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第65話
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箸巻きとベビーカステラを鱈腹食べたから、俺はベ◯ツの助手席に乗り込むなり巨大なゲップをした。すると運転席の京一郎が僅かにパワーウインドウを下げたので「何だよ!」と叫ぶ。
「それだけ食べたらもう昼食は要らないな?」
「え、俺はそうだけど、京一郎あんま食べなかったじゃん」
「そうだな。だから一人で美味いものを食べることにする」
「ええーっ、そんなの反則だぞ……」
京一郎の言い草にそう叫んでぷうと頬を膨らませたら、彼はあははと笑った。それから「カフェで何か軽いものを食べる」と言ったので「おっ、ス◯バ?」と聞いた。
「ス◯バでも良いが、サ◯マルクもあるだろう。どちらにする?」
「んー、ス◯バは近所にあるからなあ。っぱ(※やっぱり)サ◯マルクっしょ!」
「分かった」
そんなやりとりをして、俺達はOA神社を後にした。散散食べ物の香りを嗅いだのに一つも食べられなかったから、クレートに入れる前、京一郎はぽん吉に「コックどんがワンコのために焼いたパン」をあげた。ころんとした小さなミルクパンは美味しそうだったが、そう言うのはやめた——流石に犬の食べ物まで欲しがっているとは思われたくない。
来た道を戻り、小さな橋を渡って東へ曲がるとYタウンのピンク色の看板が見えた。それに俺が「ひっさしぶり、Yタウン!」と叫んだら、京一郎が「スーパー以外で何か買いたいものはあるか?」と聞いた。
「えっとな、インテリア関係だな! 雑貨屋を巡りたい」
「ああ、そう言えば別荘のコーディネート計画は頓挫していたな」
「頓挫って何だよ! ちょっと休止してるだけだし……」
京一郎の言い草にぶうぶう言っているうちに、ベ◯ツのオフロード車は立体駐車場のスロープを上った。元旦だから物凄く混んでいて、三階まで上らなければならなかった。
「ぽん吉、暫しの別れだ……敵に見つかりそうになったら狼煙を上げるんだぞ」
「駐車場は火気厳禁だぞ」
クレートの中のぽん吉は、置いていかれるのが分かっているのか「キャン!」と一声鳴いた後静かになった。意外にも聞き分けが良い。
「それじゃ、たのぴーショッピングの始まり始まり~」
「たのぴー……」
俺は先に立って歩き出したが、小走りになるのは我慢した……。
この手のショッピングモールには大手の雑貨ブランドが幾つか入っているから、田舎にしては中中お洒落なものが手に入る。けれどもついつい買い過ぎてしまうので注意だ。
「おもちゃ箱! って感じのインテリアには、ポップな時計が必要だよな」
「壁掛け時計か?」
「壁掛けでも置き時計でも……派手で変なやつが良い」
「お前のことだから、う◯こ型が良いんだろう?」
「それ最高だな! あったら絶対買うわ」
「本気か?」
そんな阿呆な会話をしながら、広い通路を進んで行く。市内中心部より余っ程混んでいて、擦れ違う人に何度もぶつかりそうになった。すると京一郎にぐいと腕を引かれた。彼は俺を庇うようにして前を歩く。
「かっちょええ~……」
「は?」
「いや、京一郎君、俺のこと守ってくれちゃって!」
「揶揄うな。転けたら本当に危ないんだからな」
「へーい……」
ふざけた口調で言ったのは照れ隠しだったから、真面目な顔で応えられて余計に恥ずかしくなった。けれども、こんな風に気遣って貰えるのは嬉しい——元は男になんか興味なかったのに(前にも言ったが付き合うなら女性が良かった)。
「あっ! 京一郎、この店寄りたい」
「ん?」
ぐいぐい引っ張られながら歩いていた俺は、ピンクがかった商品の並ぶ店の前に来た時そう叫んだ。京一郎は足を止めて振り返ったが、訝しげな顔になる。
「この店か? でも、どう見ても女子小中学生向け……」
俺が入ろうとしているのは、所謂ファンシーショップでキャピキャピした商品が並んでいる。
「こういうところにこそ、お洒落なものが潜伏しているのだよ、京一郎君」
