二人称・短編ホラー小説集 『あなた』

シルヴァ・レイシオン

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~山着~ 第二章 「マヨヒガ」 全八話

第六話 逸話

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 昔ゃぁの、こっちとあっちゃは丁度あの山ぁ挟んで別の集落やったんじゃ。が違ぇでな。今や上の役所都合で一緒になっちまったがや。

 こっちのもんはずっとあの山にゃ行くなっちゅう、ガキのころから口酸っぱく散々言われとった。隣同士の村やのに一切の交流もせんと・・・まぁ一部の人間は繋がっとるっちゅう話もあったがよ。密会するような連中やら、商売しとうようなもんまでの。

 関係あるんかどうか、知らんでよ。わしがガキん時の連れが突然、消えたんじゃ。小さい時はようあの山の麓で、肝試し、度胸試しっつってしちゅう遊んだりしとったきに、村中総出で探しとったがわしゃ絶対”あっこ”じゃと思ってわし一人で山ん麓まで行ったのぉ。

 ん?なんで一人で行ったかと?

 クソ生意気なガキじゃったからのそいつぁ。どうせあいつの親父とまた喧嘩でもしょって、鼻息吹かせながら山ぁ越えたろうとしてたんじゃろうと思っての。
 逆にそいつ、誰よりもわしが先に見つけてびっくりさせたろぉ思ちょって意気込んだんじゃ。

 とりあえずいつもわしらが集まる場所、悪ガキがようしゆう隠れ家みたいなわしらで作ったとこがあっての、そこに行って見たんじゃ。そこのそれぞれの宝物みたいなん置いとるきに取りに来るじゃろう思てな。
 したら、そこに居ないでよ。あいつのもんもそのまんま。ほんまに山ぁ越えよったんかーと思ってのー。わし自身は流石に一人で越える勇気と根性は無くってな。肩ぁ落としながら帰ろうとしたんじゃ。

 そしたらまぁなんか数人の人影が動きよって、わしゃ夜目をひん剥きながら動きを追ったで。
 おめぇも田舎もんなら分かっちょるでよ?下手に手元で明かりを灯すと余計に先が見えんくなりよる。だからわしらはそんなんに頼らず月明かりやらで山ん中行動しちゅう。

 だげん、捜索隊らは違うでよ。大人はみんな提灯やら電灯やら使ちょる。そらそうだわな、人探しとるんじゃけん。最初はその人影も探しちょる勢かと思ったが、そいつらはわしらのように持っちょらんでな。明かりをよ。

 他にわしらの仲間、悪ガキども友人勢がわしとおんなじこと考えて探しにきちゅうかとも思ったけんど、ならなんかわしから逃げるように去らんじゃろ。普通にわしんとこ来て居らんくなった奴がおったか聞くじゃろ?

 いやな予感さしたでなそん時は。死ぬ覚悟しながら後を追ったで。

 なんぼ夜目にしたっちゅうても生い茂った森ん中ぁまでは流石に見えん。やのに奴らぁほんに見えちゅうちゃうんかいうぐらいどんどん進むでよ。んだもんで当然のように途中で見失っちまって、わしも自分がどこにおるんか分からんようなってもうてな。追うどころか迷子じゃ。帰るにもかえれんようになってもうて数時間うろうろしとったきに。連れの救出どころか自分が危ないって自覚したころ、捜索隊となんとか遭遇できてわしは何とか助けられたんじゃ。

 んじゃがその後そん子は見つからず、ずっと行方不明のままでの。

 ああ、あと更に不思議なんはその子の両親はずっと我が子を探し回っちょったが、一年後ぐらいかのぉ。両親もまたともに消えおったんじゃ。親族の何人かはその一家を探しておったような感じではあったがよ。そん後のこたぁもうまだガキだったわしには分からんくなったで。
 

 そんなわしの実体験もあってじゃの、裕福でもなんでもねぇ家庭じゃけぇ生活がバタバタして忙しくっての。連れの失踪事件のこたぁ意識から薄れてきたりしちょったが、心のどっか引っかかってたんやろのぅ。山菜やらなんか食料になるもんぉ山んに採りに行った先で出おぅた、どっかの坊さんか仙人さんかに聞いた話があっての。どこじゃか場所の話かもはっきりせんちょったが、もしかしたらあっこの山から、ここらの集落の話やもしれんと思っちょるんやが・・・・・・


 ある日、いつか分かっちょらん昔の話、何人かの僧侶が命からがら山の麓の村ぁ辿り着いたそうじゃて。言葉がよう分からんこと言っとっちゃきに、どこぞの国から追い出され逃げるように海を渡り山を越えてきとうようて、その村に保護を求めてきたそうな。

 しかしその村は、どこぞの分からもん村に入れる訳にゃいかんって追い出し、何度も助けを求めちゃっきに、そのたんび稲作なんぞに使うとる鍬やら熊手やらを持って村のもんは応戦して村に入ってこんようにしとっちゃ。

 何人か居たその僧侶たちも日ごとに人数が減ってきちゅうに、餓死したり病死したりしとっちゃと。
 僧侶たちの逆恨みがどんどん日にちに膨れおっての。最後の一人になってまで執拗にその村に執着し、最終的にゃその村を恨みながら最後の一人も死におったそうじゃ。

 そんな異国民の恨みや呪いを払うために、その坊さんはずっとその村と山を修行も兼ねて供養に回っておると聞いたことがあるんじゃ。

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