異世界転生無双短編集

山田みぃ太郎

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人生の古物商

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 簡単に入れる大学出て就職…と思ったら豪快にろくな仕事がなかった。
 高校時代豪快に遊び呆けていたから、3年生になって、行ける大学あるのかな♪ なんて思いながら、安易に高校の進路指導の教員に相談したら「ここなら名前が書ければ受かる」と言われて受験し、合格した大学だった。
 
 入ってみると大学は楽園で、みんな俺と同程度で、講義は中学程度、いやいや小学校高学年程度だったし、数学なんか分数の割り算から始まったし、もちろん単位はじゃんじゃん降ってきた。
 それで押し出されるように卒業してみたらこの有様で、ぜんぜん仕事が無かった。

 実は中学の頃の同級生が俺より成績が悪かったけれど、農業高校へ行って、卒業後農協に勤め、もう何年か過ぎ、それなりの地位にありそこそこ安定した生活を送っていた。

 その同級生が眩しかった。
 俺にはろくな仕事が無い…

 それから、ちょっとしたつてで街の不動産会社に勤めたら、翌日、中古住宅販売だとかで日がな1日道沿いで着ぐるみ着せられて、プラカード持たされて立たされた。

 発狂しそうなほど退屈で、トラックの排気ガスを吸わされ、初夏で死ぬほど暑く、1日でやめた。

 それで家でごろごろしていたが、派遣社員の会社をネットで見付け、そこで紹介された職場が強烈な単純作業だった。

 電子部品の工場なのだけど、やらされたのは、顕微鏡で1日2万個の完成品チェック。
 発狂しそうですぐにやめた。

 それからコンビニのバイトをしたけれど、まずレジの仕事が超ややこしい。
 だいたい物を売るだけじゃない。コンビニ決済とか、いろいろあった。
 それに重い物も運ばなければいけない。
 とにかくアタマ良くないと勤まらないし、怪力でないと勤まらない。
 すぐにやめた。

 そんなふうに勤めちゃやめ、勤めちゃやめしていたけれど、そのうちにだんだん絶望してきて、そしたら、農協に勤めている、例の中学の同級生から結婚式の招待状が来た。

 それで俺は、決定的に差を付けられたと思い、猛烈に絶望した。
 それから発作的に近所の踏切へ行き、そこで、ぼ~っとして、そして気が付けば飛びこむ列車の品定めしていた。
 そんな俺を見付けたのか、ひとりのうさんくさい爺が俺に話し掛けてきた。

「私は人生の古物商をやっています。よろしければあなたの中古の人生、買い取りますよ」
「え?」
「あなたの人生、買い取ると言っているのです」
「中古の人生を…、買い取る? で、人生の古物商?」
「そうです。実は、あなたよりずっとずっと過酷な人生を送っている方がおられ、もう少しまともな人生はないかと、私に相談に来られたのです」
「まともな人生? 俺の人生まとも?」
「その方は子供の頃からたくさんの病気を抱え、何度も手術を受け、入退院を繰り返し、そして今、余命いくばくもありません」
「え?」
「だから今あなたの人生を買い取らせていただければ、その方が亡くなった後、『自殺しなかったあなた』の、これからあるであろう人生に転生出来ます。きっとその方なら、今のあなたの状況から立派に立ち直り、立派な人生を送られるでしょう。だからきっとその方はとても喜ばれると思いますよ」
「…」
「どうします? あなたがろくでもないと思っている、あなたのその人生、よかったら売ってくれませんか?」
「……」
「どうですか? 早く決めて下さい。ほらもう特急電車が来ますよ」
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