20 / 66
第20話 招集された
しおりを挟む
クエストが終了してから一週間が経過する。その間草薙は、クエストで消費した物品の補充や手入れなどをし、次のクエストの準備をしていた。
そんなある日、草薙は冒険者ギルドから呼び出しを受けた。
「ギルドから直々に招集だなんて、そんなこともあるんだなぁ」
呑気にそんなことを言いながら、草薙はギルドへと向かう。ギルドの受付カウンターでは、ギルド長にミゲル、ジークやミーナがいた。他に女性が一人いる。
「タケル、来たか」
「ギルド長、これは一体?」
「君の実力を見込んで、頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと……?」
ゾクッと嫌な予感を感じる草薙。
「先のクエストで、マニモストアの怪物と対峙しただろう? あの件でそれぞれのギルドで調査を行うようにギルド本部から通達が来た。我がエルケス支部の冒険者ギルドも怪物化の調査をする。そこでミゲルたちのパーティである『金剛石の剣』と、タケルのパーティ『ヘイムダルの守り人』による、合同調査隊を派遣することを決定した」
確実に面倒な仕事が舞い込んできた。それにより、草薙は強い希死念慮を感じ出す。
「悪いが、これは決定事項でな。強制に近い扱いになるだろう。申し訳ないが、それは了承してほしい」
「あぁ、はい……」
草薙は流されやすいタイプであるため、人から命令されると拒否出来ない節がある。
「それじゃ、お互いに挨拶しようか。とはいっても、僕のことはもう知っているだろうけど」
「ミゲルさんですよね?」
「正解だ。そんで、俺がジークなのも知ってるよな?」
「えぇ、はい」
「それならコイツは知らないよな?」
そういってジークは、後ろにいた女性を指さす。
「は、初めまして。アリシアと言います」
彼女はおどおどとしながら、草薙に自己紹介する。銀髪のサラサラしたボブカットが特徴的だ。
「初めまして、草薙武尊です」
「私はミーナです。よろしくお願いしますね」
お互いに自己紹介が終わったのを確認したギルド長が、双方に向かって話し出す。
「さて、今回の合同チームの発足に当たって、協力者が加入することになった」
そこに、見たことのある人が歩いてくる。
「え……、ナターシャ?」
「そうなの。かなり大規模な調査になりそうだから、私が情報士官として随伴することになったの。戦闘には参加しないから、その時はよろしくね」
そんなことを笑顔で言う。
「さて、これで調査チームの全員が集合したな。それでは早速調査に行ってほしい……ところだが、まだ必要な情報が出そろっていない。今は王国内全域を移動するような準備をしていてほしい」
ギルド長は堂々とそういった。つまり、長い調査になると予想される。
「というわけで、しばらく出番はないらしいね」
ミゲルが確認するように言う。
「それじゃあ、怪物化についての情報共有でもしましょう」
ナターシャがそのように提案する。特に異議はなかったため、近くにある談話室で情報を貰う。
「怪物化の現象は王国内にとどまらず、周辺国家にまで及んでいますわ。場所もバラバラで統一性がありません。正直言って、情報がなさすぎですわ」
「ふむ。それはそれで面倒だな……」
ミゲルが悩ましく言う。
「その他の国からの情報は入ってないのか?」
ジークがナターシャに聞く。
「最近始まった計画なので、情報は全然集まっていませんの」
「そうなると、結局何も手がかりがない状態なのか……」
「そういえば、以前渡したサンプルはどうなっているんですか?」
今度はミーナが聞く。
「サンプルはギルド本部と国の機関がこれから解析をするようです。ですが、簡易解析をしても分からないことが多く、解析には時間がかかると思われます」
「そうですか……」
結局八方ふさがりの状態に陥っている。情報が集まってこない限りは、動きようがないだろう。
「情報が集まるまでは待機状態にならざるを得ないな……」
ミゲルがそのような判断をする。
「そしたら、冒険者のクエスト受注の問題はどうするんですか?」
草薙が確認する。
「その点については問題ない。ギルド本部からの通達で、怪物化の調査に当たっている間は二ヶ月の壁を免除するとしている。心置きなく調査してくれ」
ギルド長がそのように言う。今回の調査に参加している草薙は、この二ヶ月の壁に該当しないということだ。
「とにかく、今は情報がありませんから動きようがありませんわ。そこは私の方から他国に圧力をかけるようにします。ギルド長からも何か働きかけをしてくださいまし」
「分かった」
この日はこれで解散となった。
そんなある日、草薙は冒険者ギルドから呼び出しを受けた。
「ギルドから直々に招集だなんて、そんなこともあるんだなぁ」
呑気にそんなことを言いながら、草薙はギルドへと向かう。ギルドの受付カウンターでは、ギルド長にミゲル、ジークやミーナがいた。他に女性が一人いる。
「タケル、来たか」
「ギルド長、これは一体?」
「君の実力を見込んで、頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと……?」
ゾクッと嫌な予感を感じる草薙。
「先のクエストで、マニモストアの怪物と対峙しただろう? あの件でそれぞれのギルドで調査を行うようにギルド本部から通達が来た。我がエルケス支部の冒険者ギルドも怪物化の調査をする。そこでミゲルたちのパーティである『金剛石の剣』と、タケルのパーティ『ヘイムダルの守り人』による、合同調査隊を派遣することを決定した」
確実に面倒な仕事が舞い込んできた。それにより、草薙は強い希死念慮を感じ出す。
「悪いが、これは決定事項でな。強制に近い扱いになるだろう。申し訳ないが、それは了承してほしい」
「あぁ、はい……」
草薙は流されやすいタイプであるため、人から命令されると拒否出来ない節がある。
「それじゃ、お互いに挨拶しようか。とはいっても、僕のことはもう知っているだろうけど」
「ミゲルさんですよね?」
「正解だ。そんで、俺がジークなのも知ってるよな?」
「えぇ、はい」
「それならコイツは知らないよな?」
そういってジークは、後ろにいた女性を指さす。
「は、初めまして。アリシアと言います」
彼女はおどおどとしながら、草薙に自己紹介する。銀髪のサラサラしたボブカットが特徴的だ。
「初めまして、草薙武尊です」
「私はミーナです。よろしくお願いしますね」
お互いに自己紹介が終わったのを確認したギルド長が、双方に向かって話し出す。
「さて、今回の合同チームの発足に当たって、協力者が加入することになった」
そこに、見たことのある人が歩いてくる。
「え……、ナターシャ?」
「そうなの。かなり大規模な調査になりそうだから、私が情報士官として随伴することになったの。戦闘には参加しないから、その時はよろしくね」
そんなことを笑顔で言う。
「さて、これで調査チームの全員が集合したな。それでは早速調査に行ってほしい……ところだが、まだ必要な情報が出そろっていない。今は王国内全域を移動するような準備をしていてほしい」
ギルド長は堂々とそういった。つまり、長い調査になると予想される。
「というわけで、しばらく出番はないらしいね」
ミゲルが確認するように言う。
「それじゃあ、怪物化についての情報共有でもしましょう」
ナターシャがそのように提案する。特に異議はなかったため、近くにある談話室で情報を貰う。
「怪物化の現象は王国内にとどまらず、周辺国家にまで及んでいますわ。場所もバラバラで統一性がありません。正直言って、情報がなさすぎですわ」
「ふむ。それはそれで面倒だな……」
ミゲルが悩ましく言う。
「その他の国からの情報は入ってないのか?」
ジークがナターシャに聞く。
「最近始まった計画なので、情報は全然集まっていませんの」
「そうなると、結局何も手がかりがない状態なのか……」
「そういえば、以前渡したサンプルはどうなっているんですか?」
今度はミーナが聞く。
「サンプルはギルド本部と国の機関がこれから解析をするようです。ですが、簡易解析をしても分からないことが多く、解析には時間がかかると思われます」
「そうですか……」
結局八方ふさがりの状態に陥っている。情報が集まってこない限りは、動きようがないだろう。
「情報が集まるまでは待機状態にならざるを得ないな……」
ミゲルがそのような判断をする。
「そしたら、冒険者のクエスト受注の問題はどうするんですか?」
草薙が確認する。
「その点については問題ない。ギルド本部からの通達で、怪物化の調査に当たっている間は二ヶ月の壁を免除するとしている。心置きなく調査してくれ」
ギルド長がそのように言う。今回の調査に参加している草薙は、この二ヶ月の壁に該当しないということだ。
「とにかく、今は情報がありませんから動きようがありませんわ。そこは私の方から他国に圧力をかけるようにします。ギルド長からも何か働きかけをしてくださいまし」
「分かった」
この日はこれで解散となった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる