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第二章 自分の居場所を作りたい!
お前面白い女だな
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「ぶはっ、言い方!」
盛大に吹き出したアレンはしばらくテーブルに手をついたまま肩を震わせていた。
とんでもない罵倒をしてしまったのに、めちゃくちゃウケたみたい。
……この王子様、暇な上にドエムなのかな。
いや、人間て暇だと変態をこじらせるのかもしれない。
ほら、かつてソドムは堕落と退廃に満ちていたとかいうし。
ひっひっひ、と笑いを止められず引きつったみたいな声を上げているアレンを、ロイも困惑の眼差しで見ている。
「そう、俺暇なの。うちはお兄様たちが優秀だから、三男の俺は暇してた方がいいんだよ」
「あぁ、おいえそうどうてきな? かつぎあげられちゃう?」
神輿は軽い方がいい、って言うもんね。
「ぶあはははははははは、もうやだ。何だこいつ、おもしれえな。ちょ、ロイ。こいつ俺に寄越せよ。絶対退屈しないだろ」
「だがことわる!」
ロイに任せず、私自らきっぱり断ると、またも頭をグリグリ撫でてきた。
「なんでだよー、こんな森の中で引きこもってるより、おもしれえもん一杯見せてやるぜ?」
「おもしれえおんな、とかいってくどいてくるおとこに、ろくなやつはいないと、わたしはしっている」
大体、面白いとか何とか、自分が評価する側であるという大前提が間違っているうえに思い上がりも甚だしいよね、と胸を張って言うと、アレンは残念なものを見る目で言った。
「確かに面白いとは言ったけど、おもしれえ女、って、お前みたいなチビを女として見るのはさすがに無理があるだろう」
「は。びみょうに、にゅあんすがちがった?」
「あと十年は育ってもらわねえと無理だな」
「じゅうねんごでも、わたしじゅうよんさいだし、あれんはさんじゅうにで、おっさんじゃん……ただのえろじじいじゃん……なまなましいぶん、よけいきもちわるい……」
十年後だろうが、ペドフィリアがロリコンに名称変わるくらいで大差ないよ。
それでもまだ私の中身よりも若いけども。
いや、愛がね、あるんならいいけど、私とアレンの間にはそんなものないし、たとえ話ならいいだろう、って持ち出されるだけでも引く……。
思わずいやーな顔をしていると、アレンも顔を顰めた。
「おいちび、気持ち悪いはさすがに傷つく」
「あ、そうだよね。ごめん」
「いや、いいけど」
発端は私の勘違いだ。
そこは素直に謝っておこう。
「でも、よこせはよくない。わたしはたいくつしのぎのおもちゃじゃない。ここにおいてもらってるのは、わたしのいし。ろいによこせっていうのはまちがい」
そこだけはきっぱりと断言すると、アレンは苦笑しつつ、席についた。
「そうだな。それは俺も悪かった。お互いに謝ったところで、飯にしようぜ」
「うん、いいよ」
せっかく温めてもらったスープも冷めちゃうし、一時休戦だ。
休戦協定を結んだ私たちに、ロイもほっと胸を撫で下ろした様子になった。
それぞれに食前の祈りをして、お昼を食べ始める。
うん。カラーシドレッシング、いい感じ。
もうちょっとピリッとさせてもいいかもしれない。
薬草棚にマスタードってあったかしら。
ワサビっぽいものはあったから、醤油があればワサビ醤油とかも手軽で美味しそうだよね。
あ、けど今のこの舌じゃ、やっぱり辛いものは無理かなぁ……。
「うまっ。おい、チビ。やっぱ嫁に来ない?」
「そういうじょうだんいうおじさんきらい」
「バカ、俺はまだおじさんじゃねえぞ!」
「もうしわけありませんが、ごきぼうにはそいかねるため、つつしんでおことわりもうしあげます」
「何だ、その言い回し。馬鹿丁寧な分、拒絶されてる感がすごいな!?」
元の世界より顔つきとかがしっかりしている分、歳は上に見えるし、大人っぽいんだけどね。
でも、中身の私的にはガキだなー、とも感じるし、複雑だなぁ。
どっちにしろ、恐ろしくキラキラしい美形様なうえ、身分的にも王子様であらせられるところのアレン様に、得体のしれない孤児のチビガキじゃ釣り合わない、っていうのを丸っとさておいたとしたって、私自身恋愛対象にはならないかな。
なんか、根本的に価値観合わなそうだし、この世界の人と恋愛するのは難しそう。
中身は38だし、まともに恋愛とか始めそうな十代半ばには精神年齢は50近くなるわけで、このまま枯れていくんじゃないかな、なんてことをぼんやり思う。
だとしたら、このあまり人とは関わらなさそうな森の中での生活、ものすごく掛け替えがないんじゃないだろうか。
ロイみたいに引っ込んでたら、アレンみたいなもの好きがいない限りは、他人と関わるのは最小限でよさそうだし……。
このままロイの弟子になれたら、手に職もつけられるし、将来も安泰そうで言うことなしなんだけど。
そんな自分勝手な将来設計なんてしてたらダメかしら?
