3 / 55
第一章 はじめまして異世界
おっときました尋問タイム
しおりを挟む
お兄さんが立ち上がると、ベッドサイドにあった毛布みたいなのも立ち上がり、のっそりとついてきた。
犬か。
茶色いラグじゃなかったんだ。
似ている犬種を上げるとするなら、ニューファンドランドだろうか。カナダとかの海難救助犬やってるやつ。
でっかい犬だ。
今の私のボディなら、上に乗れちゃいそう。
隣の部屋の中央に置かれた4人掛けテーブルの上にはスープが二皿、湯気を立てている。
お兄さんは私を膝の上に乗せて腰掛けた。
「神よ、今日も恵みに感謝いたします」
お兄さんはお祈りをしてスプーンを手に取ると、少し迷っている素振りを見せた。
「あの、じぶんでたべられる……から……」
「そう?」
「いただきます」
自分でスプーンを持たせてもらい、スープを口に運ぶ。
私の身体を気遣ってくれたのか、キャベツっぽいものを水から柔らかく煮込んだだけ、という感じのスープは、塩味も薄くて、かなり味気ない。
それでもせっせと食べておなかが温まると、やっと一息つくことができた。
「ごちそうさまでした」
スプーンを置いて手を合わせる。
「もういいの?」
「うん」
「では、私も食事をさせてもらうね」
お兄さんは私を隣の椅子に座らせると、もう冷めてしまったスープを食べ始めた。
そのスープは私が食べていたものとまったく同じに見えた。
私はお兄さんが食事をするのを横目に、室内へ視線を巡らせた。
……このテーブルは四人掛けだし、食器は複数あるみたいだけど、何人家族なんだろう?
さっきのベッドも、大き目ではあったけどセミダブルくらいだったしな。
お兄さんサイズの人が二人寝るのは、ちょっと苦しそう。
本棚はあるけど、そこいらじゅうに本が積み重なっていて、肝心の本棚はスカスカ。羊皮紙みたいなものが重ねられた山もある。
それから目立つものといえば、葉っぱ?
干してあるのか、それとも飾ってあるのか、階段の手すりに束ねた葉っぱがずらっとぶら下げられている。
漢方薬っぽい匂いはその葉っぱからのものだろう。
薬草なのかな、とも思ったけど、ニンニクとかショウガとかトウモロコシっぽいのもあるから、食料の可能性も捨てきれない。
これって、漫画とか小説で見たことがある異世界転生って奴なんだろうか。
さっき食べたスープがこの世界の料理の基準なら、料理チートができてしまうかもしれない。
お兄さんはスープを食べ終えてしまうと、私を抱えてソファに移動した。
やっぱり犬ものっそりと付き従うみたいについてきたけど、この犬もまた大人しいな。
静かに私たちの足元で丸くなっている。
うーん、膝の上。落ち着かない……。
抱えていてもらわないと目線は合わないんだけども。
これって私が小さいのか、お兄さんの背が高いのか、どっちなんだろう?
それにお兄さんの声ちっさいから、抱えてでもくれなきゃちゃんと聞き取れない。
「私の名前はレクサノール=スクラネカ」
「れくさのーる、すくらねか?」
「ロイ、でいい」
何故、レクサノールがロイになる?
「このスクラネカ領の領主家の者だ、一応ね」
領主、ってことは封建制の世界なのか。
そんなお偉いさんが、いくら見た目幼児とはいえ、不審者とふたりっきりでいいものなんだろうか。
子供爆弾とか心配しないの?
それとも血縁関係にあるっていうだけで、実権はないのかな。
こんな自信なさそうな小さい声の人が権力者っていうのも考えにくいもんね。
あと、この家、あんまり偉い人の家には見えないしね。
どっちかというと、魔女の家って言われた方がしっくりくる。
「その子はペス。女の子だ」
「わふ」
伏せていた犬は、呼ばれた名前に応えて、垂れた耳を動かす。
うわ、賢いなこの子。
ちゃんと紹介されてるがわかるんだね。
「それで君は自分の名前、言えるかな?」
おっと、尋問タイムきましたよ。
犬か。
茶色いラグじゃなかったんだ。
似ている犬種を上げるとするなら、ニューファンドランドだろうか。カナダとかの海難救助犬やってるやつ。
でっかい犬だ。
今の私のボディなら、上に乗れちゃいそう。
隣の部屋の中央に置かれた4人掛けテーブルの上にはスープが二皿、湯気を立てている。
お兄さんは私を膝の上に乗せて腰掛けた。
「神よ、今日も恵みに感謝いたします」
お兄さんはお祈りをしてスプーンを手に取ると、少し迷っている素振りを見せた。
「あの、じぶんでたべられる……から……」
「そう?」
「いただきます」
自分でスプーンを持たせてもらい、スープを口に運ぶ。
私の身体を気遣ってくれたのか、キャベツっぽいものを水から柔らかく煮込んだだけ、という感じのスープは、塩味も薄くて、かなり味気ない。
それでもせっせと食べておなかが温まると、やっと一息つくことができた。
「ごちそうさまでした」
スプーンを置いて手を合わせる。
「もういいの?」
「うん」
「では、私も食事をさせてもらうね」
お兄さんは私を隣の椅子に座らせると、もう冷めてしまったスープを食べ始めた。
そのスープは私が食べていたものとまったく同じに見えた。
私はお兄さんが食事をするのを横目に、室内へ視線を巡らせた。
……このテーブルは四人掛けだし、食器は複数あるみたいだけど、何人家族なんだろう?
さっきのベッドも、大き目ではあったけどセミダブルくらいだったしな。
お兄さんサイズの人が二人寝るのは、ちょっと苦しそう。
本棚はあるけど、そこいらじゅうに本が積み重なっていて、肝心の本棚はスカスカ。羊皮紙みたいなものが重ねられた山もある。
それから目立つものといえば、葉っぱ?
干してあるのか、それとも飾ってあるのか、階段の手すりに束ねた葉っぱがずらっとぶら下げられている。
漢方薬っぽい匂いはその葉っぱからのものだろう。
薬草なのかな、とも思ったけど、ニンニクとかショウガとかトウモロコシっぽいのもあるから、食料の可能性も捨てきれない。
これって、漫画とか小説で見たことがある異世界転生って奴なんだろうか。
さっき食べたスープがこの世界の料理の基準なら、料理チートができてしまうかもしれない。
お兄さんはスープを食べ終えてしまうと、私を抱えてソファに移動した。
やっぱり犬ものっそりと付き従うみたいについてきたけど、この犬もまた大人しいな。
静かに私たちの足元で丸くなっている。
うーん、膝の上。落ち着かない……。
抱えていてもらわないと目線は合わないんだけども。
これって私が小さいのか、お兄さんの背が高いのか、どっちなんだろう?
それにお兄さんの声ちっさいから、抱えてでもくれなきゃちゃんと聞き取れない。
「私の名前はレクサノール=スクラネカ」
「れくさのーる、すくらねか?」
「ロイ、でいい」
何故、レクサノールがロイになる?
「このスクラネカ領の領主家の者だ、一応ね」
領主、ってことは封建制の世界なのか。
そんなお偉いさんが、いくら見た目幼児とはいえ、不審者とふたりっきりでいいものなんだろうか。
子供爆弾とか心配しないの?
それとも血縁関係にあるっていうだけで、実権はないのかな。
こんな自信なさそうな小さい声の人が権力者っていうのも考えにくいもんね。
あと、この家、あんまり偉い人の家には見えないしね。
どっちかというと、魔女の家って言われた方がしっくりくる。
「その子はペス。女の子だ」
「わふ」
伏せていた犬は、呼ばれた名前に応えて、垂れた耳を動かす。
うわ、賢いなこの子。
ちゃんと紹介されてるがわかるんだね。
「それで君は自分の名前、言えるかな?」
おっと、尋問タイムきましたよ。
11
お気に入りに追加
176
あなたにおすすめの小説
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
神々の仲間入りしました。
ラキレスト
ファンタジー
日本の一般家庭に生まれ平凡に暮らしていた神田えいみ。これからも普通に平凡に暮らしていくと思っていたが、突然巻き込まれたトラブルによって世界は一変する。そこから始まる物語。
「私の娘として生まれ変わりませんか?」
「………、はいぃ!?」
女神の娘になり、兄弟姉妹達、周りの神達に溺愛されながら一人前の神になるべく学び、成長していく。
(ご都合主義展開が多々あります……それでも良ければ読んで下さい)
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺わかば
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる