ブチ猫のミッキー

山田みぃ太郎

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 そしてそんなある日。
 あの人間は、それまでキャットフードを置いていた場所のすぐ近くで、せっせと何かを作っていた。

 たぶんぼくは、あの人間に嫌われている。
 あんなにひどく噛みついたのだから。
 だけど、あの人間がやっていることに何となく興味もあったので、ぼくは物陰から何をやっているのかをじっと見ていた。
 
 するとあの人間は、何だか巣のようなものを作っていた。
 それは人間が「段ボール」と呼んでいる物で出来ていた。

 
 段ボールはゴミ置き場でもよく見かけるし、ぼくがその後人間と付き合うようになってからも、ぼくらはしょっちゅうお世話になるものだった。
 
 ところであの人間はここに巣を作って住むのかな? 
 だけどそれにしては小さすぎる。

 と、ぼくの気配を感じたのか、あの人間がぼくの方を見た。
 きっとあの人間は、ぼくに怒っているにちがいない。
 
 それにぼくは、とても気まずかったし、だから物陰に隠れようかと思ったけれど、でも間に合わず、しかも思い切り目が合ってしまった。
 するとあの人間の目は少しも怒ってはいなかった。
 ぼくがあんなにひどく噛みついたのに…
 そしてあの人間は「ミッキー」と、ぼくを呼んだ。

 それからぼくが良く見ると、何とあの人間が巣を作っているすぐ横には、キャットフードが置いてあった。
 ぼくがそれを見ると、あの人間はキャットフードをぼくの目の前に差し出した…

 ぼくは泣きたいくらいうれしかった。
 それであの人間に近寄り、後ろ足に体をすりつけた。
(爪とぎはしないように気を付けた)

 それからぼくは夢中で食べた。
 その間もあの人間は巣を作っていた。
 そしてしばらくして、巣は完成したようだけど、あの人間の仕草から、この巣はぼくのために作ったと言っているように思えた。
 
 それでぼくは、恐る恐るその巣の入口をのぞいてみた。
 それはぼくがちょうど入れるくらいの大きさで、中にはふわふわしたものが置いてあり、暖かそうで、とても寝心地も良さそうだった。
 
 それで、ぼくはあの人間の顔を見て、「これ、ぼくが入ってもいいの?」という表情をしたら、あの人間は「いいよ」という顔をしたので、ぼくは猫語で「ありがとさん」と言って、中に入った。

 思ったとおり、暖かくてとても気持ちのいい場所だった。
 それ以来ぼくはそこで暮らすようになった。
 それは夢のような暮らしだった。
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