転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜

紫 和春

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第113話 青シャツ

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 一九三九年二月十七日。
 ドイツにいるヒトラーは、あることを決断した。それは大きな決断だった。
「あの腰抜けを倒す時が来た。いや、今こそ倒さなければならない。前線から逃げた脱走兵には、相応の処刑が必要だ」
 そういって、フランスのリヨンにいるツヴァイ軍団のうち五個機甲師団を東に、ちゃっかり占領したオーストリアに展開していた四個機甲師団を南に差し向ける。
 ヒトラーが決断したのは、イタリアへの攻撃である。
 ドイツが正式に宣戦布告した時には、アルプス山脈に設定されている国境を越えていた。
 そして得意の戦車戦と空爆で快進撃を続ける。それにより、一気に町から町を占領した。
 東アルプス山脈から進軍した戦車部隊は、わずか二日でトレントまでを占領する。
「ここまで楽勝だったな。まともな反撃も食らわずに済んだのは幸運だった」
「空軍も出ている様子もないですし、先のオーストリア攻略のほうが噛み応えがありましたな」
 そのようなことで笑い合う。
 しかし、その快進撃もトレントで止まることになる。
 事実上のムッソリーニの私兵であった黒シャツから、イタリア王国を守るべく国民が結束した青シャツを基調とした部隊、青シャツ隊の猛攻を食らったからである。
 青シャツ隊は、その命すら捨てかねない特攻まがいの攻撃をとにかく繰り返していた。
「三ブロック先にⅡ号戦車!」
「肉薄隊は直ちに移動! 対空砲は建物基礎部に向けて砲撃!」
 対空砲を即席の対戦車砲に転用し、戦車戦を行っている。対空砲が気を引いている間に、戦車に肉薄する兵士たちが移動していく。そして戦車を確認したら、適当な鉄の棒を持ち、まず一人が飛び出す。
 持っている鉄の棒を履帯へねじ込み、走行に違和感を感じさせる。それで戦車が止まれば御の字。キューポラが開けばもっと良い。そこに手榴弾を放り込めるからだ。
 今回の戦車は特に止まることはない。残念ながらスムーズにはいかないようだ。それでもやれることはまだある。
 今度は戦車の横から接近し、キューポラに小銃の銃口を押し付ける。そして車長がいるであろう辺りに向けて引き金を引く。さすがにこれをやると戦車は止まる。その後キューポラが開いたり、何かアクションがあれば、そこに手榴弾を投げるのだ。
 この戦術は、ある意味初見殺しと言ってもいいだろう。
 その他に、戦車を直接叩くという戦術もあったりなかったりするそうだが、そんな暇なことをしている場合ではない。叩く暇があるなら、火力の高い攻撃をするのみである。
 さらに、この町での戦闘は色々なものが活躍していた。
 まずは、第一次世界大戦の時に生産された対戦車ライフルだ。これを狙撃銃のようにして運用する部隊がいる。
「コイツは老いぼれだが、ケツを叩けばまだ使える。問題なのは、鞭打ちもあと十数発しか使えないところだ」
 そんなことは言いつつも、スリット状の窓に向けて正確に弾丸を打ち込む姿は、まさに戦場で鍛え上げられた精神力の賜物だろう。
 次に出てくるのは、ドイツと友好関係だった時に輸入したⅠ号戦車である。火力を増すために、オープントップにした上で口径九〇ミリメートルの高射砲を搭載し、自走対戦車砲として運用していた。これもこれでなかなかの戦果を出している。
 極めつけは、爆撃機による空爆である。護衛の戦闘機は複葉機がほとんどで、爆撃隊の速度に追いつけていないほど低速である。しかし運動性能が高いため、ドイツの戦闘機と対等にやり合うことが出来ていた。
 こんなことがあり、ドイツ機甲師団は市街地の占領を後回しにして進む。野原や田畑を走り続け、すべての道が通じていると言われるローマへと進軍していた。
 しかし、国民一人に至るまで、ファシストの影響が強く出ているようで、よそ者であるドイツ兵を受け入れない。むしろ積極的に攻撃していく。
 そのためドイツ兵は、イタリア人を片っ端から殺していくのだった。
「老人や男を殺すのはまだいいが、女子供まで手をかけるのは苦痛そのものだ」
 とあるドイツ兵は、従軍記者にそのように話す。だがその光景は、史実の大日本帝国領土でも見られた光景だ。何も珍しいものではない。
 ドイツ軍にとっては、最も相手にしたくなかった国を敵に回してしまったかもしれない。
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