41 / 55
第二章 自分の居場所を作りたい!
見たこともない果実
しおりを挟む
「お前、あぁいうのが好み?」
「?」
詰所の部屋を出てすぐ、唐突にアレンに聞かれてきょとんとする。
好み……好み……あぁ、好み!
「すぐそういうこという。きもちわる」
恋愛脳反対。
通年発情期か。
うぇって顔になっていると、眉間の皺をグリグリ指で潰された。
アレンは片腕に乗っける感じで私を抱えているけど、安定感は抜群だ。
「気持ち悪いってヒデえな。俺の時とは態度が全然違うじゃねーか。なんかかわいこぶってるしさー」
「ふしんしゃと、こころやさしいしょうねんじゃちがってとうぜんでは?」
「ひっでー! 俺だって優しいお兄さんだろ?」
「おにいさん……」
いや、私の心情的には全然お兄さんで構わないのだけどね。
内心まだまだガキよね、なんて思っちゃってるところもあるわけだし。
だけど、一般的な4歳児からしてみたら、どのくらいまでがお兄さんなのかしらー、なんてことを考えちゃったわけよ。
そしたら、何か勘ぐっちゃったのか……アレンが落ち込んだ。
「あれんはおにいさんだよ! やさしい、かっこいいおにいさん!」
地味に本気でショック受けてるっぽいから慌ててフォローしてみたけど、一度受けたショックは取り返せないみたいで、力なくぽすぽすと頭を撫でられた。
「まだチーロ、4歳だもんな……4歳児から見たら、22歳なんて立派な大人だよな……」
ちょっと、22歳なんてまだおじさん呼ばわりされてもショック受けていいような歳じゃないでしょうよ。
なんでそんなにがっくりきてんの。
体力も回復力もまだまだ余裕があるし、しみしわ知らずでピチピチな年齢のくせに!
しかも、立派な大人って、ちゃっかり心的ダメージ軽減してんじゃないわよ、図々しい。
ちょっぴり呆れていると、ロイも私の頭を撫でた。
「気を遣わなくていい」
「同い年だろ、ロイ!」
私たちがいた部屋から裏口っぽい方に抜けて、細い路地を二回くらい曲がると、お店とお店の間にある隙間に出た。
目の前は大通りだ。
「おぉ……」
人間がカラフル!
カプスの町でもそれなりにカラフルな人達はいたけど、彩度が比べ物にならないし、何より色のバリエーションが豊富だ。
これ、全員並べたら髪の色と目の色と肌の色でグラデーションができるんじゃない?
それに、人種もいろいろいる。
肌の色が違うなんてもんじゃない。モフモフの耳やしっぽ、翼に角に鱗、と、ありとあらゆる生き物の特徴を持った人があちらこちらにいるのだ。
「ぽりてぃかるこねくとれすぅ~……」
「……なんて?」
「チーロは時々不思議なことを言うよね」
そもそもの概念がないのか、アレンにもロイにも不思議な顔をされてしまった。
いや、ロイは眼鏡とストールで表情もよくわかんないんだけど。
街は活気づいていて、あちこちに屋台もあって、行列とかはないけど、どこぞのテーマパークを思い起こさせる。
「あれ、なんだろう……」
遠目に見えたのは中国で食べられてるっていうサンザシ飴みたいに、赤い丸いモノが串にいくつも刺さっているものだ。
「あぁ、ラーネルラだな。喰ってみるか?」
買ってもらってみても、正体がよくわからない。
赤くて艶のある実にかかってる白と黄色の粉を少しだけ舐めてみる。
「しお……?」
お砂糖かと思ったら、掛かってたのは塩となんかピリッとする辛さと酸味がある粉だ。
「串に刺したラーネに塩とバンショーが掛けてあるんだよ。肉を食った後に喰うと口の中がさっぱりするぜ」
なんだか果物よりも焼いたお肉とかにしたいような味付けだけど、アレンの口振りから察するによくある食べ方なんだろう。
思いきって一つ齧ってみる。
「ひゅっぱ……」
酸っぱさにほっぺたがきゅうって痛くなった。
つやつやした見た目から想像するような硬さはなくて、噛むと呆気なくクシュッと崩れる感じがする。齧った断面と味は、酸味はあるけどドラゴンフルーツに似ている。
酸っぱいものの刺すような鋭さのある酸味じゃなくて、よく言えば穏やか、悪く言うとぼんやりした酸味で、塩とバンショーが持つ異なる酸味と辛みが、ぼやっとした味わいの中で甘みに輪郭を持たせていた。
うーん、こんな果物、前世では見たことがない。
「ラーネルラはやっぱ肉の後に喰わなきゃな。これだけ食ってもつまんねーし、腹に溜まるものを食おうぜ」
そう言ってアレンは、別の屋台に近づいていった。
「?」
詰所の部屋を出てすぐ、唐突にアレンに聞かれてきょとんとする。
好み……好み……あぁ、好み!
