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第四十九話
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◆◇◆◇◆◇
今日は早くから神田の米問屋さんが見世を訪ねてきてる。錦姉様の部屋に入って箪笥や家財の一切を見てるようやった。まだ若そうな旦那様やの。こうして迎えに来てくれるなんて稀なんやって言うてる姉様もおった。勤めあがりの女なんてどうすんだかってぼやいてる朋輩もおった。女郎は房事で男を悦ばす技に長けてても、家事はできへんから……邪険にされるんやと思う。そんでも、米問屋さんは嬉しそうに笑いながら錦姉様と話をしてる。姉様も幸せそうやの。ええな。ウチもいつかああなりたいな。
禿達が姉様の足元に縋りついて「おいらん行っちゃやだぁ」とか「おいらも連れてっとくれぇ」とか泣いて騒いでる。新造も同じように泣いてる。
「おやぁ、泣き虫のお前さんが泣いてないなんて珍しいこともありんす」
「ウチが泣いたら、錦姉様は困ってしまうの」
「あっはっはっは。お言いの通りでございんす。お前さんがこれからこの見世を背負っていくんだよ。道中を張れる松の位の女郎はお前さんだけだからねぇ」
錦姉様は笑いながら前髪を上げる。漆のような黒い瞳と澱んで白く濁った瞳がウチを真っすぐ見つめる。ウチは目を逸らさないようにじっと見つめ返す。すると姉様はにっこり笑た。前髪を下ろして、ウチの頭をなでなでしてくれる。旦那様の袖を引っ張って耳打ちもした。旦那様も笑ってウチの頭をなでなでしてくれた。二人になでなでしてもろて嬉しい。けど、何を言うたんやろ? ウチの事を気味悪がらずに撫でてくれるだけでも嬉しいのに、笑ってくれてる。とても楽しそうに、嬉しそうに、笑ってる。他の女郎のひそひそ話が聞こえてくる。あんなのに見世を任せられるかって、道中を張れるのかって。何か言い返せたら良いのに、ウチは何も返せない。目に涙が溜まってくる。視界が滲んで見える。姉様の年季が明けて、姉様が娑婆に出られて、姉様が幸せになるんやから、嬉しいはずやのに、ひどく悲しい。嬉しいのに悲しい。淋しい。
「景一。よくお聞き。わっちがお前さんの姉女郎として最後に教える事でありんす」
「何やの……?」
「他人より多く貰う者は、他人より多く憎まれる。お前さんは器量が良くて、上品のぼぼを持っている天神様だ。だから多く憎まれるが、多く愛される。お前さんはそういう御職を張りんす。わっちよりも売れっ子になりんす」
ぎゅっと抱き締められる。ふあふあの胸に埋めてもらう。これをしてもらうのも最後。涙が一筋流れたら後はもう取り留めがつかんくなった。子供のように声をあげて泣く。
「あー! 景一が泣きんしたー!」
「泣きんした!」
禿達も声をあげてわんわん泣き始めた。新造達も泣いてる。錦姉様を慕う皆が泣いてる。ウチの所為で皆泣いてしもた。ウチの所為やの。ウチ、悪い子やの。だからたくさん叱ってもらいたいの。
そんでも、錦姉様は優しく微笑んでウチの頭を撫でてくれる。
旦那様が「皆おまえがいなくなるから淋しいんだな」って優しい声色で話しかけてるんが聞こえた。
身請けやないから惣仕舞にされてない。ウチは昼見世に出なあかんくなる。でも、錦姉様とおりたいから身揚がりさせてもらった。ほとんどの女郎が部屋に残ってる。遣手が怒鳴ってっても気にしない。ええの。折檻されるならされるでええの。錦姉様と今生の別れをするかもしれへんから、ええの。きっと姉様は二度と吉原の地に足をつけへんと思う。米問屋の女将さんとして一生を終えるんやと思う。
泣いてる禿一人一人に話しかけるために姉様はウチを離す。
