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第79話
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それからも何度も交わって、気が付いた時には夜の十一時を過ぎていた。
「節分えっち ~対面座位に愛と官能を添えて~」なんてふざけたタイトルを付けていたのに、予想外に真剣に愛し合ってしまったから後から恥ずかしくなった。だから京一郎の腕枕で眠った振りをしていた。
「あずさ。起きているだろう」
「ぐーすか」
「ぐーすか……」
バレバレの狸寝入りをしたら、京一郎は思い切り呆れていたが、すぐにくすくす笑った。
「お前の気持ちが聞けて良かった。どうしても俺のものにしたくて、強引にここまで来たから……」
「何だ、自覚あったんかい」
京一郎の言葉に、俺は顔を上げるとそう突っ込んだ。すると彼は「やっぱり起きていたんだな」と言って笑った。
「まあ、強引に手に入れられても幸せなら、結果オーライじゃん」
「あずさは本当は、もう少し無駄飯食いを続けるつもりだったんだろう?」
「無駄飯食いって! 毒舌だな……」
俺は顔を顰めたが、こっくり頷いて言う。
「人生は長いようで短く、短いようで長いからな。本当はまだまだのんびりするつもりだったけど、今は赤ちゃん産んで育てるのも良いなって思ってるよ。三人は産むんだろ? 暫くは子育てに掛かり切りになるけど……その後はどうすっかな」
そう言うと、京一郎はフッと笑って「自由に過ごせば良い。金の心配はさせない」と言った。それに「おお~! かっちょええ~!」と叫んだら、真面目な顔で「本当だぞ」と応えた。
「玉の輿、最高ですな!」
「そうだろう。金持ちアルファの運命の番で良かったな」
「自分で言うなし!」
そう突っ込むと京一郎はあははと笑ったので、俺もぷっと噴き出した……。
それから四日後の月曜、俺は妊娠二十二週になった。本当に腹が大きくなって、バランスの変化に慣れないうちは何度かふらついて京一郎を冷や冷やさせた。
「あずさ。今日は指輪を見に行くぞ」
「指輪?」
手を合わせて朝食を食べ始めるなり京一郎がそう言って、俺は肉厚の銀鮭の身を解しながら聞き返した。すると彼は真面目な顔で頷き、味噌汁を一口飲んでから言う。
「入籍までもう一週間しかないのに、結婚指輪のことを忘れていた」
「でもさあ、俺、指までぷんぷくりんなんだよ。肉が付いてるっていうか、浮腫んでる」
「そうか? 俺にはいつも通りに見えるが」
俺は箸を持ったまま指を見て口を尖らせた。確かに自分以外には分からない程度だが、いつもより太くなっているのだ。
「婚約指輪と同じサイズで良いけど、もっと浮腫んで来たら暫くは嵌められないぞ……」
「ふむ……しかし、指輪を嵌めておかないと心配だな」
「心配って何がだよ!」
「番っていないから項に噛み跡が無いし、フリーのオメガに見えるだろう」
「どうせ赤ちゃん居る間は誰とも番えないんだから良いじゃん!」
そう言いながら口を尖らせていたら、京一郎はふむ、と言って思案顔になった。それから少しして、「そうだ」と言って顔を上げた。
「では、ペアブレスレットを先に買おう。そして二人の名前を刻印する」
「ペアブレスレット? なんか高校生カップルみてぇ」
乙女チックなアイデアだな、と思ってへらへら笑っていたら、京一郎は「真面目に言っているんだぞ」と言ってぷりぷりした。
「そんなに俺っちを捕まえておきたいのか、京一郎きゅんは」
「当たり前だ。例え非モテでももし取られたらと思うと夜も眠れない」
「いや、毎日ぐっすり寝てんの知ってんぞ!! ってか非モテ言うなし!!」
俺は酷い言い草だな、とぷんぷんした……。
「節分えっち ~対面座位に愛と官能を添えて~」なんてふざけたタイトルを付けていたのに、予想外に真剣に愛し合ってしまったから後から恥ずかしくなった。だから京一郎の腕枕で眠った振りをしていた。
「あずさ。起きているだろう」
「ぐーすか」
「ぐーすか……」
バレバレの狸寝入りをしたら、京一郎は思い切り呆れていたが、すぐにくすくす笑った。
「お前の気持ちが聞けて良かった。どうしても俺のものにしたくて、強引にここまで来たから……」
「何だ、自覚あったんかい」
京一郎の言葉に、俺は顔を上げるとそう突っ込んだ。すると彼は「やっぱり起きていたんだな」と言って笑った。
「まあ、強引に手に入れられても幸せなら、結果オーライじゃん」
「あずさは本当は、もう少し無駄飯食いを続けるつもりだったんだろう?」
「無駄飯食いって! 毒舌だな……」
俺は顔を顰めたが、こっくり頷いて言う。
「人生は長いようで短く、短いようで長いからな。本当はまだまだのんびりするつもりだったけど、今は赤ちゃん産んで育てるのも良いなって思ってるよ。三人は産むんだろ? 暫くは子育てに掛かり切りになるけど……その後はどうすっかな」
そう言うと、京一郎はフッと笑って「自由に過ごせば良い。金の心配はさせない」と言った。それに「おお~! かっちょええ~!」と叫んだら、真面目な顔で「本当だぞ」と応えた。
「玉の輿、最高ですな!」
「そうだろう。金持ちアルファの運命の番で良かったな」
「自分で言うなし!」
そう突っ込むと京一郎はあははと笑ったので、俺もぷっと噴き出した……。
それから四日後の月曜、俺は妊娠二十二週になった。本当に腹が大きくなって、バランスの変化に慣れないうちは何度かふらついて京一郎を冷や冷やさせた。
「あずさ。今日は指輪を見に行くぞ」
「指輪?」
手を合わせて朝食を食べ始めるなり京一郎がそう言って、俺は肉厚の銀鮭の身を解しながら聞き返した。すると彼は真面目な顔で頷き、味噌汁を一口飲んでから言う。
「入籍までもう一週間しかないのに、結婚指輪のことを忘れていた」
「でもさあ、俺、指までぷんぷくりんなんだよ。肉が付いてるっていうか、浮腫んでる」
「そうか? 俺にはいつも通りに見えるが」
俺は箸を持ったまま指を見て口を尖らせた。確かに自分以外には分からない程度だが、いつもより太くなっているのだ。
「婚約指輪と同じサイズで良いけど、もっと浮腫んで来たら暫くは嵌められないぞ……」
「ふむ……しかし、指輪を嵌めておかないと心配だな」
「心配って何がだよ!」
「番っていないから項に噛み跡が無いし、フリーのオメガに見えるだろう」
「どうせ赤ちゃん居る間は誰とも番えないんだから良いじゃん!」
そう言いながら口を尖らせていたら、京一郎はふむ、と言って思案顔になった。それから少しして、「そうだ」と言って顔を上げた。
「では、ペアブレスレットを先に買おう。そして二人の名前を刻印する」
「ペアブレスレット? なんか高校生カップルみてぇ」
乙女チックなアイデアだな、と思ってへらへら笑っていたら、京一郎は「真面目に言っているんだぞ」と言ってぷりぷりした。
「そんなに俺っちを捕まえておきたいのか、京一郎きゅんは」
「当たり前だ。例え非モテでももし取られたらと思うと夜も眠れない」
「いや、毎日ぐっすり寝てんの知ってんぞ!! ってか非モテ言うなし!!」
俺は酷い言い草だな、とぷんぷんした……。
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