桜に酔いし鬼噺

末千屋 コイメ

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第四十二話

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◆◇◆◇◆◇
 小焼様はウチの目を見て真っ直ぐに言う。嘘ではないと思う。小焼様は嘘を吐けるほど器用やないもん。小焼様は嘘を吐かへんって、ウチ、信じてるもん。
 木箱の中には白打掛が入ってた。卦下も襦袢も……花嫁衣装が一式入ってたの。金色や銀色の糸で、熨斗束や花車や鶴や桜吹雪の縫取りがされてる立派な打掛。上等な絹やと思うの。手触りがとても良いの。
 嬉しくて涙が溢れてまう。泣いたらあかんのに。泣いたら困らせてしまうのに。でも止まらへん。ウチは迷惑ばかりかけてるのに、夢のようやの。もしかしたら夢なんかも……。頰を摘まむ。痛いから夢やない。小焼様に返事をしたいのに、涙が止まらへん。
「私は貴女を泣かせてばかりですね。これも……気に入ってもらえなかったでしょうか……」
「ううん。ウチが小焼様の女房になって……良いの……?」
「突然こんな事を言うと迷惑でしたね。嫌なら――」
「嫌やないの!」
 自分でも吃驚するくらい大きな声が出た。小焼様の顔が珍しく仏頂面やない。目がぱっちり開いて、いつも固く結んでる口が少し開いた。ウチは袖で涙を拭う。俯いたらあかんの。小焼様に叱られてしまうの。目を見な……小焼様の目を見てきちんとお返事せな……。赤い瞳に灯りが映り込んで燃えてるように見える。
「嫌やないの……。ウチ、嬉しいの……。小焼様が、ウチを女房にしたいって言うてくれて嬉しいの。嬉しくて……嬉しくて……」
 ウチは小焼様に抱きつく。もっと近くで目を見つめる。やっぱり、綺麗な目やの。飴玉のようにキラキラしてる。目を見つめながら、唇を重ねる。お酒の味がした。
 唇を離して微笑んでみる。小焼様は少しだけ口元を和らげた。
「もちろん返事は『はい』やの」
「ありがとうございます。振られたらどうしようか考えていました」
「小焼様を振るなんてしやんの」
 額をごっつんこして笑う。小焼様は笑えへんけど、少しだけ力の抜けた顔をしてくれた。もっかい唇を重ねる。舌が引っこ抜けそうなくらいに吸うて、舐めて、絡めて、唾液を飲み込む。小焼様の首に腕を回して深くくちづける。気持ち良い。もっと、もっと……何回もくちづけを交わす。口吸いの時はいつも薄く目を開いてるけど……ぱっちり開いてみた。小焼様やっぱり綺麗な顔してるの。唇が離れる。
「腹は痛くないですか?」
「大丈夫、痛くないの。あ、温石返さな……」
「返すのは嫁に来た時で良いです。貴女が持っていてください」
「うん!」
 ほんまに、ほんまに、小焼様の女房になれるんや……。年季が明けるのはまだまだ先やけど……小焼様が待っててくれるなら……頑張れるの。小焼様の為にたくさん稼いで年季を早めてもらうの。でも、小焼様はウチが他の男に脚開いてるん嫌なんかな……。でもでも、ウチの仕事はこれやから……仕方ないの……。
 小焼様はウチの首巻きを解いて首筋にくちづける。胸のあたりがざわざわする。怖い。耳たぶの下に唇を押し当てられ舐られて、甘い息を吐いた。熱い唇に吸われる度にウチの身体はだんだん熱を持っていくの。脚の間を血と蜜が滴ってる。気持ち良いけどちょっと怖い。いつ噛まれるかわからへんから怖い。気をやる時だけやと思うのに怖い。ちゅっ、吸われて身体に赤い花が咲く。噛まれた所を舌が這う。ぞくぞくする。腰がねだるように揺れてしまう。でも、やっぱりちょっと怖い。
 小焼様に何か噛ませな……。でもいきなり轡や兵児帯を噛ませようとしたら嫌われそうやの。嫌われたくないの。小焼様に嫌われるなら死んだ方がましやの。
 ふと思い出した。雪次様がウチの口に指を入れてぐちゃぐちゃに掻き回したことがある。あの時は身体がすごく反応してしもて、気をやってしもたの。もしかして、小焼様もお口触られたら気持ち良いんかも。
「小焼様、ちょっとお口失礼しますやの」
「んっぐ」
 小焼様の口に指を入れる。歯に触れる。ちょっぴり尖ってるんがよくわかったの。こんなに尖ってる歯に噛まれたらあんだけ跡がいくのもわかるの。……こうしたら良いんかな?
「歯で指がっ……ぐ、んぅ! ぃっあ、ぶな、んん」
 手を奥に突っ込む。口の奥の方を指で弄ると小焼様は涙目になって身体を震わせる。
 じゅぷっじゅぷっ、口の中を弄る度に端から涎が垂れる。ウチは片手で小焼様の口をぐちゃぐちゃに弄りながら空いた片手でまらを触る。鎌首をもたげてるみたいやった。小焼様お口触られるん好きなんかな?