頬を涙と汗が伝う。噎せ返るような汗の匂い。女郎が集まっているから、白粉の香りが強く鼻をついた。遠くで蝉が喧しいくらいに鳴いている。それはまるで姉様と旦那様を祝っているかのように三味の音と重なって聞こえてきた。汗ばんだ身体を揺らす度にきらきら、汗が落ちる。
一人一人の頭を撫でて丁寧に声をかけて……大変やと思うの。足元に縋りつく禿もおるし、本当に大変やの。ウチは……こんな事できるん? ウチに御職が張れるん? 立派な道中を張れるん? 不安で胸が押し潰されそうになる。でも、ウチが、ウチがやるしかないの。ウチは錦姉様に教え込まれた。御職を張れるようにって……教え込まれた。だから、ウチがやるしかない。
錦姉様はウチの前に立つ。艶やかな仕草で、有り余る色香に、女のウチでもくらくらしてしまう。いつもやられっぱなしやったけど……最後くらいは、やり返してみたいの。
ウチは錦姉様の胸倉を掴んでくちづける。唇を吸うて、開いた口に舌を差し込む。姉様の歯並びを確かめて舌の動きを追う。やわらかく包み込み、吸うたり、絡めたりした。飲み込み切れなくなった涎が垂れて、姉様はウチの胸を押す。銀糸が二人の間を繋いだ。うっすら頬を朱鷺色に染めた姉様が微笑む。
「すごいねぇ景一。こんなにおさしみが上手くなってるなんて、わっちは思わなかったよ。もう濡れちまって、早く旦那様のまらが欲しくなっちまったくらいさ」
「錦姉様にそう言ってもらえて、嬉しいの」
「こんなに人がいるのに、堂々とおさしみするくらいでありんす。立派に御職を張れるさね」
「あ……」
周りを見渡す。頬を紅潮させた子が沢山おる。俯いてもじもじしてる子もおる。米問屋の旦那様も顔を赤らめて股座を押さえてる。ウチは急に恥ずかしくなって俯く。姉様の笑い声が聞こえてきて、頭をぽんぽん優しく叩かれた。
「もう何も心配しなくて良いさね。自信を持ちんしょ」
「そうだぞ景一。おれの女房にそんな艶っぽい口吸いをできるくらいだ。きっと他の男共をひーひーよがらせてるんだろうなぁ」
「おやぁ? 景一におさしみしてもらいたくなったかい? 遊んでも良いんだよ」
「いやいや、おれはお前が一番だ!」
人前でも憚らずいちゃつかれる方の身がわかったの。夏樹様いつもごめんなさい。あてられっぱなしにしてごめんなさいやの。
「いつまでもここにいちゃあ迷惑だ。遣手もさっさと出て行けって思ってるさね。わっちはもう行くよ」
泣いてる禿達の頭をぽんぽんして、姉様は歩き始める。ぞろぞろついていく。大門の向こう側に籠が用意されてた。あれに乗って姉様は行ってしまうんや。娑婆に出てしまうんや。
「わっちは廓生まれの廓育ちだから、ここ以外の景色は知りんせん。今から楽しみで胸が張り裂けそうさ」
外の世界に一番憧れてたんは錦姉様なんかもしれへん。外の世界をずっと知らずに生きてきた姉様が外に出る。心配になる。
祝ってあげな、姉様は幸せそうに笑ってるんやもん。祝わな。
ウチは泣きそうになりながら精一杯笑顔を作った。客に見せるような笑顔で見送ろうとした。
でも、泣いてしもた。ウチは泣いてしもた。悪い子やの。ウチは悪い子やの。姉様の幸せを喜んであげなあかんのに、悲しく思ってしまう悪い子やの。姉様はウチの涙を指で拭う。そんでから口を開いた。
「『泣かないでください。困ります』なんてね、小焼坊ちゃまに似てたかい?」
「はう……」
「泣き止みんしたね。景一、いいや、小景、お達者で」
「うん。錦姉様も、お達者で」
手を振って二人を見送る。籠はすぐに見えなくなった。もう姉様がここに帰ってくることはない。
これからはウチが……いちばんにならな、あかんの。
踵を返す。歩く度に乾いた土が舞い上がる。それならウチの姿を隠して。何者かわからないように。得体の知れない小鬼を隠して。美しい女に化けさせて。皆に憎まれ、愛される姿に変えて。
仲の町ではノミ取り屋が見慣れた二匹の猫のノミを取ってる。その店前に黄金色に輝く髪が揺れている。小焼様やの。でも、その隣におる女は誰……?
「あ! 景一ちゃんだ!」
女の方から声をかけてきた。小焼様は女を見て眉を顰める。肩を押してウチの真ん前に女を押し出した。女はえへへって笑ってる。夏樹様と笑い方が似てるの。
「あたしは伊織屋のふゆ。養生所の夏樹の妹だよ。小焼ちゃんとは幼馴染なの!」
「ウチは景一と申しいす。……小焼様は、ウチの、えっと……えっと……」
「私はお前の何ですか?」
「はうっ! あ、う……小焼様は、ウチの……ウチの……」
「おいらんねえさんは、鬼の兄さんの女房じゃ!」
「そうじゃそうじゃ! 女房じゃ!」
「おきん、おぎん……」
禿二人がウチの前に立って言う。なんて良い子達なんやろ、ウチはなんて良い禿を持ったんやろ。二人の為に勤めな。お腹いっぱい白いおまんまを食べさせてあげられるくらいに勤めて良いべべを着せてあげて、自慢してもらえるような姉様にならな。
おふゆちゃんは禿二人の頭を撫でる。「馬鹿にするな!」って二人は口をとんがらしてるけど、その姿が面白くてウチも笑った。足に何か擦りついてる。市と小鉄がすりすりしてきてた。
「あ! ねえ、あたしも登楼できるのかな? 景一ちゃんともっとお話したい! というか、抱きたい!」
「は?」
「色白ですっごく可憐だし、声も鈴を転がしたようで可愛いもん。ねえ小焼ちゃん、あたしも連れてって」
「馬鹿言わないでください。私はこれから神田に荷を運ぶ仕事があるんです」
「えー。じゃあ、話を通して! ね? 中臣屋の紹介なら引手茶屋も動いてくれるでしょ?」
小焼様は溜息を吐く。でもこれは困ってるんやないの。少しだけ優しさを感じるような溜息。この話ぶりやと小焼様はこれから神田に泊まりでお勤めなんやと思う。
赤い瞳に光が射す。ウチは何かを言いかけた小焼様の目を見ながら深く頷く。小焼様は再び溜息を吐いて、おふゆちゃんに向き直した。
「朝露屋に話をしてやりますから後は自分でどうにかしてください。言っておきますが、この子は安くないですよ」
「ありがとう小焼ちゃん!」
「すみません景一。適当にこの子の相手をしてやってください」
「小焼様の頼みなら喜んで聞くやの」
「ありがとうございます」
小焼様は市と小鉄を抱き上げて去って行った。その後をおふゆちゃんが嬉しそうについていく。
二人の姿を見送って、飴細工の店で鼈甲飴を禿二人に買うた。おきんもおぎんも笑顔の花を咲かせてた。ウチは紅白のねじり棒を咥える。簡単には砕かれへん。鬼にはまだなられへんみたいやの。
夜見世の時間になり、客が続々登楼してくる。上客の渥美様や雪次様は来てない。錦姉様がいなくなったからかあまり賑わってないようにも感じる。姉様の部屋の荷を中臣屋さんが運んだって平八さんに聞いた。だから小焼様は神田に行くって言うてたんやの……。明日には帰ってきてウチに会いに来てくれるかな?
「かわいいなぁ」
「ありがとうございますやの」
今夜会うんが初めてのお客。着物が上等な絹やからお金に余裕はありそうやの。通ってくれたらええな。初会の客とは床入れしやんから盃を交わしてお話をするだけ。床入れしても良いけど、安く見られたくないのと他にも待たせてる客がおるし疲れるからしやんの。売物買物の身体を休めつつ勤める。心は売物やないから小焼様にだけ。いつでも小焼様の事を考えてたら、客にどんなに好かないことをされても耐えられた。これからもきっとそう。小焼様にだけ。小焼様が「待ってろ」と言うなら、ウチは待つの。
「お待たせしました、やの」
「わーい! 景一ちゃん来たー!」
小焼様が口を利いたのもあると思うけど、遣手や廻し方がおふゆちゃんの意向を汲み取って床急ぎの客として、彼女をウチの部屋に案内してた。まあ、宴会をする必要も無いと思うの。
「ねえねえ景一ちゃんは、小焼ちゃんの何処が好き?」
「全部好きやの。ぶきっちょな所も、無愛想な所も、仏頂面な所も、優しい所も、大好きやの」
「ぞっこんだねぇ! 兄ちゃんがいつもあてられてるのわかるや」
「おふゆちゃんは好きな人おらへんの?」
「あたしね、小焼ちゃんの事が昔から好きだったんだ。でもさ、あたしがいくら房事に誘っても小焼ちゃんは乗ってくれなかったの。嫁入り前のだとか何とか言ってさぁ、お固いよねぇ。いまだにあたしの気持ちに気付いてくれてないかも。小焼ちゃんは損しないんだから、抱いてくれても良いと思わない?」
「小焼様は……おふゆちゃんの事を大切にしてくれてるやの」
「なら、何で抱いてくれないの?」
「それは……嫁いだ時に生娘やないってばれたら印象が悪くなるからやと思うの。お姑さんにいじめられたりしやんように……小焼様は考えてくれてるんやと……思うの」
「そっかぁ。もう、それならそう言ってくれたら良いのに。小焼ちゃんはぶきっちょなんだからぁ」
おふゆちゃんは嬉しそうに猪口のお酒を飲み干した。ウチはお酌をする。ウチを『抱きたい』って言うてたけど、生娘やから抱き方も抱かれ方もわからへんと思う。
「おふゆちゃん、ウチが抱いてあげるの」
「え」
「ウチが小焼様の真似をして抱いてあげるの。だから、もう少し待ってて」
床入れの時刻になったから、あちこちから艶やかな声が聞こえてる。支度を済ませたウチは廻し方に案内されて客の待つ部屋へ向かう。
竹千屋の御隠居は深い皺を刻んだ顔でウチを迎える。口でまらの皮をつりあげ舐めるだけで気をやって、まらに元気が無くなってしもたから、「また今度ウチを悦ばせてやの」って頬にくちづけして次の部屋へ。
二人目は留守居役。「ちょんの間でさせて欲しい」って自分で陰茎を扱いて待ってはったから、すぐ入れさせてあげる。三擦り半くらいで気をやりはったから奥まで当たれへんかったし、何も感じへんかった。「次はとっぷりしよ」って伝えて、階下の厠で後始末をしてから次の部屋へ。
三人目は両国の藍染職人。呉服屋の若旦那のふりをしてるけど、ウチは初会から違うってわかった。手が藍で染まってるの。ウチに会うために金を遣り繰りしてたんやから、悪い客やない。真に好いてくれてる。女房にしたいとも言うてくれてる。ウチの語る御伽噺を好きって言うてくれるの。そやから、ウチは語ってあげるの。花を愛する優しい鬼の噺を。人々に恐れられる鬼が、花を愛でるおはなしを。
彼は涙をはらはら流して泣く。「房事はもう良いからわたしが眠るまで頭を撫でてくれ」と言われたんで頭を撫でて、眠ったところで部屋を出る。
おふゆちゃんの待ってる部屋に戻ったら布団の上でガチガチに緊張した面持ちやった。ウチも、水揚の時こんなんやったんかも……。
「おふゆちゃん、ウチ戻って来たの」
「う、うん」
「小焼様の真似してあげるの」
とん、と肩を押して組み敷く。おふゆちゃんは驚いた表情をしたけど、気にせんと着物の合わせを乱暴に左右に開く。緊張して主張してた頂を口に挟む。吸いつきつつ舌先で舐る。アアッ、甘い声が降ってきた。
「声、我慢しやんで良いの。他の部屋からも喧しいくらいによがり声が聞こえてるから」
「で、でも、あたしの声、変じゃない?」
「変やないの。かわいいの」
「アッああんっ!」
敷布を握り締めて快感に耐えてる姿が可愛い。形を変えるように胸を揉んで、摘まんで、捏ね回す。爪の先でゆるく引っ掻いたら、腰が跳ねた。襦袢の腰紐を弛めて裾除けを毟り取る。脚の間は既にびちゃびちゃに潤ってた。くじるのも初めは軋んでたけど、慣れてきて指を二本咥えてる。
「気持ち良いん? ここ、しととに濡らしてるの」
「やっ、ああっ! あ、景いっ、あ、おかしくなっちゃう! それ、気持ち良くて、だめ!」
「遠慮せんとイッてええの」
「ややぁああーっ!」
おふゆちゃんは身体を反らして絶叫する。蜜がびちゃびちゃ吹き出して、敷布がじっとり濡れてしもた。ウチも気が悪くなってきたの。ウチはおふゆちゃんの足を割り、片方の足を抱えて跨ぎ、潤ったぼぼを重ね擦りつけた。気持ち良い。激しく腰を振る度に粘ついた蜜の音が部屋中に響く。蜜壺がじんじん熱くなる。ウチ、今、生娘を犯してるの。夏樹様の妹をぐちゃぐちゃによがり泣かせてるの。唇を重ねて舌を絡める。口吸いにも慣れてへんからか苦しそう。でも、気持ち良さそうやの。やがて、おふゆちゃんは気をやった。ビクビク痙攣した身体が弛緩して荒い息を吐く。ウチも気をやった。ぐっしょり濡れた敷布を見つめる。女同士で、なんて思われるんかな? ううん。手習いやから良いと思うの。嫁入り前の大事な手習いやの。
ウチはおふゆちゃんの肩を抱いて横に寝る。久しぶりにたくさん感じた夜やったの。
今日は早くから神田の米問屋さんが見世を訪ねてきてる。錦姉様の部屋に入って箪笥や家財の一切を見てるようやった。まだ若そうな旦那様やの。こうして迎えに来てくれるなんて稀なんやって言うてる姉様もおった。勤めあがりの女なんてどうすんだかってぼやいてる朋輩もおった。女郎は房事で男を悦ばす技に長けてても、家事はできへんから……邪険にされるんやと思う。そんでも、米問屋さんは嬉しそうに笑いながら錦姉様と話をしてる。姉様も幸せそうやの。ええな。ウチもいつかああなりたいな。
禿達が姉様の足元に縋りついて「おいらん行っちゃやだぁ」とか「おいらも連れてっとくれぇ」とか泣いて騒いでる。新造も同じように泣いてる。
「おやぁ、泣き虫のお前さんが泣いてないなんて珍しいこともありんす」
「ウチが泣いたら、錦姉様は困ってしまうの」
「あっはっはっは。お言いの通りでございんす。お前さんがこれからこの見世を背負っていくんだよ。道中を張れる松の位の女郎はお前さんだけだからねぇ」
錦姉様は笑いながら前髪を上げる。漆のような黒い瞳と澱んで白く濁った瞳がウチを真っすぐ見つめる。ウチは目を逸らさないようにじっと見つめ返す。すると姉様はにっこり笑た。前髪を下ろして、ウチの頭をなでなでしてくれる。旦那様の袖を引っ張って耳打ちもした。旦那様も笑ってウチの頭をなでなでしてくれた。二人になでなでしてもろて嬉しい。けど、何を言うたんやろ? ウチの事を気味悪がらずに撫でてくれるだけでも嬉しいのに、笑ってくれてる。とても楽しそうに、嬉しそうに、笑ってる。他の女郎のひそひそ話が聞こえてくる。あんなのに見世を任せられるかって、道中を張れるのかって。何か言い返せたら良いのに、ウチは何も返せない。目に涙が溜まってくる。視界が滲んで見える。姉様の年季が明けて、姉様が娑婆に出られて、姉様が幸せになるんやから、嬉しいはずやのに、ひどく悲しい。嬉しいのに悲しい。淋しい。
「景一。よくお聞き。わっちがお前さんの姉女郎として最後に教える事でありんす」
「何やの……?」
「他人より多く貰う者は、他人より多く憎まれる。お前さんは器量が良くて、上品のぼぼを持っている天神様だ。だから多く憎まれるが、多く愛される。お前さんはそういう御職を張りんす。わっちよりも売れっ子になりんす」
ぎゅっと抱き締められる。ふあふあの胸に埋めてもらう。これをしてもらうのも最後。涙が一筋流れたら後はもう取り留めがつかんくなった。子供のように声をあげて泣く。
「あー! 景一が泣きんしたー!」
「泣きんした!」
禿達も声をあげてわんわん泣き始めた。新造達も泣いてる。錦姉様を慕う皆が泣いてる。ウチの所為で皆泣いてしもた。ウチの所為やの。ウチ、悪い子やの。だからたくさん叱ってもらいたいの。
そんでも、錦姉様は優しく微笑んでウチの頭を撫でてくれる。
旦那様が「皆おまえがいなくなるから淋しいんだな」って優しい声色で話しかけてるんが聞こえた。
身請けやないから惣仕舞にされてない。ウチは昼見世に出なあかんくなる。でも、錦姉様とおりたいから身揚がりさせてもらった。ほとんどの女郎が部屋に残ってる。遣手が怒鳴ってっても気にしない。ええの。折檻されるならされるでええの。錦姉様と今生の別れをするかもしれへんから、ええの。きっと姉様は二度と吉原の地に足をつけへんと思う。米問屋の女将さんとして一生を終えるんやと思う。
泣いてる禿一人一人に話しかけるために姉様はウチを離す。
