白鴉が鳴くならば

末千屋 コイメ

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第十九話

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『もうすぐ着きます。』
携帯にメッセが届く。

昔の部署の部下だった浦からだ。
奴は173/70くらい。社会人サークルで今もアメフトをやっている。キッカーというポジションらしく、ムキムキというよりはスレンダーな筋肉。歳は今29だったはず。
出張でこっちに来ていて会いたいと連絡が来たので飲むことにした。

うちの最寄り駅で待ちあせて居酒屋に行った。
久々の再会。5年振りか。
当時、浦は新入社員として俺の部署に配属された。正直言ってバカな体育会系。慣れない地で頑張っていたが成績はイマイチ。
俺がリーダーを務めるチームに入ってきた新入社員だったのでかなり力を入れて教えた。でもびっくりするくらい仕事が出来ない。
部長や課長に叱られる日々が続いていた。浦はうちの近くに住んでいて毎朝俺の家に来て一緒に通勤する。どうすべきか、何を目指すべきか、通勤途中で俺は熱く語った日が懐かしい。

浦はいわゆる爽やかイケメンだ。客ウケも最初はいい。でも頭が悪く要領が悪い。客も可愛さ余って憎さが百倍という感じで激しいクレームを言ってきた。俺はかなりフォローをしたが浦に対する部長の評価は最低だった。

知り合いがいない新天地で浦は結婚したい、頑張る理由が欲しいとずっと言っていたことを思い出す。

居酒屋で今の上司に毎日怒られている話を聞く。頑張ろうとしているが空回りの毎日。変わらなきゃと思うが変われない自分に浦は悩んでいるらしい。ツーブロックのショートで少し大人びたが、相変わらず爽やかな顔で悩みを吐く。

居酒屋を出てもう一軒行こうとした時、浦は言った。
『工藤課長、家買ったと聞きました。招待してください。二次会は課長の家で。』
『まあ、いいよ。近いけどタクシー乗ろ。』
俺の家は居酒屋とは駅の反対側にあり、歩いて20分くらい。家に行くならタクシーだ。酔いが少し回っている。2人でコンビニで酒とツマミを買ってタクシーを捕まえようと道路で待っていた。

『俺、変わりたいんすけど、どーしたらいいすかね。変われないす。』
いきなりさっきの話の続き。浦はまあまあ酔っている。
『お前はいくじなしだからな。思い切って今までやったことないことしてみれば。』
『そう思うんですけど、思いつかないす。何かいいアイデアないすか?』
浦が俺にもたれかかる。筋肉質な腕を掴み、浦を支えた。ぷんと匂う汗臭さ。肩の筋肉が手に伝わる。

『なんでもいいよ。思い切っていろいろやってみろ。カラを打ち破れ。』
『破りたいす。工藤課長、俺のカラを打ち破ってください。ご指導お願いします!』

俺は酔いが回ったのもあって冗談半分で言った。
『じゃ、とりあえずポロんとしとこ。ちんぽ出せ。』
『はいっ!』
酔っ払った浦はチャックを下ろしちんぽを出した。
『お前、最高!でも金玉も出しとこ。』
俺は酔いも手伝い悪い体育会ノリで浦の股間に手を入れて金玉を引きずり出した。
スーツ姿の男が金玉とちんぽを晒している。体育会系はバカだ。

『ははは。お前最高!カラを打ち破ってる。でもこの皮は剥いとこ。』
萎えて皮がかぶっていてもカリ首の形がハッキリ分かるどす黒いちんぽ。皮をずり下げると黒みを帯びた太いエラが剥き出しなった。

冗談めかしたが俺はびっくりしていた。
爽やかな顔に似合わずおっさんについていそうな使い込まれたドス黒いちんぽに。

『ははは。すげぇな。じゃ、このままでタクシー乗ろう。』
すぐにタクシーが来た。浦はジャケットの前を閉めてタクシーに乗り込む。
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