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最終話
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この街には『鴉が鳴くと人が死ぬ』という噂がある。
黄昏時の街を鴉が鳴いている。大きな鴉だった。赤く染まる空を旋回飛行しながら鳴き続けていた。その鴉の下には、男が走っていた。何かに怯えるように、頻りに背後と頭上を見ながら走っていた。
「何だよあの鴉! ずっとついてきやがる!」
男は石を拾い、頭上の鴉を落とそうと投げつけるが、あえなく外れ、自分の顔に石を食らうことになった。舌打ちをし、再び駆ける。
「冗談じゃねぇ、鴉が鳴くと人が死ぬんだろ! 死んでたまるかってんだ!」
「そうそう。死にたくないですヨネ」
「うわぁっ!」
男の前に少女が現れた。脚に金属がついている。義肢のようにも見えるが、少女の脚は生身のようにも見えていた。
「ですカラ、ユーユーにお任せください。アナタを救いますヨ!」
頭上を飛んでいた鴉が下りてくる。少女の肩に乗り、「グワァ」と鳴く。少女は笑いながら、男に歩みを進める。
その度にちゃりん、ちゃりん、と小さく音が鳴っていた。少女の服の袖は長い。手元が一切見えないくらいだった。丈の短めのチャイナドレスからはえる脚は、幼さと共に艶めかしさも感じられるほどに肉質があり、肌は白かった。彼女の髪が斜陽と共に朱色に染まって見える。銀髪とも白髪とも言えるような美しい髪だった。琥珀色の大きな瞳をゆるゆる細めながら、彼女は歩く。
「そんなに怯えなくて良いンですヨ。ユーユーは、お救いしますヨ」
「よ、寄るな! お前、あれだろ! 噂に名高い白鴉だろ!」
「そうだけど、そうじゃないかなぁ」
「なっ!」
ちゃりん、と微かな金属音が鳴った後には、男は地面に倒れていた。地面に赤い水たまりが広がっていく。血の香りが鼻孔をくすぐっていった。濡れた琥珀色の瞳が揃う。
「雨泽哥哥、お見事デス」
「ハイハイ。雨涵もお見事。よく注意をひけたね。オレね、こういうの相手するの苦手だったから、助かったよ。だって、ここ、表側に近いからさ、見つかったら面倒ったらありゃしないよね」
「ハイ。でも、哥哥なら、いつものように一瞬でしたよネ?」
「仕留めるのは一瞬でも、後片付けに時間かかっちゃうよ。人を一人片付けるのでも大変だから、こういう裏側に誘導できたのはとっても良いこと!」
雨泽はそう言いながら、少女――雨涵の頭を撫でる。彼女は嬉しそうに破顔した。
「エヘヘ、嬉しいですヨ」
「カアアアア!」
「おっと、静静。そうだね。話してないでお片付けしないとね」
鴉の一声で二人は片付けを始める。二人とも白い服を着ているので、男に触る度に血で赤く染まっていく。それを紅白揃ってめでたい。縁起が良い、と笑いながら作業を進めていく。古ぼけたクーラーボックスに男を折りたたみ、しっかりと蓋を閉じた。
ここで雨涵は脚の歩行補助具から、電子機器を取り出す。この補助具を設計、調整している趙と連絡を簡単に取り合うことできる携帯端末だ。市販の電子機器だといつどこで知らぬ間に情報漏えいしているかわからないということで、個別に取り付けられていた。この歩行補助具には彼女自身の健康状態を把握する機能もついており、万が一のことが起これば、すぐに研究部のデスクで警告音が鳴るようになっている。鳴るだけなので、何もされなければ、それだけなのだが。
「唯唯、ご依頼の品、準備できたヨ。え? こっちで食べて良いの? ヤッタ! 雨泽哥哥、これ、食べて良いそうですヨ!」
「へえ、太っ腹だね。今回は薬にしないんだ?」
「ハイ、ハイ。わかりましたヨ。ユーユー、お伝えしておきますネ。……お薬にするには知能指数が足りなかったそうですヨ。だから、食べて良いと仰っておりましたヨ」
「へえ、それじゃあ、遠慮なく食べよっか。男を解体するの久しぶりだなぁ。雨涵やってみる?」
「良いのですカ? ちょうど、独りでやってみたかったのですヨ!」
「うん。オレね、雨涵のそういう頑張り屋さんなところ好きだよ。オレは隣で見といてあげるから、独りでやってみようね」
「はい! 哥哥!」
雨泽の言葉に、雨涵は嬉しそうに笑いながら答える。
クーラーボックスを抱え、店の裏口から食材を直接搬入する。血で汚れた服はここで脱ぎ捨て、洗濯機へと投げ入れた。雨涵はすっかり女性特有の膨らみが身体に出てきたので、雨泽は苦笑いをする。見慣れているのでなんとも思わないのだが、ここまで無防備に脱がれても困る。
「雨涵、オレも男だから、無防備に脱いじゃ駄目だよ。食べられちゃうかもしれないよ」
「アラ、ユーユーは、哥哥に食べられたいと思っていますヨ。いつでもドウゾ!」
「もーっ、年を重ねるほどにおいしそーになっていくんだから、困っちゃう。食べ頃がわからなくなっちゃうよ」
「哥哥がユーユーを食べたくて食べたくて堪らないって時に、お食べになってくださいネ」
「オレね、もう昔ほど食べたいって思わなくなってきたんだよね。ビョーキもだいぶ良くなってきたし」
半袖の調理服に着替えた雨泽は自分の手を見つめてからそう答える。爪は桃色で、反り返っていない。スプーンネイルは解消されていた。ふらつくことも今では滅多にない。寝ぼけて転ぶことがあるくらいで、他はしっかりしていた。
「哥哥が健康になってくれたなら、ユーユーは嬉しいですヨ」
「うん。ありがとうね。雨涵を非常食に貰ってきて本当に良かったよ」
「ユーユーは非常食なので、いつでもどこでも食べてくださいネ。ユーユーは、命の恩人の哥哥に食べられたいと思っておりますヨ。ここまで大きく育ててくださったのですカラ、いつでも仰ってくださいネ。いつでも、いつでも、首を掻っ切ってくださいネ」
「ハイハイ、今のところは食べないよ。ほら、この子を解体していこうね」
雨泽は特別な器具を取り付け、男を逆さ吊りにする。雨涵はすぐに包丁で男の首を切り裂いた。血がドバドバ流れ出る。バケツに血を溜める。これは幼い頃に彼から教わった方法だった。人間を解体し、食材へと加工していく作業。それらを全て幼い頃に見てきた。だから、記憶を辿れば、すぐにこうやって、食肉加工を施すことができる。
異常と言えることだったが、これが彼女には日常だった。親にゴミ捨て場に置き去りにされ、鴉と残飯を食べて生活した日々、それから肉屋の主人に拾われ、料理店の店主――雨泽に引き取ってもらえた。たまに店を訪れる洋から一般的な教育を受け、薬を持って来る唯からは専門的な知識を授かった。そうして、今の彼女の生活が成り立っている。支え合って、小さな幸せをやっと掴めたところだった。
血を抜いた後の過程は簡単だ。腹を裂き、肛門を縛って中身が出ないようにしておく。それから腸を取り出し、横隔膜を剥がし、心臓や肺を取り出していく。一直線に繋がった内臓は面白いほど簡単に取り出すことができるようになった。嬉しくなって笑っていると隣で雨泽も笑っている。長くて鋭い犬歯が見えるほどの笑顔だった。その笑顔が素直に嬉しかった。
家族が外で鳴いている。食事を待っているのだ。おこぼれに預かろうと何度も鳴いている。人を殺して、人を解体しているのに、楽しくって面白くて、嬉しかった。
雨涵は臓器を入れたバケツを持って外に出る。鴉が綺麗に整列していた。くりくりの目を見せて、愛らしく、ぴょこぴょこ跳ねて近付いてくる。彼女はゴム手袋を赤く染めながら、臓器をばらまく。鴉達が歓喜の声をあげ、ばら撒かれた臓器へ飛びついていく。
「カアカア」
歌うように、雨涵の後ろで雨泽が鴉の鳴き真似をする。それに応えるように、周囲の鴉達――家族も鳴く。
そして、彼女は満面の笑みを浮かべた。
白鴉が鳴くならば、きっと誰かが笑うだろう。そうして、死体が消えていく。
黄昏時の街を鴉が鳴いている。大きな鴉だった。赤く染まる空を旋回飛行しながら鳴き続けていた。その鴉の下には、男が走っていた。何かに怯えるように、頻りに背後と頭上を見ながら走っていた。
「何だよあの鴉! ずっとついてきやがる!」
男は石を拾い、頭上の鴉を落とそうと投げつけるが、あえなく外れ、自分の顔に石を食らうことになった。舌打ちをし、再び駆ける。
「冗談じゃねぇ、鴉が鳴くと人が死ぬんだろ! 死んでたまるかってんだ!」
「そうそう。死にたくないですヨネ」
「うわぁっ!」
男の前に少女が現れた。脚に金属がついている。義肢のようにも見えるが、少女の脚は生身のようにも見えていた。
「ですカラ、ユーユーにお任せください。アナタを救いますヨ!」
頭上を飛んでいた鴉が下りてくる。少女の肩に乗り、「グワァ」と鳴く。少女は笑いながら、男に歩みを進める。
その度にちゃりん、ちゃりん、と小さく音が鳴っていた。少女の服の袖は長い。手元が一切見えないくらいだった。丈の短めのチャイナドレスからはえる脚は、幼さと共に艶めかしさも感じられるほどに肉質があり、肌は白かった。彼女の髪が斜陽と共に朱色に染まって見える。銀髪とも白髪とも言えるような美しい髪だった。琥珀色の大きな瞳をゆるゆる細めながら、彼女は歩く。
「そんなに怯えなくて良いンですヨ。ユーユーは、お救いしますヨ」
「よ、寄るな! お前、あれだろ! 噂に名高い白鴉だろ!」
「そうだけど、そうじゃないかなぁ」
「なっ!」
ちゃりん、と微かな金属音が鳴った後には、男は地面に倒れていた。地面に赤い水たまりが広がっていく。血の香りが鼻孔をくすぐっていった。濡れた琥珀色の瞳が揃う。
「雨泽哥哥、お見事デス」
「ハイハイ。雨涵もお見事。よく注意をひけたね。オレね、こういうの相手するの苦手だったから、助かったよ。だって、ここ、表側に近いからさ、見つかったら面倒ったらありゃしないよね」
「ハイ。でも、哥哥なら、いつものように一瞬でしたよネ?」
「仕留めるのは一瞬でも、後片付けに時間かかっちゃうよ。人を一人片付けるのでも大変だから、こういう裏側に誘導できたのはとっても良いこと!」
雨泽はそう言いながら、少女――雨涵の頭を撫でる。彼女は嬉しそうに破顔した。
「エヘヘ、嬉しいですヨ」
「カアアアア!」
「おっと、静静。そうだね。話してないでお片付けしないとね」
鴉の一声で二人は片付けを始める。二人とも白い服を着ているので、男に触る度に血で赤く染まっていく。それを紅白揃ってめでたい。縁起が良い、と笑いながら作業を進めていく。古ぼけたクーラーボックスに男を折りたたみ、しっかりと蓋を閉じた。
ここで雨涵は脚の歩行補助具から、電子機器を取り出す。この補助具を設計、調整している趙と連絡を簡単に取り合うことできる携帯端末だ。市販の電子機器だといつどこで知らぬ間に情報漏えいしているかわからないということで、個別に取り付けられていた。この歩行補助具には彼女自身の健康状態を把握する機能もついており、万が一のことが起これば、すぐに研究部のデスクで警告音が鳴るようになっている。鳴るだけなので、何もされなければ、それだけなのだが。
「唯唯、ご依頼の品、準備できたヨ。え? こっちで食べて良いの? ヤッタ! 雨泽哥哥、これ、食べて良いそうですヨ!」
「へえ、太っ腹だね。今回は薬にしないんだ?」
「ハイ、ハイ。わかりましたヨ。ユーユー、お伝えしておきますネ。……お薬にするには知能指数が足りなかったそうですヨ。だから、食べて良いと仰っておりましたヨ」
「へえ、それじゃあ、遠慮なく食べよっか。男を解体するの久しぶりだなぁ。雨涵やってみる?」
「良いのですカ? ちょうど、独りでやってみたかったのですヨ!」
「うん。オレね、雨涵のそういう頑張り屋さんなところ好きだよ。オレは隣で見といてあげるから、独りでやってみようね」
「はい! 哥哥!」
雨泽の言葉に、雨涵は嬉しそうに笑いながら答える。
クーラーボックスを抱え、店の裏口から食材を直接搬入する。血で汚れた服はここで脱ぎ捨て、洗濯機へと投げ入れた。雨涵はすっかり女性特有の膨らみが身体に出てきたので、雨泽は苦笑いをする。見慣れているのでなんとも思わないのだが、ここまで無防備に脱がれても困る。
「雨涵、オレも男だから、無防備に脱いじゃ駄目だよ。食べられちゃうかもしれないよ」
「アラ、ユーユーは、哥哥に食べられたいと思っていますヨ。いつでもドウゾ!」
「もーっ、年を重ねるほどにおいしそーになっていくんだから、困っちゃう。食べ頃がわからなくなっちゃうよ」
「哥哥がユーユーを食べたくて食べたくて堪らないって時に、お食べになってくださいネ」
「オレね、もう昔ほど食べたいって思わなくなってきたんだよね。ビョーキもだいぶ良くなってきたし」
半袖の調理服に着替えた雨泽は自分の手を見つめてからそう答える。爪は桃色で、反り返っていない。スプーンネイルは解消されていた。ふらつくことも今では滅多にない。寝ぼけて転ぶことがあるくらいで、他はしっかりしていた。
「哥哥が健康になってくれたなら、ユーユーは嬉しいですヨ」
「うん。ありがとうね。雨涵を非常食に貰ってきて本当に良かったよ」
「ユーユーは非常食なので、いつでもどこでも食べてくださいネ。ユーユーは、命の恩人の哥哥に食べられたいと思っておりますヨ。ここまで大きく育ててくださったのですカラ、いつでも仰ってくださいネ。いつでも、いつでも、首を掻っ切ってくださいネ」
「ハイハイ、今のところは食べないよ。ほら、この子を解体していこうね」
雨泽は特別な器具を取り付け、男を逆さ吊りにする。雨涵はすぐに包丁で男の首を切り裂いた。血がドバドバ流れ出る。バケツに血を溜める。これは幼い頃に彼から教わった方法だった。人間を解体し、食材へと加工していく作業。それらを全て幼い頃に見てきた。だから、記憶を辿れば、すぐにこうやって、食肉加工を施すことができる。
異常と言えることだったが、これが彼女には日常だった。親にゴミ捨て場に置き去りにされ、鴉と残飯を食べて生活した日々、それから肉屋の主人に拾われ、料理店の店主――雨泽に引き取ってもらえた。たまに店を訪れる洋から一般的な教育を受け、薬を持って来る唯からは専門的な知識を授かった。そうして、今の彼女の生活が成り立っている。支え合って、小さな幸せをやっと掴めたところだった。
血を抜いた後の過程は簡単だ。腹を裂き、肛門を縛って中身が出ないようにしておく。それから腸を取り出し、横隔膜を剥がし、心臓や肺を取り出していく。一直線に繋がった内臓は面白いほど簡単に取り出すことができるようになった。嬉しくなって笑っていると隣で雨泽も笑っている。長くて鋭い犬歯が見えるほどの笑顔だった。その笑顔が素直に嬉しかった。
家族が外で鳴いている。食事を待っているのだ。おこぼれに預かろうと何度も鳴いている。人を殺して、人を解体しているのに、楽しくって面白くて、嬉しかった。
雨涵は臓器を入れたバケツを持って外に出る。鴉が綺麗に整列していた。くりくりの目を見せて、愛らしく、ぴょこぴょこ跳ねて近付いてくる。彼女はゴム手袋を赤く染めながら、臓器をばらまく。鴉達が歓喜の声をあげ、ばら撒かれた臓器へ飛びついていく。
「カアカア」
歌うように、雨涵の後ろで雨泽が鴉の鳴き真似をする。それに応えるように、周囲の鴉達――家族も鳴く。
そして、彼女は満面の笑みを浮かべた。
白鴉が鳴くならば、きっと誰かが笑うだろう。そうして、死体が消えていく。
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