上 下
38 / 55
第二章 自分の居場所を作りたい!

セクシーなおしり

しおりを挟む
「魔力8か……魔力8じゃな……いくらレベルが上がってても、そこまで増えてなさそうだしな……」

 アレンはしゃがみ込むと、ぶつぶつ言いながら私を見つめる。

「……なに?」

 少し怖くなってミルフェ先輩にしがみつくと、ミルフェ先輩はよしよし、と私を撫でてくれた。
 ちなみにミルフェ先輩の服は、デ●ルマンのように体毛がプライベートゾーンを覆っている。
 コモンドールとかのモップ犬みたいに、腰から下は、上の方から伸びた毛がふさっと広がって、ボディラインに沿ったドレスとか、タヒチアンダンスの腰みのっぽい。
 服っていうか、毛だな。
 山羊の姿の時は長毛種じゃないのに不思議。

「よし、平竈はより魔力のいらない直火タイプのものにしよう」
「危なくないか?」
「炎そのものの魔力が溜まったら消えるものにすればいいだろ」

 ロイとアレンの会話がよくわからなくて首を傾げる。
 炎そのものにも魔力があるのか。
 それって火力発電みたいな?

「それとパムを潰す道具な。作ってやるよ」
「ほんと? わぁい!」

 力だけはあるからね。
 道具さえあれば、潰すのはそんなに苦にならないと思うんだ。

「あ。ついでに、ろったをつぶせるどうぐも、つくってくれたら、うれしい!」

 ムシュトみたいにペースト状にした食べ物があるんだから、そのための道具もあるかもしれないと思ったのに、またアレンをきょとりとさせてしまった。

「ロッタを潰す……?」
「ムシュトみたくしたいの」

 ムシュトそのものも機会があったら作ってみたいけどね。

「お前、よくそんなことを思い付くな。よっぽど食い意地が張ってるのか……?」

 呆れた顔をされてしまったけど、芋を潰すのくらい普通に思いつくものじゃないの?
 すでにムシュトで豆とナッツは潰してるんだしさ。

「あぁいう、潰したり練ったりするものは大体魔力持ちの料理人が下働きの時にやるもんだ。庶民でも手作業で真似たりはするらしいが、わざわざ道具を用意してというのは聞かないな」

 なるほど把握。
 魔力のある世界だから、あまり道具は発達してない……か、王族であるところのアレンはそういった道具を知らないのかもしれない。

「うん。道具があれば、魔力の乏しい庶民でもムシュトが食べられるようになるな」
「おぉ。むしゅとは、こうきゅうりょうりか」
「庶民の料理にも似たようなものはあるけどな。ムシュトは滑らかさを競うんだ」
「ほー」

 感心していると、事態が解決したからか、ロイが深い溜息を吐いた。

「アレン、相手が子供だからって侮っているから変態呼ばわりされるんだ。チーロは案外賢いぞ?」
「むー。あんがいって、どういうひょうかなんですかねー?」

 唇を尖らせる私にアレンは手を伸ばして、片手で両頬を掴んだ。

「むー! あにしゅるにょ!」
「ふはは、おもしれ―顔になってんぞ」

 抗議の声を上げる私を笑うあたり、本当にガキだなこの王子さま。

「ミルフェもそろそろ戻っていいよ。ただアレンが無神経だっただけみたいだし」
「はーい」

 ぼふ、っと音を立てて、ミルフェ先輩が美女から山羊に戻った。
 おおおおおお、イリュージョン!

「なんで、みるふぇせんぱい、ひとがたになったの?」

 変身は凄いので見られて嬉しいけど、人型も美人さんで眼福だったのに。

「山羊の姿の方が本来の姿に近いんだけど、私やチーロに何かあった時や、必要な時は人型になれるようになっているんだ」
「ふーん、こっちのほうがらくなのか」

 魔獣の踊り食い(?)も、人型でやったら恐ろしいものがあるしな……。
 そのあたりは山羊の姿でよかったかもしれない。

「人型を保つのにはより多くの魔力が必要らしいよ」
「へえー」
「べええええ」

 そうよ、というみたいにミルフェ先輩は一声鳴くと、颯爽と戸口から出ていった。
 あんな美女になるかと思うと、山羊のおしりもセクシーに見えるね。

「やれやれ。私はまた仕事に戻るけど、こんな騒ぎはもうごめんだよ?」
「ごめんね、ろい」

 仕事の邪魔しちゃったな。

「いや、チーロに言ったわけじゃないよ。むしろ、服の中に手を突っ込まれたとか、勝手に連れ去られそうな時は、大きな声で助けを呼んで。今回も叫んで大正解」
「しってるひとでも、ゆだんしない!」
「そうそう。例え姿が私でも、本当に私だとは限らないから、嫌なことをされそうになったら助けを求めるんだ」
「おおおおおお……いっけんろいでも、うたがってかかる……」

 他人の姿を偽装できるような魔法もあるのか。
 山羊が人に化けるぐらいだもんね。
 さすが異世界。
 油断ならないな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生悪女は逃げ出した

白生荼汰
恋愛
転生チート物のヒロインに転生しちゃうお話

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

処理中です...