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第69話
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「でもまあ、安心したわ。京一郎に親友が居ると分かって。やっぱり人間だったんだな」
「前にも聞いた気がするが、お前は一体俺のことを何だと思っているんだ?」
ジンと別れた後、俺と京一郎はスーパー部に向かいながらそんな会話をした。俺の言い草に眉を寄せてそう言ったのを無視して、京一郎の前を歩きながら「帰ったらあん餅のお雑煮食うぞ~」と呟く。
「あ、そういやぽん吉が待ってるな。早く戻ってあげんと」
「そうだな。超特急で買い物するぞ」
「何買うん?」
「浅蜊だ。いや、帆立でも良いな。クラムチャウダーを作る」
「おっ、さっすが、我らの京一郎きゅん!」
「京一郎きゅん……というか、我らって他に誰が居るんだ」
「そりゃあ、ぽん吉よ」
「成程……」
そんな阿呆な会話をしながら、俺達は店内籠をカートに乗せ商品を選び始めた……。
翌日、俺達は俺の実家へ向かった。普段は車で二十分程で到着するが、三が日なので混んでいて三十分以上掛かった。
「いえーい! ハッピーニューイヤー!」
家の駐車場に停めるのにはベ◯ツのオフロード車は大き過ぎるので、少し離れたコインパーキングに駐車して歩いて実家へ向かった。インターホンを鳴らし、誰かが出て来る前にガチャガチャ解錠して勢い良くドアを開けた。そうして叫んだ俺の背後で、京一郎が「普通に明けましておめでとうじゃないのか……」と呟いた。
「梓ー? あら、京一郎さんも」
「明けましておめでとうございます」
「何だ母ちゃん、居たのか。てっきり仕事行ってると思ってたわ」
「流石に三が日は家で居るわよ……。京一郎さん、明けましておめでとう」
「はい。今年もどうぞ宜しくお願いします」
奥から出て来た佐智子に向かって、京一郎は深深と頭を下げた。息子の言い草に顔を顰めていた佐智子はにっこりすると、「さあさあ、上がって下さい」と言った。
「おっ、梓ちゃん! 長いこと顔見てなかったから、じーちゃん寂しかったよ~」
「マイ・スウィート・グランパ! 俺も会いたかったよ~ん」
「アンタ、ちょっと肥えたんじゃない? 京一郎さんのご飯、美味しいんだねぇ」
リビングに入ると、炬燵に入ってテレビを観ていた祖父母が口口にそう言った。テンプレートに温州蜜柑を盛った籠があるのが笑える。
「お祖父様、お祖母様、明けましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願いします」
「ああ、京一郎さん、明けましておめでとう。新年早早男前だねぇ。目の保養だわ」
「明けましておめでとう」
さっきと同じように深深とお辞儀して新年の挨拶をした京一郎を見て、祖母はぽっと頬を染めてそう応えたが、祖父は口を尖らせて一言挨拶を返しただけだった。俺とそっくりな彼は、京一郎の家に引っ越した時に一番寂しがっていた——昔から一等甘やかして貰っているから、俺は実はヘビーなおじいちゃん子なのである。
「ほんのお口汚しですが、良かったら召し上がってください。アララ・シャルパンティエのクッキーです」
「あら、アララ・シャルパンティエ? エッフェル塔のピックが付いてるやつよね」
「母ちゃん好きだからさ。S(デパート)無くなっちゃったし、態態通販で取り寄せたんだぜ」
「あらあら、どうもありがとうございます、京一郎さん」
「いえいえ、こんな少しで申し訳ありません」
佐智子の好物である有名洋菓子ブランドの詰め合わせの箱を差し出した京一郎はそう言ったが、一番大きなLサイズの箱が二つもある。一つ三千円だから、安過ぎると言ってもう一箱買ったのだ。
「それで梓、具合はどうなの? すっかり元気そうだけど」
「うん、めちゃくちゃ食欲あるぜ。健診でも何も問題見つからなかったし!」
「流石、阿呆の子は違うわねぇ」
「酷い言い草だな! 自分の息子だろ!」
俺と京一郎と佐智子も炬燵に入り、コーヒーと共に早速クッキーを頬張った。体調を聞かれて元気良く答えたら、佐智子は頬に手を当ててそう言ったのでぷりぷりする。
「俺の作るもの、何でも美味しいって言ってくれるので張り合いがあります。梓さんが来てくれて本当に良かった」
「何だ京一郎、ハイパーぶりっ子モードだな」
「……」
「それで、あなた達いつ入籍するの?」
「バレンタインデーとか、良いなと思ってるんですが……」
「ええっ、初耳なんですけど!?」
佐智子の質問に京一郎がそう答えたのを聞いて、俺は仰天した。そもそもいつ入籍するかなんて全然相談していなかった——しかもバレンタイン当日だなんて乙女チック過ぎる。
「あら、バレンタインデー、良いじゃない。アンタ、本当に幸せ者だね。こんなイケメンにプロポーズされて、赤ちゃんまで生まれるなんて……」
「おう。俺は日頃の行いが良いし、当然だけどな」
「何言ってんの。京一郎さん、本当にごめんなさいね。こんな阿呆の子を貰っていただいて……」
「いえいえ」
眉を寄せてそう謝った佐智子ににっこり応えた京一郎を見て、俺は後で揶揄ってやろうと思ってほくそ笑んだ……。
「前にも聞いた気がするが、お前は一体俺のことを何だと思っているんだ?」
ジンと別れた後、俺と京一郎はスーパー部に向かいながらそんな会話をした。俺の言い草に眉を寄せてそう言ったのを無視して、京一郎の前を歩きながら「帰ったらあん餅のお雑煮食うぞ~」と呟く。
「あ、そういやぽん吉が待ってるな。早く戻ってあげんと」
「そうだな。超特急で買い物するぞ」
「何買うん?」
「浅蜊だ。いや、帆立でも良いな。クラムチャウダーを作る」
「おっ、さっすが、我らの京一郎きゅん!」
「京一郎きゅん……というか、我らって他に誰が居るんだ」
「そりゃあ、ぽん吉よ」
「成程……」
そんな阿呆な会話をしながら、俺達は店内籠をカートに乗せ商品を選び始めた……。
翌日、俺達は俺の実家へ向かった。普段は車で二十分程で到着するが、三が日なので混んでいて三十分以上掛かった。
「いえーい! ハッピーニューイヤー!」
家の駐車場に停めるのにはベ◯ツのオフロード車は大き過ぎるので、少し離れたコインパーキングに駐車して歩いて実家へ向かった。インターホンを鳴らし、誰かが出て来る前にガチャガチャ解錠して勢い良くドアを開けた。そうして叫んだ俺の背後で、京一郎が「普通に明けましておめでとうじゃないのか……」と呟いた。
「梓ー? あら、京一郎さんも」
「明けましておめでとうございます」
「何だ母ちゃん、居たのか。てっきり仕事行ってると思ってたわ」
「流石に三が日は家で居るわよ……。京一郎さん、明けましておめでとう」
「はい。今年もどうぞ宜しくお願いします」
奥から出て来た佐智子に向かって、京一郎は深深と頭を下げた。息子の言い草に顔を顰めていた佐智子はにっこりすると、「さあさあ、上がって下さい」と言った。
「おっ、梓ちゃん! 長いこと顔見てなかったから、じーちゃん寂しかったよ~」
「マイ・スウィート・グランパ! 俺も会いたかったよ~ん」
「アンタ、ちょっと肥えたんじゃない? 京一郎さんのご飯、美味しいんだねぇ」
リビングに入ると、炬燵に入ってテレビを観ていた祖父母が口口にそう言った。テンプレートに温州蜜柑を盛った籠があるのが笑える。
「お祖父様、お祖母様、明けましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願いします」
「ああ、京一郎さん、明けましておめでとう。新年早早男前だねぇ。目の保養だわ」
「明けましておめでとう」
さっきと同じように深深とお辞儀して新年の挨拶をした京一郎を見て、祖母はぽっと頬を染めてそう応えたが、祖父は口を尖らせて一言挨拶を返しただけだった。俺とそっくりな彼は、京一郎の家に引っ越した時に一番寂しがっていた——昔から一等甘やかして貰っているから、俺は実はヘビーなおじいちゃん子なのである。
「ほんのお口汚しですが、良かったら召し上がってください。アララ・シャルパンティエのクッキーです」
「あら、アララ・シャルパンティエ? エッフェル塔のピックが付いてるやつよね」
「母ちゃん好きだからさ。S(デパート)無くなっちゃったし、態態通販で取り寄せたんだぜ」
「あらあら、どうもありがとうございます、京一郎さん」
「いえいえ、こんな少しで申し訳ありません」
佐智子の好物である有名洋菓子ブランドの詰め合わせの箱を差し出した京一郎はそう言ったが、一番大きなLサイズの箱が二つもある。一つ三千円だから、安過ぎると言ってもう一箱買ったのだ。
「それで梓、具合はどうなの? すっかり元気そうだけど」
「うん、めちゃくちゃ食欲あるぜ。健診でも何も問題見つからなかったし!」
「流石、阿呆の子は違うわねぇ」
「酷い言い草だな! 自分の息子だろ!」
俺と京一郎と佐智子も炬燵に入り、コーヒーと共に早速クッキーを頬張った。体調を聞かれて元気良く答えたら、佐智子は頬に手を当ててそう言ったのでぷりぷりする。
「俺の作るもの、何でも美味しいって言ってくれるので張り合いがあります。梓さんが来てくれて本当に良かった」
「何だ京一郎、ハイパーぶりっ子モードだな」
「……」
「それで、あなた達いつ入籍するの?」
「バレンタインデーとか、良いなと思ってるんですが……」
「ええっ、初耳なんですけど!?」
佐智子の質問に京一郎がそう答えたのを聞いて、俺は仰天した。そもそもいつ入籍するかなんて全然相談していなかった——しかもバレンタイン当日だなんて乙女チック過ぎる。
「あら、バレンタインデー、良いじゃない。アンタ、本当に幸せ者だね。こんなイケメンにプロポーズされて、赤ちゃんまで生まれるなんて……」
「おう。俺は日頃の行いが良いし、当然だけどな」
「何言ってんの。京一郎さん、本当にごめんなさいね。こんな阿呆の子を貰っていただいて……」
「いえいえ」
眉を寄せてそう謝った佐智子ににっこり応えた京一郎を見て、俺は後で揶揄ってやろうと思ってほくそ笑んだ……。
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