桜に酔いし鬼噺

末千屋 コイメ

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第三十二話

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◆◇◆◇◆◇
 仕置部屋から出されて、あれよあれよという間にお風呂に入れられて、部屋に運ばれた。色んな所がズキズキする。特に首がズキズキする。これが痛いってことなんや……。やっとわかった痛み。あの人も感じる痛み。お揃いやの。嬉しいけど嬉しくない。痛い。ズキズキが広がって、熱い。
「うぅ、ううううう……」
「景一どうしなんした?」
「痛いの」
「ああ……。そりゃあ痛いだろうねぇ。にされちまったし、首も疼くだろうに」
 昼見世の終わった錦姉様がウチの部屋に来てくれた。とても良い香りがする。ウチ、この香り好き……。どんな沈香を焚けばこんなに良い香りになるかわからへんけど好き。同じ香をウチが使っても、きっと同じ香りにはならへんと思うの。むぎゅっと抱きしめられて、頭をなでなでしてもろて……嬉しい。姉様の胸に埋もれて、しあわせやの。ズキズキも軽く感じるくらいふあふあで、しあわせ。
「夏樹先生が診てくれたんなら大丈夫でありんす」
「うん……」
「でも、小焼坊ちゃまと楽しんだ後にゃつらいかねえ」
「小焼様、ウチのこと嫌いになってへんかな……ウチ悪い子やのに……ウチ、小焼様の嫌いな血をいっぱい見せてしもたのに……」
「余計な心配をしていんす。坊ちゃまは一番に会いに来てくれたろ? したざんしょ?」
「うん。小焼様、一番した後に……ウチの前で……かいてたの……」
「ほう。あの坊ちゃまがかい? そりゃあ、景一の事を考えてしてくれたんだねぇ。吊られたままでもう一番させるのは酷だと思ったんざんしょ」
「それなら嬉しいの……。逸物を握りながら、さっさとせんずりをかけて……精汁が先からぽったりぽったり……」
 ウチは両手で頬を押さえる。またあったかくなってるの。
 小焼様はすごく興奮してたみたいやった。ウチがちゅうって吸ったら、すぐに気をやった。小焼様は甘露まらやからちょっと甘い味がする。そんで、とってもいやらしい味がするの。思い出したら気が悪くなってきてしもた。さっき失禁してまうくらいに責められたのに、ぼぼがむずむずする。
「景一。やりたくてやりたくて仕方ないって顔をしていんす」
「ふぇっ!」
「あっはっは。まるで盛りのついた猫のようでありんす。まあ、今夜はゆっくり休みな。あのタヌキジジイが明日から客を取らせるって言いんした」
「はい、やの……」
「だが……そのままじゃつらいさね。そうだねぇ……。わっちの部屋に良い物があったから、持ってきてやりんしょ。ちょいと待ちな」
 錦姉様はそういうと部屋を出て、ちょっとしてから戻ってきた。手に何か持ってるの。
「ほいよ。これをやりんす」
「あ、あうぅ……」
 五、六寸ぐらいある黒鼈甲の張形はりかたを目の前に置かれる。小焼様のまらにちょっと似てるの……。脚の間が湿っぽくなって、お腹がきゅうきゅうする。
四目よつめ屋に寄った客がくれたんだが、わっちにゃ必要無いからねぇ。お前さんにやるよ。好きに使いな」
「ありがとうございます、やの」
「使い方はこうさ。縁を擦る時は雁首を斜めにし、上面を突く時は、鈴口を平らにする。畳に置いて、腰を下ろすか、足首に括りつけて楽しむかさ。どれにしろ、淫水か唾で滑りを良くしてからにしなんし。あと、湯で温めてやわらかくしな」
「はいやの」
 持ってみる。思ったよりも軽くてつるつるしてた。ああ、あかんの。小焼様との房事を思い出して、ぼぼが疼いてる。ひくひくしてもうてるんが自分でもわかる。早く入れたい。お湯貰ってこな……。
 錦姉様がにこにこしながら部屋を出てったのを見送って、ウチは廊下を歩く。吾介さんが驚いたような顔をして近付いてきた。
「嬢ちゃん! 寝てなくて大丈夫なんすか? つりつりにされたなら、横になっていた方が……」
「大丈夫やの」
「そんでも、いつもより顔が赤いっすよ。何か取って来て欲しいなら俺が行きやすから、部屋で寝ててくだせぇ」
「じゃあ、お湯を桶に貰ってきて欲しいの」
「あい。わかりやした。部屋に戻っててくだせぇ」
