などの見習い冒険者業務を着々と熟し、正規冒険者登録が可能な14歳で『暁の星』を結成した。
 俺は小規模ながらインベントリを持っていたから、俺たちが正規冒険者最初の階級であるF級からE級に昇格するのはすぐだった。
 ガリオンは、太目でどんくさいところのある俺をカバーしてくれることも多かった。
 でも、ちょっとかっこつけというか、いいかっこしいなところもあって、特に女の子が絡むと騙されたりすることもあった。
 俺もそういうところはてんでダメだった。
 それで見ていられなくなったのか、仲間として『暁の星』に加わってくれたのが、魔術師で4歳年上のノーマだ。
 お姉さんとして俺たちの面倒をよく見てくれたし、女性独特の視点から依頼を選別してくれたし、物理攻撃一辺倒の俺たちの戦術はぐんと幅が広がった。
 その後、合同依頼をきっかけに料理や家事もこなせる踊り子のカスハが加わったおかげで、生活全般のクオリティもぐっと上がった。
 それぞれにマイペースな俺たちの規律を纏めるために騎士のリディが、ダンジョンでの罠や宝箱対策として暗殺者のロージィが加わり、パーティとしての階級もD級にまで上がった。

 ……だけど、かっこつけしいなガリオンは大物の魔獣討伐やトドメは自分が担当したがった。
 同じ職業である俺とガリオンはどうしてもポジションを食い合う。その結果競り負けてしまうのだ。
 次第に俺とガリオンのレベルは離れていくことになった。

「なぁ、アディ。今お前レベルいくつだよ」
「14だけど」
「はぁー……」

 ガリオンは深々とため息をついた。

「こんなこと言いたくないんだけどさ、もう少し頑張った方がいいんじゃねえの?」
「それは……」

 いつもお前が美味しいところを横からかっさらっていくからだろう?
 言いかけた言葉を飲み込んだ。
 同じ依頼を熟しているのだから、機会だけは平等なのだ。
 それなのに、俺のレベルだけが上がらないのは、俺の怠慢だと言われてしまえば反論もできない。

「ノーマのレベルが32、カスハが34、リディが28、ロージィは24。一番下のロージィとでさえ、10もレベルが離れてる」
「……そうだな」
「ポーターだとしても、もうアディを連れて行くのは難しいんだよ」

 魔獣も少し賢い奴なら、弱い奴から狙ってくる。
 そして強ければ強いほど知能も高くなる。
 だから、ギルドは特別なことがない限り、パーティ内のレベル差を10~15前後にとどめることを推奨している。
 だいぶ前から、俺は『暁の星』の足手まといになっていた。

「俺たちもさ、出来るならもっと上を目指したいんだ。アディを守りながらじゃ、これ以上先には進めない」

 だったら、何故俺を育てようとしなかった?

 パーティで上を目指すなら、高額素材の持ち帰りを見込めるポーターだって重要だ。
 もちろんアイテムバッグなどの収容量が拡大された魔道具も存在するが、購入しようと思えば高額だし、ドロップ品ではめったに出てこない。その上、アイテムバッグなんてレアアイテムをドロップするのは大体が高レベル帯の魔獣だ。
 低レベルのパーティは、高確率でドロップが見込めそうな依頼やダンジョン探索ではポーターを臨時に雇い入れたりする。
 その点、自前でインベントリを保持している俺がいる恩恵は、これまでであれば充分あったはずだ。
 普通、仲間にポーターや回復役などの支援職がいるパーティは、あえてとどめを刺させたりして、常に同レベル帯にその支援職がいられるように育てる。
 ただしそれが、育ててまでも連れていきたいような大容量のインベントリ持ちや、目に見えた傷でも回復できるほどの回復魔法を取得していればの話だ。

 俺はインベントリこそ持っているが剣士であり、ガリオンには時折助けてもらうことはあっても、対等の幼馴染だと思っていた。
 あくまでインベントリはちょっとしたおまけであり、ガリオンにぶら下がって育ててもらいたくはなかった。
 そんな俺の意地も、ガリオンに自身が経験値を横取りしている自覚を与えなかったのだろう。
 ここまでレベルが引き離されることになったのは、俺の責任でもある。

「……わかった。俺は『暁の星』を抜ける」
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