53 / 149
第53話 ドゥーチェ
しおりを挟む
ソ連が内戦状態に突入したニュースは、瞬く間に世界中を駆け巡った。
さらに宍戸が連絡した転生者と一部の関係者のみだが、ドイツのフランス侵略のことも伝えられる。
これらによって、世界の緊張度は日に日に上昇していくことになる。
そんな中、イタリアのローマに身柄を移送された転生者、ミレーナ・メランドリは、ついに国家指導者であるムッソリーニと対面していた。
「……こいつが例の転生者って奴か」
「はい。しかし、これまでまともに口を利いたことはありません」
ムッソリーニに説明するイタリア兵。
ムッソリーニはメランドリに尋ねる。
「なぜ未来のことを教えない?」
数秒ほど静寂な時間が流れる。
するとメランドリは口を開いた。
「……未来のことを教えたら、あなたたちは行動してしまう……。そしたら戦いが起きてしまう……。今のイタリアにとって悪い未来を変えるための戦いが……。だから教えられない……」
初めてまともに喋るメランドリを見て、イタリア兵は驚く。
そしてそれを聞いたムッソリーニは、言葉を返す。
「仮に貴様が黙っていても、我々は行動を起こすぞ? それでもいいのか?」
「駄目……、それでも駄目……」
メランドリはムッソリーニの言葉を否定する。
「お願い……、戦わないで……」
「話にならんな。この戦況を変えられると思ったが、無駄骨だったようだ」
そういってムッソリーニは、メランドリの前から立ち去ろうとする。
「な、なら教えてあげる……。この国の進む道を……」
その言葉を聞き、ムッソリーニは立ち止まる。
「やっと話す気になったか。聞いてやろう」
ムッソリーニはメランドリと向き合い、話を聞く。
「イタリアは……、連合国と戦争になって、最終的に連合国に無条件降伏して、そしてあなたは失脚するわ……」
「……そうか。さすがに連合国には勝てなかったか。それで、国家ファシスト党はどうなる?」
「もう分かるでしょ……。終焉を迎えるわ……」
イタリア兵は驚きっぱなしである。一方のムッソリーニは、想定の範囲内のような顔をする。
「ドゥーチェ……」
「心配するな。ヒトラーの成果を見れば、俺より腕が立つのは明らかだろうさ。それよりも、我々の今後が問題だ」
そういってムッソリーニは顎に手をやる。
「ヒトラーの勢力下から脱出するために連合国入りしたいところだったが、コイツの話を聞く限りじゃ、ファシストはお呼びではないようだな」
その言葉に、メランドリは反応する。
「あなたさえいなければ、イタリアは平和そのものだったのよ! 何を無責任なことを言ってるの!? ふざけるのも大概にして!」
その様子は、先ほどとは打って変わって、激しく燃える炎のようだ。
感情が高ぶりすぎたメランドリの目からは、あふれ出るように涙が流れ出る。
それにムッソリーニが答える。
「そのような理想論を唱えるのは子供だけでいい。国家の安寧を求めるために、戦わなければならないときだってある。未来から来たのなら、それを十分理解していると思っていたのだが……。残念だよ」
そういってムッソリーニは、メランドリが監禁されている部屋から出る。
部屋から出てきたムッソリーニに、一人の閣僚が近づく。
「話は聞いていました。これからどうするんです?」
「そうだな……。このまま連合国とナチ党との板挟みが続けば、ヒトラーの野郎の手のひらで踊っていそうだ」
「我々の安全のためにも、どちらの陣営に入るのかを決断していただきたいのですが……」
「そう焦るな。今の状態で連合国に交渉しても、どうせ決裂されるだけだ」
「なら……」
「問題ない。俺に考えがある」
「考えとは……?」
「簡単だ。国家ファシスト党を解散させる」
「かっ……!」
閣僚は驚く。
「そんなことをすれば、国民からの大反発を食らいますよ!? いくらドゥーチェでもそれは無茶です!」
「早とちりするな。あくまでも党を解散させるだけだ」
ムッソリーニは歩みを止める。
「我々の結束力は十分に育まれた。もはや誰にも我々の民族統一精神を壊すことはできない」
「それはそうかもしれませんが……」
「それに、ヒトラーの野郎がフランスに侵略するって情報もあるそうじゃないか。ここで連合国と戦争に突入してしまったら、これまでの積み重ねが全てパーだ」
ムッソリーニは決断する。
「……正式決定だ。内閣は解散、国家ファシスト党を解体して、俺の肩書や権力を全て国王に返還する。時期はヒトラーがフランス侵攻を開始した瞬間だ」
「ドゥーチェ……」
「何、心配するな。我々の精神は、党に縛られるものではない。国民全員に浸透しているはずだ。それは形を変えて、やがてイタリア王国を影から操る力になるだろう」
閣僚はそれを聞いて、覚悟を決めたようだ。
「承知しました、ドゥーチェ。すぐに手続きします」
そういって閣僚は、先に建物の出口に出る。
「俺の時代はもう終わりなのかもしれないな……」
ムッソリーニは物寂しそうに言う。今まで育ててきた子供が巣立ったような、そんな感情だった。