盛大に吹き出したアレンはしばらくテーブルに手をついたまま肩を震わせていた。
とんでもない罵倒をしてしまったのに、めちゃくちゃウケたみたい。
……この王子様、暇な上にドエムなのかな。
いや、人間て暇だと変態をこじらせるのかもしれない。
ほら、かつてソドムは堕落と退廃に満ちていたとかいうし。
ひっひっひ、と笑いを止められず引きつったみたいな声を上げているアレンを、ロイも困惑の眼差しで見ている。
「そう、俺暇なの。うちはお兄様たちが優秀だから、三男の俺は暇してた方がいいんだよ」
「あぁ、おいえそうどうてきな? かつぎあげられちゃう?」
神輿は軽い方がいい、って言うもんね。
「ぶあはははははははは、もうやだ。何だこいつ、おもしれえな。ちょ、ロイ。こいつ俺に寄越せよ。絶対退屈しないだろ」
「だがことわる!」
ロイに任せず、私自らきっぱり断ると、またも頭をグリグリ撫でてきた。
「なんでだよー、こんな森の中で引きこもってるより、おもしれえもん一杯見せてやるぜ?」
「おもしれえおんな、とかいってくどいてくるおとこに、ろくなやつはいないと、わたしはしっている」
大体、面白いとか何とか、自分が評価する側であるという大前提が間違っているうえに思い上がりも甚だしいよね、と胸を張って言うと、アレンは残念なものを見る目で言った。
「確かに面白いとは言ったけど、おもしれえ女、って、お前みたいなチビを女として見るのはさすがに無理があるだろう」
「は。びみょうに、にゅあんすがちがった?」
「あと十年は育ってもらわねえと無理だな」
「じゅうねんごでも、わたしじゅうよんさいだし、あれんはさんじゅうにで、おっさんじゃん……ただのえろじじいじゃん……なまなましいぶん、よけいきもちわるい……」
十年後だろうが、ペドフィリアがロリコンに名称変わるくらいで大差ないよ。
それでもまだ私の中身よりも若いけども。
いや、愛がね、あるんならいいけど、私とアレンの間にはそんなものないし、たとえ話ならいいだろう、って持ち出されるだけでも引く……。
思わずいやーな顔をしていると、アレンも顔を顰めた。
「おいちび、気持ち悪いはさすがに傷つく」
「あ、そうだよね。ごめん」
「いや、いいけど」
発端は私の勘違いだ。
そこは素直に謝っておこう。
「でも、よこせはよくない。わたしはたいくつしのぎのおもちゃじゃない。ここにおいてもらってるのは、わたしのいし。ろいによこせっていうのはまちがい」
そこだけはきっぱりと断言すると、アレンは苦笑しつつ、席についた。
「そうだな。それは俺も悪かった。お互いに謝ったところで、飯にしようぜ」
「うん、いいよ」
せっかく温めてもらったスープも冷めちゃうし、一時休戦だ。
休戦協定を結んだ私たちに、ロイもほっと胸を撫で下ろした様子になった。
それぞれに食前の祈りをして、お昼を食べ始める。
うん。カラーシドレッシング、いい感じ。
もうちょっとピリッとさせてもいいかもしれない。
薬草棚にマスタードってあったかしら。
ワサビっぽいものはあったから、醤油があればワサビ醤油とかも手軽で美味しそうだよね。
あ、けど今のこの舌じゃ、やっぱり辛いものは無理かなぁ……。
「うまっ。おい、チビ。やっぱ嫁に来ない?」
「そういうじょうだんいうおじさんきらい」
「バカ、俺はまだおじさんじゃねえぞ!」
「もうしわけありませんが、ごきぼうにはそいかねるため、つつしんでおことわりもうしあげます」
「何だ、その言い回し。馬鹿丁寧な分、拒絶されてる感がすごいな!?」
元の世界より顔つきとかがしっかりしている分、歳は上に見えるし、大人っぽいんだけどね。
でも、中身の私的にはガキだなー、とも感じるし、複雑だなぁ。
どっちにしろ、恐ろしくキラキラしい美形様なうえ、身分的にも王子様であらせられるところのアレン様に、得体のしれない孤児のチビガキじゃ釣り合わない、っていうのを丸っとさておいたとしたって、私自身恋愛対象にはならないかな。
なんか、根本的に価値観合わなそうだし、この世界の人と恋愛するのは難しそう。
中身は38だし、まともに恋愛とか始めそうな十代半ばには精神年齢は50近くなるわけで、このまま枯れていくんじゃないかな、なんてことをぼんやり思う。
だとしたら、このあまり人とは関わらなさそうな森の中での生活、ものすごく掛け替えがないんじゃないだろうか。
ロイみたいに引っ込んでたら、アレンみたいなもの好きがいない限りは、他人と関わるのは最小限でよさそうだし……。
このままロイの弟子になれたら、手に職もつけられるし、将来も安泰そうで言うことなしなんだけど。
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