頬を涙と汗が伝う。噎せ返るような汗の匂い。女郎が集まっているから、白粉の香りが強く鼻をついた。遠くで蝉が喧しいくらいに鳴いている。それはまるで姉様と旦那様を祝っているかのように三味の音と重なって聞こえてきた。汗ばんだ身体を揺らす度にきらきら、汗が落ちる。
一人一人の頭を撫でて丁寧に声をかけて……大変やと思うの。足元に縋りつく禿もおるし、本当に大変やの。ウチは……こんな事できるん? ウチに御職が張れるん? 立派な道中を張れるん? 不安で胸が押し潰されそうになる。でも、ウチが、ウチがやるしかないの。ウチは錦姉様に教え込まれた。御職を張れるようにって……教え込まれた。だから、ウチがやるしかない。
錦姉様はウチの前に立つ。艶やかな仕草で、有り余る色香に、女のウチでもくらくらしてしまう。いつもやられっぱなしやったけど……最後くらいは、やり返してみたいの。
ウチは錦姉様の胸倉を掴んでくちづける。唇を吸うて、開いた口に舌を差し込む。姉様の歯並びを確かめて舌の動きを追う。やわらかく包み込み、吸うたり、絡めたりした。飲み込み切れなくなった涎が垂れて、姉様はウチの胸を押す。銀糸が二人の間を繋いだ。うっすら頬を朱鷺色に染めた姉様が微笑む。
「すごいねぇ景一。こんなにおさしみが上手くなってるなんて、わっちは思わなかったよ。もう濡れちまって、早く旦那様のまらが欲しくなっちまったくらいさ」
「錦姉様にそう言ってもらえて、嬉しいの」
「こんなに人がいるのに、堂々とおさしみするくらいでありんす。立派に御職を張れるさね」
「あ……」
周りを見渡す。頬を紅潮させた子が沢山おる。俯いてもじもじしてる子もおる。米問屋の旦那様も顔を赤らめて股座を押さえてる。ウチは急に恥ずかしくなって俯く。姉様の笑い声が聞こえてきて、頭をぽんぽん優しく叩かれた。
「もう何も心配しなくて良いさね。自信を持ちんしょ」
「そうだぞ景一。おれの女房にそんな艶っぽい口吸いをできるくらいだ。きっと他の男共をひーひーよがらせてるんだろうなぁ」
「おやぁ? 景一におさしみしてもらいたくなったかい? 遊んでも良いんだよ」
「いやいや、おれはお前が一番だ!」
人前でも憚らずいちゃつかれる方の身がわかったの。夏樹様いつもごめんなさい。あてられっぱなしにしてごめんなさいやの。
「いつまでもここにいちゃあ迷惑だ。遣手もさっさと出て行けって思ってるさね。わっちはもう行くよ」
泣いてる禿達の頭をぽんぽんして、姉様は歩き始める。ぞろぞろついていく。大門の向こう側に籠が用意されてた。あれに乗って姉様は行ってしまうんや。娑婆に出てしまうんや。
「わっちは廓生まれの廓育ちだから、ここ以外の景色は知りんせん。今から楽しみで胸が張り裂けそうさ」
外の世界に一番憧れてたんは錦姉様なんかもしれへん。外の世界をずっと知らずに生きてきた姉様が外に出る。心配になる。
祝ってあげな、姉様は幸せそうに笑ってるんやもん。祝わな。
ウチは泣きそうになりながら精一杯笑顔を作った。客に見せるような笑顔で見送ろうとした。
でも、泣いてしもた。ウチは泣いてしもた。悪い子やの。ウチは悪い子やの。姉様の幸せを喜んであげなあかんのに、悲しく思ってしまう悪い子やの。姉様はウチの涙を指で拭う。そんでから口を開いた。
「『泣かないでください。困ります』なんてね、小焼坊ちゃまに似てたかい?」
「はう……」
「泣き止みんしたね。景一、いいや、小景、お達者で」
「うん。錦姉様も、お達者で」
手を振って二人を見送る。籠はすぐに見えなくなった。もう姉様がここに帰ってくることはない。
これからはウチが……いちばんにならな、あかんの。
踵を返す。歩く度に乾いた土が舞い上がる。それならウチの姿を隠して。何者かわからないように。得体の知れない小鬼を隠して。美しい女に化けさせて。皆に憎まれ、愛される姿に変えて。
仲の町ではノミ取り屋が見慣れた二匹の猫のノミを取ってる。その店前に黄金色に輝く髪が揺れている。小焼様やの。でも、その隣におる女は誰……?