さらに宍戸が連絡した転生者と一部の関係者のみだが、ドイツのフランス侵略のことも伝えられる。
これらによって、世界の緊張度は日に日に上昇していくことになる。
そんな中、イタリアのローマに身柄を移送された転生者、ミレーナ・メランドリは、ついに国家指導者であるムッソリーニと対面していた。
「……こいつが例の転生者って奴か」
「はい。しかし、これまでまともに口を利いたことはありません」
ムッソリーニに説明するイタリア兵。
ムッソリーニはメランドリに尋ねる。
「なぜ未来のことを教えない?」
数秒ほど静寂な時間が流れる。
するとメランドリは口を開いた。
「……未来のことを教えたら、あなたたちは行動してしまう……。そしたら戦いが起きてしまう……。今のイタリアにとって悪い未来を変えるための戦いが……。だから教えられない……」
初めてまともに喋るメランドリを見て、イタリア兵は驚く。
そしてそれを聞いたムッソリーニは、言葉を返す。
「仮に貴様が黙っていても、我々は行動を起こすぞ? それでもいいのか?」
「駄目……、それでも駄目……」
メランドリはムッソリーニの言葉を否定する。
「お願い……、戦わないで……」
「話にならんな。この戦況を変えられると思ったが、無駄骨だったようだ」
そういってムッソリーニは、メランドリの前から立ち去ろうとする。
「な、なら教えてあげる……。この国の進む道を……」
その言葉を聞き、ムッソリーニは立ち止まる。
「やっと話す気になったか。聞いてやろう」
ムッソリーニはメランドリと向き合い、話を聞く。
「イタリアは……、連合国と戦争になって、最終的に連合国に無条件降伏して、そしてあなたは失脚するわ……」
「……そうか。さすがに連合国には勝てなかったか。それで、国家ファシスト党はどうなる?」
「もう分かるでしょ……。終焉を迎えるわ……」
イタリア兵は驚きっぱなしである。一方のムッソリーニは、想定の範囲内のような顔をする。
「ドゥーチェ……」
「心配するな。ヒトラーの成果を見れば、俺より腕が立つのは明らかだろうさ。それよりも、我々の今後が問題だ」
そういってムッソリーニは顎に手をやる。
「ヒトラーの勢力下から脱出するために連合国入りしたいところだったが、コイツの話を聞く限りじゃ、ファシストはお呼びではないようだな」
その言葉に、メランドリは反応する。
「あなたさえいなければ、イタリアは平和そのものだったのよ! 何を無責任なことを言ってるの!? ふざけるのも大概にして!」
その様子は、先ほどとは打って変わって、激しく燃える炎のようだ。
感情が高ぶりすぎたメランドリの目からは、あふれ出るように涙が流れ出る。
それにムッソリーニが答える。
「そのような理想論を唱えるのは子供だけでいい。国家の安寧を求めるために、戦わなければならないときだってある。未来から来たのなら、それを十分理解していると思っていたのだが……。残念だよ」
そういってムッソリーニは、メランドリが監禁されている部屋から出る。
部屋から出てきたムッソリーニに、一人の閣僚が近づく。
「話は聞いていました。これからどうするんです?」
「そうだな……。このまま連合国とナチ党との板挟みが続けば、ヒトラーの野郎の手のひらで踊っていそうだ」
「我々の安全のためにも、どちらの陣営に入るのかを決断していただきたいのですが……」
「そう焦るな。今の状態で連合国に交渉しても、どうせ決裂されるだけだ」
「なら……」
「問題ない。俺に考えがある」
「考えとは……?」
「簡単だ。国家ファシスト党を解散させる」
「かっ……!」
閣僚は驚く。
「そんなことをすれば、国民からの大反発を食らいますよ!? いくらドゥーチェでもそれは無茶です!」
「早とちりするな。あくまでも党を解散させるだけだ」
ムッソリーニは歩みを止める。
「我々の結束力は十分に育まれた。もはや誰にも我々の民族統一精神を壊すことはできない」
「それはそうかもしれませんが……」
「それに、ヒトラーの野郎がフランスに侵略するって情報もあるそうじゃないか。ここで連合国と戦争に突入してしまったら、これまでの積み重ねが全てパーだ」
ムッソリーニは決断する。
「……正式決定だ。内閣は解散、国家ファシスト党を解体して、俺の肩書や権力を全て国王に返還する。時期はヒトラーがフランス侵攻を開始した瞬間だ」
「ドゥーチェ……」
「何、心配するな。我々の精神は、党に縛られるものではない。国民全員に浸透しているはずだ。それは形を変えて、やがてイタリア王国を影から操る力になるだろう」
閣僚はそれを聞いて、覚悟を決めたようだ。
「承知しました、ドゥーチェ。すぐに手続きします」
そういって閣僚は、先に建物の出口に出る。
「俺の時代はもう終わりなのかもしれないな……」
ムッソリーニは物寂しそうに言う。今まで育ててきた子供が巣立ったような、そんな感情だった。
1
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる