転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜

紫 和春

文字の大きさ
2 / 149

第2話 邂逅

しおりを挟む
 宍戸が連れていかれた先は、どうも霞が関か大手町の近くのようだった。車の窓から古い東京駅の駅舎が見えたからだ。
 そのまま、車はとある建物へと入っていく。
「さぁ、着いたぞ」
 車を降りると、海軍下士官が待っていた。
「お待ちしていました」
「うむ。彼を部屋まで案内しなさい」
「はっ」
 宍戸は下士官の後ろをついていく。建物に入って三階に上がる。
「こちらになります」
 下士官が部屋の扉を開ける。中は六畳ほどの狭い部屋で、ベッドと机と椅子、そして電球しかなかった。
「別命あるまで、ここで待機してください。便所は奥にあります」
 そういって下士官は部屋を去る。
「別命あるまでって、いつまで待てばいいんだ……」
 そんなことを呟きながら、宍戸は部屋の中を見渡す。
「なんにもねぇな……」
 窓はついているものの、見晴らしは良くない。なんなら、隣の建物に手が届きそうなほどである。
「つーか眠い……」
 宍戸はベッドに倒れ込み、そのまま眠りについた。
 次に目が覚めたのは、日が出てくる頃だった。持っているスマホで日時を確認する。
『一九三六年一月一日 七時一八分』
「ご丁寧な仕事だこと……」
 スマホにはロックがかかっておらず、すぐにホーム画面へと遷移する。
「セキュリティに難ありだな……」
 設定からホーム画面ロックを選択し、暗証番号を設定する。
 そしてホーム画面に戻ってきたとき、一つの通知が来た。見たことにないチャットアプリである。
 アプリを開いてみると、一つだけグループが作られており、そこにメッセージが書き込まれていた。
『誰か、この状況を説明してくれ!』
 名前はアレクセイ・イグナトフと書いてあった。おそらくロシア人だろう。
『どうかした?』
『あぁ! 繋がって良かった。君は誰?』
『俺は宍戸和一。日本人。もしかして転生してきた人?』
『多分そう。あのよく分かんない声が聞こえてきたと思ったら、クレムリンの中にいた。今は牢屋の中に閉じ込められているんだ』
『それはお気の毒に』
 そんなメッセージのやり取りをして、一つ気付いたことがある。
『君はロシア人だよね? 日本語を学んでいたのか?』
『日本語はさっぱりだ。君こそロシア語で書いてるようだけど……』
「これ……、自動翻訳されている……?」
 そのことを書き込もうとしたら、誰かがグループチャットに入室してくる。名前は「名もなき女神」だった。
『ごきげんよう。私が、あなた方を転生させたのです。何か質問があれば、@女神で質問してください』
 おそらく今回の元凶である、天界の声もとい女神がやってきたのだ。
『@女神 この状況を説明してくれ!』
 早速イグナトフが説明を求めてきた。
『お答えします。アレクセイ・イグナトフ様は、出現位置がクレムリン内部であったため、クレムリンを警備していた兵士に捕らえられた状況です』
『そんなことは分かってる! どうやったら自由の身になれるんだ!?』
『それは私にはどうにもできません。あなた自身の力で脱出してください』
「エグいな……」
 その時、宍戸はある疑問が思い浮かぶ。
『@女神 そういえば、天界で「あなた方」と言っていたが、他にもこの世界に転生してくる人がいるのか?』
『はい、その通りです。全員で八人が転生します』
『ここに全員いるようには見えないけど?』
『彼らの母国の標準時では、まだ一月一日になっていないからです。あと七時間以内に全員が揃うでしょう』
『母国ってことは、一ヶ国につき一人が転生するって感じか?』
『そうです』
「これじゃあ、まるで架空戦記そのものじゃんか……」
 宍戸がそう呟くと、先にイグナトフがメッセージを送る。
『まるで、僕たちに架空戦記のゲームをやらせているみたいじゃないか』
『全くその通りです。先に説明した通り、これから皆さんにはこの世界……一九三六世界にて架空戦記を実施していただきます』
『なんでわざわざそんなことを……』
 宍戸がそう聞く。
『簡単に言えば、娯楽のためです。あなた方の活躍を楽しみにしている方々がいます。その方たちのために、皆さんには命を削る思いをしていただきます』
「俺たち完全に被害者じゃん……」
『一九三六世界の首脳陣たちは、皆さんが転生することを知っています。その上で、どのようにするのかは彼ら次第となります』
『それは少し横暴じゃないか?』
『少し横暴くらいが面白いのです』
「あぁ、こりゃ駄目だ……。これ以上追及できない」
 そんなことを言っていると、部屋の扉がノックされる。
「宍戸和一様、起きていらっしゃいますか?」
「あ、はい、起きてます」
 宍戸はスマホを置いて、扉を開ける。そこには下士官がいた。
「お食事とお飲み物をお持ちしました。今日は正月ですので、紅白餅を用意させていただきました」
「これはご丁寧にどうも」
「では、これで失礼します」
 そういって下士官は去る。
「……まぁ、今はこの状況に慣れるしかないな」
 そういって雑煮に入った餅を食べるのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

処理中です...