「おお、そうなのか……」
見るからに場違いな京一郎は入り辛そうにしていたが、俺は意に介さず彼の腕を引っ張った……。
「それだけ食べたらもう昼食は要らないな?」
「え、俺はそうだけど、京一郎あんま食べなかったじゃん」
「そうだな。だから一人で美味いものを食べることにする」
「ええーっ、そんなの反則だぞ……」
京一郎の言い草にそう叫んでぷうと頬を膨らませたら、彼はあははと笑った。それから「カフェで何か軽いものを食べる」と言ったので「おっ、ス◯バ?」と聞いた。
「ス◯バでも良いが、サ◯マルクもあるだろう。どちらにする?」
「んー、ス◯バは近所にあるからなあ。っぱ(※やっぱり)サ◯マルクっしょ!」
「分かった」
そんなやりとりをして、俺達はOA神社を後にした。散散食べ物の香りを嗅いだのに一つも食べられなかったから、クレートに入れる前、京一郎はぽん吉に「コックどんがワンコのために焼いたパン」をあげた。ころんとした小さなミルクパンは美味しそうだったが、そう言うのはやめた——流石に犬の食べ物まで欲しがっているとは思われたくない。
来た道を戻り、小さな橋を渡って東へ曲がるとYタウンのピンク色の看板が見えた。それに俺が「ひっさしぶり、Yタウン!」と叫んだら、京一郎が「スーパー以外で何か買いたいものはあるか?」と聞いた。
「えっとな、インテリア関係だな! 雑貨屋を巡りたい」
「ああ、そう言えば別荘のコーディネート計画は頓挫していたな」
「頓挫って何だよ! ちょっと休止してるだけだし……」
京一郎の言い草にぶうぶう言っているうちに、ベ◯ツのオフロード車は立体駐車場のスロープを上った。元旦だから物凄く混んでいて、三階まで上らなければならなかった。
「ぽん吉、暫しの別れだ……敵に見つかりそうになったら狼煙を上げるんだぞ」
「駐車場は火気厳禁だぞ」
クレートの中のぽん吉は、置いていかれるのが分かっているのか「キャン!」と一声鳴いた後静かになった。意外にも聞き分けが良い。
「それじゃ、たのぴーショッピングの始まり始まり~」
「たのぴー……」
俺は先に立って歩き出したが、小走りになるのは我慢した……。
この手のショッピングモールには大手の雑貨ブランドが幾つか入っているから、田舎にしては中中お洒落なものが手に入る。けれどもついつい買い過ぎてしまうので注意だ。
「おもちゃ箱! って感じのインテリアには、ポップな時計が必要だよな」
「壁掛け時計か?」
「壁掛けでも置き時計でも……派手で変なやつが良い」
「お前のことだから、う◯こ型が良いんだろう?」
「それ最高だな! あったら絶対買うわ」
「本気か?」
そんな阿呆な会話をしながら、広い通路を進んで行く。市内中心部より余っ程混んでいて、擦れ違う人に何度もぶつかりそうになった。すると京一郎にぐいと腕を引かれた。彼は俺を庇うようにして前を歩く。
「かっちょええ~……」
「は?」
「いや、京一郎君、俺のこと守ってくれちゃって!」
「揶揄うな。転けたら本当に危ないんだからな」
「へーい……」
ふざけた口調で言ったのは照れ隠しだったから、真面目な顔で応えられて余計に恥ずかしくなった。けれども、こんな風に気遣って貰えるのは嬉しい——元は男になんか興味なかったのに(前にも言ったが付き合うなら女性が良かった)。
「あっ! 京一郎、この店寄りたい」
「ん?」
ぐいぐい引っ張られながら歩いていた俺は、ピンクがかった商品の並ぶ店の前に来た時そう叫んだ。京一郎は足を止めて振り返ったが、訝しげな顔になる。
「この店か? でも、どう見ても女子小中学生向け……」
俺が入ろうとしているのは、所謂ファンシーショップでキャピキャピした商品が並んでいる。
「こういうところにこそ、お洒落なものが潜伏しているのだよ、京一郎君」
「おお、そうなのか……」
見るからに場違いな京一郎は入り辛そうにしていたが、俺は意に介さず彼の腕を引っ張った……。
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