 吾介さんに背中を押されて、部屋に戻された。仕方ないからウチは布団に座る。吾介さんに触られた背中さえ熱くなる。
 ――したい。
 こんなんやとまた小焼様に「裾っ張り」って言われてまう。淫乱って思われてまう。小焼様は、淫乱な子嫌いなんかな……。
 ちゅくっちゅくっ、ぼぼに触れたら水音が鳴るくらいに濡れてた。気持ち良くて、ビリビリする。
「ふーっ……ふーっ……」
「嬢ちゃん何してるんすか! お湯持ってきやしたよ」
「はぁ……ぁっ……吾介さん、ウチ、身体が熱くて……ぼぼがむずむずするの……」
「えええ! 中臣屋の若旦那をもう一度呼んで来やしょうか?」
「だめ! 小焼様に知られたら……『裾っ張り』って言われて嫌われてまうの……。小焼様はきっと淫乱な子は嫌いやの……」
「いや、あの若旦那って、淫乱な方が好きそうっすけどねぃ」
 吾介さんは笑いながらお湯の入った桶を置く。粗雑に転がってた張形に気付いてお湯に浸けてくれた。
「嬢ちゃん。こんな張形いつ取ってきたんすか?」
「錦姉様にさっき貰ったやの」
「こりゃまたご立派な黒鼈甲で……値がかなり張りそうな物を……」
「吾介さん。早く入れて欲しいの……」
「うぇっ! 俺が入れるんすか」
「だって、吾介さんが持ってるからやの」
 早く、欲しい。
 ウチは脚を御開帳して指でを左右に開く。もうお尻にまで蜜が垂れてしもてる。早く欲しい。強い刺激に期待して、ぼぼがひくついてる。
「早く欲しいの。入れてぇ!」
「今近くに誰もいないから叫んでも良いっすけど、それだと誤解を招きやすよ! 俺まで折檻されたくねぇですもん!」
「早くっ、早く欲しいの。入れて」
「そんじゃ、失礼して」
「あぅうっ! アアッ! ……やっ、あ、焦らさんといてぇ!」
「きちんと滑りを良くしてからにしねぇと嬢ちゃんが痛いだけっすよ」
 張形が空割を滑る。皮の剥けた実頭さねがしらを擦ってビリビリする。気持ち良い。ウチは敷布を握り締めて下唇を噛む。甘い声を聞かれるのは恥ずかしい。吾介さんが聞き慣れてるとしても、恥ずかしい。
 何度か滑らせて張形がウチの蜜でぬらぬらに照った頃合いに、玉門ぼぼに添えられた。あ、入ってくるの。
「ひぃんっ、アアッ!」
「痛いっすか?」
「だいじょ……ぶやの……! アウゥンッ! アアッ あ、いい、そこ気持ち良いの!」
 じゅぶっじゅぶっ、張形が出し入れされる度に蜜が溢れて、腰が揺れる。お尻の下が冷たくなってきた。敷布を交換してもらわなあかんくなってしもた。
 吾介さんは顔を背けたまま張形を動かしてくれてる。
「吾介さん」
「何すか嬢ちゃっ、んんんっ」
「んっ……ふぅ……んっ、ちゅっ」
 身体を起こして吾介さんにくちづける。堅く閉じた唇を割って舌を差し入れ、絡めとる。あったかくて、気持ち良い。もっとしてたい。吾介さんがウチの胸を押す。
「嬢ちゃん! いきなり何するんすかっ!」
「はふっ……したくなったの……。もっとしたいの」
「冗談言わねぇでくだせぇよ! 誰かにバレたら俺まで折檻されちまいやすし、下手したら二人して晒し首っすよ。もう俺は戻りやすからね! 後は一人でしてくだせぇ!」
「あうっ。ごめんなさいやの……ありがとぉ吾介さん」
「あいあい」
 吾介さんはまるで大きな犬のような笑みを浮かべて部屋から出てった。
 あかんの。見世の若い者に手を出したらあかんって知ってたのに……。下手したら晒し首にされてしまうのに。相手が吾介さんで良かったの。止めてくれて良かったの。やっぱり女相手やとあかんのかな……。
 急に頭が冷えてウチはぼぼから張形を抜く。やっぱり小焼様のまらに似てる。……今度小焼様が来てくれたら、見せてみよかな。どんな反応してくれるやろ? いつもの仏頂面のまんまなんかな? それとも、ちょっと笑ってくれる? こういう話は嫌いなんかな? ……小焼様の好きな手って何なんやろ。後取り? 本手? 居茶臼? ……もしかしたら、茶臼? でも「上に乗ってして欲しい」って言われたことないの。他の客は「上に乗ってしてくれ」って言うのに。巾着ぼぼやから奥まで咥えたら吸い付くように締まるからすぐ気をやるって……。次来てくれたら、ウチが上でさせてもらお。
小焼様がよがってるところ見てみたいの。

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