9 / 16
異世界行って無双したい人の話(乙)
しおりを挟む
「あのぉ、ここで異世界を案内してもらえるって、ネットで見たんすけどぉ」
「はぁ、また異世界などという若いもんが来たか」
「異世界、行けないんすかぁ?」
「たしかにいろんな世界へ案内することは出来る。で、おぬしどこへ行きたいのじゃ?」
「どこでもいいけど、異世界行って、む、む…、無双!」
「異世界で無双じゃとぉ? どうも最近の若い奴の頭の中はそればっかりじゃ。頭がゲームで埋め尽くされておるようじゃ」
「で、どんな異世界があるんすかぁ?」
「おまえさん分かっておるのか? はぁ~。まあいい。いろんな世界があるにはあるが、異世界で無双とは、ともあれお前さんがそこで抜きん出た存在になることじゃ。で、そうしたいのじゃろう?」
「はぁ」
「ところでお前さん、今この世界で落ちこぼれておるのか?」
「はぁ」
「まあお前さんを見れば、そんくらいのこと、一発で豪快にお見通しじゃわい」
「はぁ」
「じゃがこの世界で何も出来んようじゃ、どの異世界へ行ってもまた落ちこぼれるぞ!」
「はぁ」
「はぁじゃない! で、お前さんは何が得意なのじゃ?」
「ええと、ええと…」
「一つくらい得意なことはあるであろう?」
「はぁ…」
「一つもないのか?」
「はぁ」
「はぁばっかりか?」
「はぁ」
「もう良い。お前さんの『はぁ』は金輪際気にすまい。で、何か一つくらい得意なことがあるであろう。それがないと異世界で無双も何も…」
「あ! そうだ。この前おかんにねだって新しいゲーム買ってもらった」
「おかんに? で?」
「これはばちくそ素晴らしいゲームだよと、ばちくそおかん説得したら、あっさり買ってもらったんだ」
「ばちくそ…、おお、それだ!」
「え?」
「つまりお前さんは、人を説得するのが得意なのじゃな」
「あ! もしかして、そうかも♪」
「実は異世界というても、枠というものがあってのう」
「枠?」
「異世界に空きがないとそこへは行けん」
「はぁ」
「じゃが今、空きはひとつだけある」
「本当すか?」
「まぁ、あまり人気のない異世界じゃが…」
「あまり人気がなくて、で、ええと、ええと、どんなとこすか」
「ところで訊くが、お前さん、地球が丸いことくらい知っておるよな」
「はぁ、それくらいは。でも…」
「地球が回っておることも」
「ええ、それも知ってますよ」
「それは良かった。実はガリレオガリレイが登場する少し前の時代に、空きがあるのじゃ。そこはヨーロッパで、教会が豪快に幅を利かせておった、いわゆる中世の暗黒時代でな」
「中世の…、暗黒? なんかかっこいいっすね」
「かっこいい? ほうほう、それはちょうどよい。どうだお前さん、そこへ行って教会関係者を説得してはどうかのう。説得は得意じゃろう。何と言っても、お袋さんを説得してゲームを買わせたくらいじゃ。だったらその時代の教会関係者の説得も出来るやもしれんぞ」
「やもしれん?」
「そうじゃ。つまり地球は丸くて回っておると、奴らを説得するのじゃ」
「はぁ」
「しかしてもしそれが出来たらなら、おまえさんはガリレオに先んじて歴史に名を残す。つまり中世のヨーロッパで、科学者として立派に無双出来るであろう」
「はぁ?」
「ただしくれぐれも、宗教裁判には掛けられんよう注意するのじゃ。下手をすると火あぶりじゃ。わっはっは」
「はぁ、また異世界などという若いもんが来たか」
「異世界、行けないんすかぁ?」
「たしかにいろんな世界へ案内することは出来る。で、おぬしどこへ行きたいのじゃ?」
「どこでもいいけど、異世界行って、む、む…、無双!」
「異世界で無双じゃとぉ? どうも最近の若い奴の頭の中はそればっかりじゃ。頭がゲームで埋め尽くされておるようじゃ」
「で、どんな異世界があるんすかぁ?」
「おまえさん分かっておるのか? はぁ~。まあいい。いろんな世界があるにはあるが、異世界で無双とは、ともあれお前さんがそこで抜きん出た存在になることじゃ。で、そうしたいのじゃろう?」
「はぁ」
「ところでお前さん、今この世界で落ちこぼれておるのか?」
「はぁ」
「まあお前さんを見れば、そんくらいのこと、一発で豪快にお見通しじゃわい」
「はぁ」
「じゃがこの世界で何も出来んようじゃ、どの異世界へ行ってもまた落ちこぼれるぞ!」
「はぁ」
「はぁじゃない! で、お前さんは何が得意なのじゃ?」
「ええと、ええと…」
「一つくらい得意なことはあるであろう?」
「はぁ…」
「一つもないのか?」
「はぁ」
「はぁばっかりか?」
「はぁ」
「もう良い。お前さんの『はぁ』は金輪際気にすまい。で、何か一つくらい得意なことがあるであろう。それがないと異世界で無双も何も…」
「あ! そうだ。この前おかんにねだって新しいゲーム買ってもらった」
「おかんに? で?」
「これはばちくそ素晴らしいゲームだよと、ばちくそおかん説得したら、あっさり買ってもらったんだ」
「ばちくそ…、おお、それだ!」
「え?」
「つまりお前さんは、人を説得するのが得意なのじゃな」
「あ! もしかして、そうかも♪」
「実は異世界というても、枠というものがあってのう」
「枠?」
「異世界に空きがないとそこへは行けん」
「はぁ」
「じゃが今、空きはひとつだけある」
「本当すか?」
「まぁ、あまり人気のない異世界じゃが…」
「あまり人気がなくて、で、ええと、ええと、どんなとこすか」
「ところで訊くが、お前さん、地球が丸いことくらい知っておるよな」
「はぁ、それくらいは。でも…」
「地球が回っておることも」
「ええ、それも知ってますよ」
「それは良かった。実はガリレオガリレイが登場する少し前の時代に、空きがあるのじゃ。そこはヨーロッパで、教会が豪快に幅を利かせておった、いわゆる中世の暗黒時代でな」
「中世の…、暗黒? なんかかっこいいっすね」
「かっこいい? ほうほう、それはちょうどよい。どうだお前さん、そこへ行って教会関係者を説得してはどうかのう。説得は得意じゃろう。何と言っても、お袋さんを説得してゲームを買わせたくらいじゃ。だったらその時代の教会関係者の説得も出来るやもしれんぞ」
「やもしれん?」
「そうじゃ。つまり地球は丸くて回っておると、奴らを説得するのじゃ」
「はぁ」
「しかしてもしそれが出来たらなら、おまえさんはガリレオに先んじて歴史に名を残す。つまり中世のヨーロッパで、科学者として立派に無双出来るであろう」
「はぁ?」
「ただしくれぐれも、宗教裁判には掛けられんよう注意するのじゃ。下手をすると火あぶりじゃ。わっはっは」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる