犬のさんぽのお兄さん

深川シオ

文字の大きさ
上 下
59 / 153

第59話

しおりを挟む
 それからも俺達は交わり続けていたが、流石に二時間も経つと疲れてきた。そうして汗ばんだ体を京一郎の腕に預けていたら、ふと枕元の時計を見た彼が「まだ十時半だな」と呟いた。
「もうこのまま寝ようぜ……疲れた」
「何だあずさ、『年越しカウントダウンえっち』とタイトルまで付けていたのに情けないな」
「だって京一郎のち◯ち◯どデカくてカチカチだから、胎内なかゴリゴリされるとすぐにイっちゃって疲れんだもん」
「物凄く下品だが、俺ので簡単にイかせられるのは嬉しいな」
「このどデカち◯こ……」
「その呼び方はやめろ」
 京一郎は俺の言い草に顔を顰めると、むくりと起き上がった。乱れてしまった長い黒髪を掻き上げながら言う。
「年越しカウントダウンえっちは絶対にやるぞ。でも、それまでに何か一品作れるな……」
「えっちするまでの時間潰しに料理って、なんかスゲー微妙な気持ちになるんですけど!!」
 俺は眉を寄せて叫んだが、京一郎は一向気にせずにベッドから出た。
「料理している間、フライングで栗きんとんを食わせてやっても良いぞ」
「マジ!?」
 俺は京一郎の提案に目を輝かせると、ころっと機嫌を直して布団から飛び出した……。

「うんめぇ、うんめぇなコレは」
「流石あずさ。山賊みたいな食べ方をするな」
 京一郎は宣言通り再びキッチンに立って、俺は向かいのスツールに掛けるとガラスの器に入れて供された栗きんとんを貪っていた。
「ちゃんとパイナポー入れてくれたんだな!」
「何でそこだけネイティブ発音なんだ」
 京一郎は眉を寄せて突っ込んだが、フッと笑うと「パイナップルを入れたのは初めてだが、中中美味しいな。来年もそうしよう」と言った。
「ばーちゃんは何にでもフルーツぶっ込むからな。サンドイッチにバナナ、サラダに八朔はっさくとか」
「サンドイッチにバナナは良さそうだな。今度やってみるか」
「あ、じゃあ、前日の夕飯、ハンバーグにしてそれもぶっ込んでよ。あとトマトにチーズに卵……」
「ほう。具沢山で美味しそうだな」
「やったぜ! 京一郎ばーちゃん化計画進行中!」
「ばーちゃん化はしないでくれ……」
 俺の言い草に京一郎はため息を吐くと、パントリーへ行って何かがぎっしり詰まった袋を取って来た。
「なんだ?」
「今から『そば米汁』を作る」
「あーっ! 俺の大好物! 何で知ってんだ?」
「俺の大好物でもあるからだ」
 作業スペースにそば米を置いた京一郎は、次にまな板を洗いながらそう答えた。「そば米汁」とは地元の郷土料理で、ニンジンに牛蒡ごぼう椎茸しいたけ蒟蒻こんにゃく竹輪ちくわ、それから鶏もも肉とそば米をだし汁で煮た栄養たっぷりの一品である。もも肉と昆布だしの旨みたっぷりのそれは学校給食でも供され、子ども達に大人気だ。
「これって昔ながらの郷土料理! って感じなのに、鶏の脂たっぷりでうんめぇんだよな。山賊の俺にはぴったりだ」
「とうとう山賊を自称するようになったのか……」
 突っ込みをきれいに無視して、空になった器を差し出すと「もっと栗きんとんを寄越せ!」と強請ねだった。けれども京一郎は首を横に振って言う。
「この調子では年が明ける前に無くなるからダメだ」
「けちー! このけちけち◯ち◯!」
「何だその下品過ぎるモンスター? は!」
「おっ、モンスター? そのアイデア良いな。これからイラスト描いてやるよ。何ならTシャツとかにしても良いな」
「やめろ!!」
 京一郎は顔を顰めて叫んだが、それでも包丁でニンジンを切る手はちゃんと動いていた……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

(…二度と浮気なんてさせない)

らぷた
BL
「もういい、浮気してやる!!」 愛されてる自信がない受けと、秘密を抱えた攻めのお話。 美形クール攻め×天然受け。 隙間時間にどうぞ!

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

奴の執着から逃れられない件について

B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。 しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。 なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され..., 途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。

孤独を癒して

星屑
BL
運命の番として出会った2人。 「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、 デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。 *不定期更新。 *感想などいただけると励みになります。 *完結は絶対させます!

俺の番が変態で狂愛過ぎる

moca
BL
御曹司鬼畜ドS‪なα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!! ほぼエロです!!気をつけてください!! ※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!! ※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️ 初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...