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第124話
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「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデーサーぽん吉ぃ~」
犬用の王冠(※シリアで買ったプラスチック製)を被ってきちんとお座りしているぽん吉を挟んで、京一郎と声を合わせてお誕生日の歌を歌ったが、「ディア」のところを彼が「サー」に変えたので、俺は首を傾げた。
「さあ! お召し上がり下さい! ぽん吉さん!」
めでたく四歳の誕生日を迎えたぽん吉は、京一郎がそう言った途端にケーキに齧り付いてはぐはぐ食べた。それを目を細めて見ている彼に尋ねる。
「なあ、『サーぽん吉』って言ったけど……」
「それが何だ?」
「いや、英語でも敬意払うんだなって……」
「当たり前だ。ぽん吉さんは我が家で最も身分が高いからな」
「そうかよ!! 知ってたけど改めて宣言されるとムカつくな!!」
真面目腐った顔でそう言った京一郎に、顔を顰めて大声で突っ込んだ。奴隷系飼い主を極めるのも好い加減にして欲しい。
「ああ、ぽん吉がケーキ食ってんの見たら、俺も欲しくなっちゃった。なあ、俺には何か無いのか?」
「そう言うだろうと思って、これからクッキーを焼くつもりだ。しかも『肉球クッキー』」
「に、肉球クッキー!?」
思い掛けない発言に目を見開いて叫ぶと、京一郎は真面目な顔で「と言っても、肉球の形をした只のクッキーだ」と続けた。
「肉球のクッキー型もあるのか?」
「もちろんだ。ベースはプレーンで、肉球はココアの生地で作る」
「成程!」
「簡単だからお前もやるか?」
「えー、俺は食う係だからさぁ」
「物臭め」
せっかく誘われたのに首を横に振ったら、そう言われたので俺はへへへと笑った……。
「やっぱり京一郎きゅんは器用だな。一つも変なのが無い」
肉球クッキーのレシピは簡単で、一時間半程で焼き上がった。京一郎は庫内容量の大きいドイツ製の良いオーブンを持っているから、一度にたくさん焼けるし焼きムラも出来にくい。天板の上に売り物みたいなクッキーがたくさん並んでいるのを見て素直に褒めたら、ふふん、と言って鼻高高になった。
「自分で言うのも何だが、専門に学んでいないのに中中やるだろう、俺は」
「うん。三高のお嫁さんになれるぞ」
「は? 三高?」
「高学歴・高収入・高身長……」
「何を言っているんだお前は。俺はもうあずさの嫁だろう。残念ながら三低だが」
「何おう!? 身長はそこそこあるぞ……」
そんな下らない会話をしながら俺はサッと手を動かし、まだ熱熱のクッキーを一つ掻っ攫った。しかし、「あちちっ」と叫んで取り落とす。けれども、キッチンの作業スペースの上に落ちたのでセーフだ。
「鳶みたいなことをするな。でもあずさは飛ぶには重過ぎるな……」
「鳶!? 酷ぇな……あっでも鳶といえばさ、鳶とカラスの喧嘩って見たことある?」
「は? カラスと喧嘩?」
「カラスも結構デカいけど、鳶に比べれば小回り利くだろ。だからたまに鳶が獲った魚とか横取りするん」
「ああ……聞いたことはあるな」
「だから今は京一郎きゅんが鳶だな! 俺はカラス! アホーアホー! 京一郎きゅんのアホー!!」
「……」
そんな風に鳴き真似をしながら手を上下にバタバタさせたら、京一郎ははああと巨大なため息を吐いた……。
犬用の王冠(※シリアで買ったプラスチック製)を被ってきちんとお座りしているぽん吉を挟んで、京一郎と声を合わせてお誕生日の歌を歌ったが、「ディア」のところを彼が「サー」に変えたので、俺は首を傾げた。
「さあ! お召し上がり下さい! ぽん吉さん!」
めでたく四歳の誕生日を迎えたぽん吉は、京一郎がそう言った途端にケーキに齧り付いてはぐはぐ食べた。それを目を細めて見ている彼に尋ねる。
「なあ、『サーぽん吉』って言ったけど……」
「それが何だ?」
「いや、英語でも敬意払うんだなって……」
「当たり前だ。ぽん吉さんは我が家で最も身分が高いからな」
「そうかよ!! 知ってたけど改めて宣言されるとムカつくな!!」
真面目腐った顔でそう言った京一郎に、顔を顰めて大声で突っ込んだ。奴隷系飼い主を極めるのも好い加減にして欲しい。
「ああ、ぽん吉がケーキ食ってんの見たら、俺も欲しくなっちゃった。なあ、俺には何か無いのか?」
「そう言うだろうと思って、これからクッキーを焼くつもりだ。しかも『肉球クッキー』」
「に、肉球クッキー!?」
思い掛けない発言に目を見開いて叫ぶと、京一郎は真面目な顔で「と言っても、肉球の形をした只のクッキーだ」と続けた。
「肉球のクッキー型もあるのか?」
「もちろんだ。ベースはプレーンで、肉球はココアの生地で作る」
「成程!」
「簡単だからお前もやるか?」
「えー、俺は食う係だからさぁ」
「物臭め」
せっかく誘われたのに首を横に振ったら、そう言われたので俺はへへへと笑った……。
「やっぱり京一郎きゅんは器用だな。一つも変なのが無い」
肉球クッキーのレシピは簡単で、一時間半程で焼き上がった。京一郎は庫内容量の大きいドイツ製の良いオーブンを持っているから、一度にたくさん焼けるし焼きムラも出来にくい。天板の上に売り物みたいなクッキーがたくさん並んでいるのを見て素直に褒めたら、ふふん、と言って鼻高高になった。
「自分で言うのも何だが、専門に学んでいないのに中中やるだろう、俺は」
「うん。三高のお嫁さんになれるぞ」
「は? 三高?」
「高学歴・高収入・高身長……」
「何を言っているんだお前は。俺はもうあずさの嫁だろう。残念ながら三低だが」
「何おう!? 身長はそこそこあるぞ……」
そんな下らない会話をしながら俺はサッと手を動かし、まだ熱熱のクッキーを一つ掻っ攫った。しかし、「あちちっ」と叫んで取り落とす。けれども、キッチンの作業スペースの上に落ちたのでセーフだ。
「鳶みたいなことをするな。でもあずさは飛ぶには重過ぎるな……」
「鳶!? 酷ぇな……あっでも鳶といえばさ、鳶とカラスの喧嘩って見たことある?」
「は? カラスと喧嘩?」
「カラスも結構デカいけど、鳶に比べれば小回り利くだろ。だからたまに鳶が獲った魚とか横取りするん」
「ああ……聞いたことはあるな」
「だから今は京一郎きゅんが鳶だな! 俺はカラス! アホーアホー! 京一郎きゅんのアホー!!」
「……」
そんな風に鳴き真似をしながら手を上下にバタバタさせたら、京一郎ははああと巨大なため息を吐いた……。
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