「がっ、あっ……ん、ぐ、ふッ……ぅあ」
「気持ち良い? もっと気持ち良くなって良いの。ウチの指咥えてたらよがっても泣き声が抑えられて他の部屋に聞こえへんの。大丈夫やの。もっと乱れて」
 褌をずらして質量の増したまらを掴む。天を突くように屹立してたそれは、滑らかな手触りで、ずっしり重い。熱く脈打ってるの。先走り液が手にまとわりついて滑りが良くて手わざが捗るの。ドクドクが大きくなってきた。そろそろ限界そうやの。
「小焼様、びゅくびゅく出すとこウチに見せて」
「っ――!」
 ウチは口から手を抜く。瞬間、握った怒張が弾けた。鈴口から精汁がびゅくびゅく出てる。口から手を抜いて良かったやの、あのままやと食い千切られそうやったやの。
 小焼様は顔を少し紅潮させて荒い息を吐いてる。涙目やし、涎が垂れてる。こんなに乱れてる姿を見たん初めてかも……。
 まらはまだ屹立したままやの。ウチは手についたのを舐め取ってから亀頭を口に含んで、残っている汁をちゅうっと吸い取る。久しぶりやからか……すごく濃いの。
「あっ、うぁ」
「小焼様、気持ち良い?」
「――っ」
 口を堅く噤んでそっぽ向かれてしもた。
 脚の間が潤ってズキズキ疼く。どないしよ……。入れて欲しい。触って欲しい。激しく抱いて欲しい。
 でも、小焼様は血が嫌いやから……でも……でも……。
「小焼様、あの、触って……欲しいの……」
 手を掴んで胸に触れさせる。ぎゅっと掴まれてちょっと痛い。でも、気持ち良い。
 良かった。小焼様に触られたら気持ち良いの。
「布団に行きましょうか」
「うんっ」
 小焼様はひょいっとウチを持ち上げて、ぽいっと乱雑に布団に放る。それから覆い被さってきて、着物を左右に開かれた。ここで隠したらまた叱られるってわかってるからウチは敷布を握る。
「……すみません。久しぶりだから加減ができそうにないです」
「んっ、良いの……。小焼様の好きにして……」
 主張してる胸の頂を唇に挟まれ、吸いつかれつつ舌先で舐られる。ちゅうちゅう吸われる度に気持ち良くって熱い涙が流れる。
「ふぅっう……小焼様、乳ばかり吸うてたら赤ちゃんみたいやの……」
「私が赤ん坊なら、乳を吸う度によがり泣く母親は嫌ですね」
「アァッ! ん、アッ! 意地悪しやんといてぇ」
「意地悪なんてしてないです」
 頂を引っ張られて、身体がビクビク震える。痛いのに気持ち良い。ぼぼがきゅんきゅんして、触って欲しいってひくひくしてる。血と蜜でしととに濡れてしもてる。もう紙もぐしょぐしょになってしもてる。ちょっとだけ冷たく感じるの。脚を擦り合わせてたら、小焼様の手が着物の裾を割って入ってきた。太腿を撫でられるけど、肝心のところには触れてくれへん。触って欲しい。
「触って欲しそうですね」
「うん……。欲しいの……」
「……そうですね。夫婦になるなら、血が嫌だなんて言ってられませんね」
 小焼様はそう言ってウチのおうまを乱暴に毟り取る。そんでからウチの脚の間に割って入って……え!
「小焼様!」
「とても良い香りがして、頭がクラクラします」
「だ、だめ! 舐めたらばっちいの! あ、アアッ! イッ、やあぁん……やァッあ……あ……、らめっ、らめぇ……!」
 股座に顔を埋められて、ぼぼを吸われる。さねを舐められたり、尖らせた舌先を子宮こつぼに差されたりして、甘い痺れが身体中を駆け巡っていく。頭を押してやめさせたいけど、力が抜けていく。声を抑えたくても、止められへん。自分でも恥ずかしくなるくらい甘い声でよがり泣いてしもてる。玉門ぎょくもんがひくひくしてる。小焼様のが欲しいって期待してる。
「あ、ぁうっ! んっ……アんんっ……んぁ、んぅ……」
「物欲しそうにひくついてますよ」
「ひゃぁうんっ!」
「指を入れただけなのに気をやりましたか?」
  蜜壺をぐちゃぐちゃに掻き回されて、気をやってしもた。もっとぐちゃぐちゃにしてもらいたい。怖いくらいに気持ち良いの。こわいの。きもちくて、こわいの。また、また、きもちいのが、来るの。
「あ……っ、ん、ああ……ゃっあ……! い……くうぅ!」
 敷布を握り締めて、背を反らせて達した。こんなに続けてイッてまうなんて恥ずかしい。
 小焼様は指を引き抜く。熱いのが、あたってる。入ってくる……!
 やっぱり小焼様のおっきい……。他の人のと全然違う……。
「っひ、あ……あぁっ……! んぅ! ……ヒ、ひぃ……!」
「相変わらず……きつい……」
「あっ、……ら、めっ。いま……っ、うご……いちゃらめ……!」
「すみません。無理です、勝手に動いてしまいます」
「っひ、ぁっらめ、まだ、……まだ、しずかに……ぃっ!」
 激しく抜き差しされて、気持ち良い。ぐちゅんぐちゅんっ、いやらしい水音が部屋にこだまする。
 小焼様はウチの片脚を抱えて、更に奥を抉るように突く。
 蒸し風呂のような暑さと、羞恥心からくる熱さで、身体中から汗が噴き出す。噎せ返るような汗の香りに変に顔が上気してまう。小焼様の額を滑って、汗がウチの胸に落ちる。高く結われた髪も大きく揺れ、大腰に深く抉られる。
「あっ、あんっ……そこっ……ゃらっ、やらぁっ! ……らめぇっ、あぁっ、そこ、らめぇっ!」
 ぐりゅぐりゅ、子宮こつぼの奥を突かれる度に気持ち良くておかしくなる。こわい。気持ち良すぎて怖い。口が開きっぱなしになってるから涎がだらしなく垂れてしまう。声を我慢したくてもできへん。口が勝手に開いてまう。
「はぁ……はぁ……景一、もうイキそうです……」
「んぁっ、あ……あっ……! あ、良いの、イッて……出してぇ……!」
「……っぐ!」
「ひぁっ……! あ……! あ……出てるぅ……!」
 小焼様のまら……すごいドクドクしてる……。いっぱい出してる……。熱いの……いっぱい……。
 肩が痛い。また噛みつかれて痛い。でも、気持ち良いの。ウチ、またイッてしもた……。
 小焼様は顔を上げる。口に血がついてる。はっ、とした表情になった。
「すみません。また貴女を噛んで……」
「だいじょーぶやの……」
 身体がビリビリして、口も痺れて上手く喋られへん。小焼様はとろとろ溢れていってるぼぼを見てる。
 獣のような荒い息、熱を秘めた瞳に胸がドキドキした。ウチを雌として見てる……。売物うりもの買物かいもの、やなくて、ひとりの雌として……交尾したいって思ってくれてる……。孕ませたいって思ってくれてる……?
「小焼様、もっかい……しよ……?」
「っ、はい……」
 身体をひっくり返されて、今度は後ろ手で差される。玉際までずるりと入れられて、身体が震えた。荒い息が耳たぶの下に当たる。そのまま舐られ、背中を舌がつーっと伝う。れろれろ、ちゅっちゅっ、される度に繋がった腰が小焼様の動きに合わせて揺れてまう。小焼様は胸を揉みしだきながら抽送する。やがて、手が下がってきて、実頭をくじられる。
 だめ。これをされたら、ウチは、ウチは……だめ、きちゃう、きちゃう!
「っぁこ、やぁ……けさま……らめ……! またイッちゃうぅ!」
「我慢しないで、イッてください」
 実頭を摘まれて、擦られる。だめ、だめ!
「いくっ、……いっ、くぅう――っ!」
 ぷしゃあああ……! 勢いよく湯水のようなものが噴出される。うぅ……ウチ、また布団を汚してしもた……。ぐしょぐしょに濡らしてしもた……。こんなに失禁してまうなんて恥ずかしいの……。
 お腹をぎゅっと押されて、ぼぼがきゅんきゅんしてる。小焼様は再び律動を始める。イッたばかりで敏感やから、またすぐに上り詰めてしまう。
「ここが良いんですよね」
「やあぁっ! らめっ! らめぇっ!」
 コツンコツン、お腹の奥を擦られる度に気がふれそうなくらい感じてしまう。お腹をぎゅっと押されながらするの、好きかも。小焼様にはウチの良い所がバレバレで、弱い所ばかり責められて、ウチは涙と涎が止まらなくなる。ぐりぐりって、まらで抉るように突かれて、ウチの腰はうねるだけ。
「奥が好きなんですね。凄く締め付けてきます」
「おく、あたってきもちいぃ、の、こわひ、ッヒ……ひぅ……! やらぁっ! おくのっ…とこ……きもちい……きもちいの……!」
「っく、私も、もう出そうです……!」
「らめっ……また……またイッちゃうの……ぁう! ぁ……イッちゃうの……! 小焼様ぁ! も、いく、ふぁっ、いっしょ……に、あぁ、イクぅっ!」
「くぅうッ!」
 ドクドクが伝わってくる。久しぶりやからなんか、たくさんドクドクが伝わってくるの。小焼様も気持ち良いって思ってくれてるんや……。嬉しい……。
 ぎゅっと抱えられていた腕が解けた。荒い息を吐きながら小焼様は出ていく。
 とろとろ……やの。たくさん出してるの……。血と蜜と小焼様の精汁が混ざったの……。肩が痛い。また噛まれてしもた。轡つけてもらわな……あかんかったのに……。
 気怠い感覚に負けてウチはそのまま眠ってしもた。

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