「あ! 景一ちゃんだ!」
女の方から声をかけてきた。小焼様は女を見て眉を顰める。肩を押してウチの真ん前に女を押し出した。女はえへへって笑ってる。夏樹様と笑い方が似てるの。
「あたしは伊織屋のふゆ。養生所の夏樹の妹だよ。小焼ちゃんとは幼馴染なの!」
「ウチは景一と申しいす。……小焼様は、ウチの、えっと……えっと……」
「私はお前の何ですか?」
「はうっ! あ、う……小焼様は、ウチの……ウチの……」
「おいらんねえさんは、鬼の兄さんの女房じゃ!」
「そうじゃそうじゃ! 女房じゃ!」
「おきん、おぎん……」
禿二人がウチの前に立って言う。なんて良い子達なんやろ、ウチはなんて良い禿を持ったんやろ。二人の為に勤めな。お腹いっぱい白いおまんまを食べさせてあげられるくらいに勤めて良いべべを着せてあげて、自慢してもらえるような姉様にならな。
おふゆちゃんは禿二人の頭を撫でる。「馬鹿にするな!」って二人は口をとんがらしてるけど、その姿が面白くてウチも笑った。足に何か擦りついてる。市と小鉄がすりすりしてきてた。
「あ! ねえ、あたしも登楼できるのかな? 景一ちゃんともっとお話したい! というか、抱きたい!」
「は?」
「色白ですっごく可憐だし、声も鈴を転がしたようで可愛いもん。ねえ小焼ちゃん、あたしも連れてって」
「馬鹿言わないでください。私はこれから神田に荷を運ぶ仕事があるんです」
「えー。じゃあ、話を通して! ね? 中臣屋の紹介なら引手茶屋も動いてくれるでしょ?」
小焼様は溜息を吐く。でもこれは困ってるんやないの。少しだけ優しさを感じるような溜息。この話ぶりやと小焼様はこれから神田に泊まりでお勤めなんやと思う。
赤い瞳に光が射す。ウチは何かを言いかけた小焼様の目を見ながら深く頷く。小焼様は再び溜息を吐いて、おふゆちゃんに向き直した。
「朝露屋に話をしてやりますから後は自分でどうにかしてください。言っておきますが、この子は安くないですよ」
「ありがとう小焼ちゃん!」
「すみません景一。適当にこの子の相手をしてやってください」
「小焼様の頼みなら喜んで聞くやの」
「ありがとうございます」
小焼様は市と小鉄を抱き上げて去って行った。その後をおふゆちゃんが嬉しそうについていく。
二人の姿を見送って、飴細工の店で鼈甲飴を禿二人に買うた。おきんもおぎんも笑顔の花を咲かせてた。ウチは紅白のねじり棒を咥える。簡単には砕かれへん。鬼にはまだなられへんみたいやの。
夜見世の時間になり、客が続々登楼してくる。上客の渥美様や雪次様は来てない。錦姉様がいなくなったからかあまり賑わってないようにも感じる。姉様の部屋の荷を中臣屋さんが運んだって平八さんに聞いた。だから小焼様は神田に行くって言うてたんやの……。明日には帰ってきてウチに会いに来てくれるかな?
「かわいいなぁ」
「ありがとうございますやの」
今夜会うんが初めてのお客。着物が上等な絹やからお金に余裕はありそうやの。通ってくれたらええな。初会の客とは床入れしやんから盃を交わしてお話をするだけ。床入れしても良いけど、安く見られたくないのと他にも待たせてる客がおるし疲れるからしやんの。売物買物の身体を休めつつ勤める。心は売物やないから小焼様にだけ。いつでも小焼様の事を考えてたら、客にどんなに好かないことをされても耐えられた。これからもきっとそう。小焼様にだけ。小焼様が「待ってろ」と言うなら、ウチは待つの。
「お待たせしました、やの」
「わーい! 景一ちゃん来たー!」
小焼様が口を利いたのもあると思うけど、遣手や廻し方がおふゆちゃんの意向を汲み取って床急ぎの客として、彼女をウチの部屋に案内してた。まあ、宴会をする必要も無いと思うの。
「ねえねえ景一ちゃんは、小焼ちゃんの何処が好き?」
「全部好きやの。ぶきっちょな所も、無愛想な所も、仏頂面な所も、優しい所も、大好きやの」
「ぞっこんだねぇ! 兄ちゃんがいつもあてられてるのわかるや」
「おふゆちゃんは好きな人おらへんの?」
「あたしね、小焼ちゃんの事が昔から好きだったんだ。でもさ、あたしがいくら房事に誘っても小焼ちゃんは乗ってくれなかったの。嫁入り前のだとか何とか言ってさぁ、お固いよねぇ。いまだにあたしの気持ちに気付いてくれてないかも。小焼ちゃんは損しないんだから、抱いてくれても良いと思わない?」
「小焼様は……おふゆちゃんの事を大切にしてくれてるやの」
「なら、何で抱いてくれないの?」
「それは……嫁いだ時に生娘やないってばれたら印象が悪くなるからやと思うの。お姑さんにいじめられたりしやんように……小焼様は考えてくれてるんやと……思うの」
「そっかぁ。もう、それならそう言ってくれたら良いのに。小焼ちゃんはぶきっちょなんだからぁ」
おふゆちゃんは嬉しそうに猪口のお酒を飲み干した。ウチはお酌をする。ウチを『抱きたい』って言うてたけど、生娘やから抱き方も抱かれ方もわからへんと思う。
「おふゆちゃん、ウチが抱いてあげるの」
「え」
「ウチが小焼様の真似をして抱いてあげるの。だから、もう少し待ってて」
床入れの時刻になったから、あちこちから艶やかな声が聞こえてる。支度を済ませたウチは廻し方に案内されて客の待つ部屋へ向かう。
竹千屋の御隠居は深い皺を刻んだ顔でウチを迎える。口でまらの皮をつりあげ舐めるだけで気をやって、まらに元気が無くなってしもたから、「また今度ウチを悦ばせてやの」って頬にくちづけして次の部屋へ。
二人目は留守居役。「ちょんの間でさせて欲しい」って自分で陰茎を扱いて待ってはったから、すぐ入れさせてあげる。三擦り半くらいで気をやりはったから奥まで当たれへんかったし、何も感じへんかった。「次はとっぷりしよ」って伝えて、階下の厠で後始末をしてから次の部屋へ。
三人目は両国の藍染職人。呉服屋の若旦那のふりをしてるけど、ウチは初会から違うってわかった。手が藍で染まってるの。ウチに会うために金を遣り繰りしてたんやから、悪い客やない。真に好いてくれてる。女房にしたいとも言うてくれてる。ウチの語る御伽噺を好きって言うてくれるの。そやから、ウチは語ってあげるの。花を愛する優しい鬼の噺を。人々に恐れられる鬼が、花を愛でるおはなしを。
彼は涙をはらはら流して泣く。「房事はもう良いからわたしが眠るまで頭を撫でてくれ」と言われたんで頭を撫でて、眠ったところで部屋を出る。
おふゆちゃんの待ってる部屋に戻ったら布団の上でガチガチに緊張した面持ちやった。ウチも、水揚の時こんなんやったんかも……。
「おふゆちゃん、ウチ戻って来たの」
「う、うん」
「小焼様の真似してあげるの」
とん、と肩を押して組み敷く。おふゆちゃんは驚いた表情をしたけど、気にせんと着物の合わせを乱暴に左右に開く。緊張して主張してた頂を口に挟む。吸いつきつつ舌先で舐る。アアッ、甘い声が降ってきた。
「声、我慢しやんで良いの。他の部屋からも喧しいくらいによがり声が聞こえてるから」
「で、でも、あたしの声、変じゃない?」
「変やないの。かわいいの」
「アッああんっ!」
敷布を握り締めて快感に耐えてる姿が可愛い。形を変えるように胸を揉んで、摘まんで、捏ね回す。爪の先でゆるく引っ掻いたら、腰が跳ねた。襦袢の腰紐を弛めて裾除けを毟り取る。脚の間は既にびちゃびちゃに潤ってた。くじるのも初めは軋んでたけど、慣れてきて指を二本咥えてる。
「気持ち良いん? ここ、しととに濡らしてるの」
「やっ、ああっ! あ、景いっ、あ、おかしくなっちゃう! それ、気持ち良くて、だめ!」
「遠慮せんとイッてええの」
「ややぁああーっ!」
おふゆちゃんは身体を反らして絶叫する。蜜がびちゃびちゃ吹き出して、敷布がじっとり濡れてしもた。ウチも気が悪くなってきたの。ウチはおふゆちゃんの足を割り、片方の足を抱えて跨ぎ、潤ったぼぼを重ね擦りつけた。気持ち良い。激しく腰を振る度に粘ついた蜜の音が部屋中に響く。蜜壺がじんじん熱くなる。ウチ、今、生娘を犯してるの。夏樹様の妹をぐちゃぐちゃによがり泣かせてるの。唇を重ねて舌を絡める。口吸いにも慣れてへんからか苦しそう。でも、気持ち良さそうやの。やがて、おふゆちゃんは気をやった。ビクビク痙攣した身体が弛緩して荒い息を吐く。ウチも気をやった。ぐっしょり濡れた敷布を見つめる。女同士で、なんて思われるんかな? ううん。手習いやから良いと思うの。嫁入り前の大事な手習いやの。
ウチはおふゆちゃんの肩を抱いて横に寝る。久しぶりにたくさん感じた夜やったの。
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