「すぐそういうこという。きもちわる」
恋愛脳反対。
通年発情期か。
うぇって顔になっていると、眉間の皺をグリグリ指で潰された。
アレンは片腕に乗っける感じで私を抱えているけど、安定感は抜群だ。
「気持ち悪いってヒデえな。俺の時とは態度が全然違うじゃねーか。なんかかわいこぶってるしさー」
「ふしんしゃと、こころやさしいしょうねんじゃちがってとうぜんでは?」
「ひっでー! 俺だって優しいお兄さんだろ?」
「おにいさん……」
いや、私の心情的には全然お兄さんで構わないのだけどね。
内心まだまだガキよね、なんて思っちゃってるところもあるわけだし。
だけど、一般的な4歳児からしてみたら、どのくらいまでがお兄さんなのかしらー、なんてことを考えちゃったわけよ。
そしたら、何か勘ぐっちゃったのか……アレンが落ち込んだ。
「あれんはおにいさんだよ! やさしい、かっこいいおにいさん!」
地味に本気でショック受けてるっぽいから慌ててフォローしてみたけど、一度受けたショックは取り返せないみたいで、力なくぽすぽすと頭を撫でられた。
「まだチーロ、4歳だもんな……4歳児から見たら、22歳なんて立派な大人だよな……」
ちょっと、22歳なんてまだおじさん呼ばわりされてもショック受けていいような歳じゃないでしょうよ。
なんでそんなにがっくりきてんの。
体力も回復力もまだまだ余裕があるし、しみしわ知らずでピチピチな年齢のくせに!
しかも、立派な大人って、ちゃっかり心的ダメージ軽減してんじゃないわよ、図々しい。
ちょっぴり呆れていると、ロイも私の頭を撫でた。
「気を遣わなくていい」
「同い年だろ、ロイ!」
私たちがいた部屋から裏口っぽい方に抜けて、細い路地を二回くらい曲がると、お店とお店の間にある隙間に出た。
目の前は大通りだ。
「おぉ……」
人間がカラフル!
カプスの町でもそれなりにカラフルな人達はいたけど、彩度が比べ物にならないし、何より色のバリエーションが豊富だ。
これ、全員並べたら髪の色と目の色と肌の色でグラデーションができるんじゃない?
それに、人種もいろいろいる。
肌の色が違うなんてもんじゃない。モフモフの耳やしっぽ、翼に角に鱗、と、ありとあらゆる生き物の特徴を持った人があちらこちらにいるのだ。
「ぽりてぃかるこねくとれすぅ~……」
「……なんて?」
「チーロは時々不思議なことを言うよね」
そもそもの概念がないのか、アレンにもロイにも不思議な顔をされてしまった。
いや、ロイは眼鏡とストールで表情もよくわかんないんだけど。
街は活気づいていて、あちこちに屋台もあって、行列とかはないけど、どこぞのテーマパークを思い起こさせる。
「あれ、なんだろう……」
遠目に見えたのは中国で食べられてるっていうサンザシ飴みたいに、赤い丸いモノが串にいくつも刺さっているものだ。
「あぁ、ラーネルラだな。喰ってみるか?」
買ってもらってみても、正体がよくわからない。
赤くて艶のある実にかかってる白と黄色の粉を少しだけ舐めてみる。
「しお……?」
お砂糖かと思ったら、掛かってたのは塩となんかピリッとする辛さと酸味がある粉だ。
「串に刺したラーネに塩とバンショーが掛けてあるんだよ。肉を食った後に喰うと口の中がさっぱりするぜ」
なんだか果物よりも焼いたお肉とかにしたいような味付けだけど、アレンの口振りから察するによくある食べ方なんだろう。
思いきって一つ齧ってみる。
「ひゅっぱ……」
酸っぱさにほっぺたがきゅうって痛くなった。
つやつやした見た目から想像するような硬さはなくて、噛むと呆気なくクシュッと崩れる感じがする。齧った断面と味は、酸味はあるけどドラゴンフルーツに似ている。
酸っぱいものの刺すような鋭さのある酸味じゃなくて、よく言えば穏やか、悪く言うとぼんやりした酸味で、塩とバンショーが持つ異なる酸味と辛みが、ぼやっとした味わいの中で甘みに輪郭を持たせていた。
うーん、こんな果物、前世では見たことがない。
「ラーネルラはやっぱ肉の後に喰わなきゃな。これだけ食ってもつまんねーし、腹に溜まるものを食おうぜ」
そう言ってアレンは、別の屋台に近づいていった。
1
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる