50 / 153
第50話
しおりを挟む
「ふう。今年のクリスマス兼誕生日は、今までで一番楽しかったかも!」
「本当か? 実は俺もそうだ」
ささやかなパーティーの片付けをして風呂に入り、歯磨きもきっちり済ませた俺達は、二人並んでベッドに横になっていた。珍しくえっちな雰囲気ではなくて、京一郎は優しい表情で俺を見つめている。
「あー。来年から忙しくなるけど、ずっとこんな風に祝って貰えるの? 俺」
「そうだ。俺は絶対にお前を手放さないからな」
「なんか言い方怖いけど、嬉しいぞ! こんな玉の輿、なかなか乗れねーかんな!」
「……」
照れ隠しに態と即物的な言い方をしたら、京一郎はやや興醒めした顔付きになったが、フッと笑った。それから優しい声で言う。
「お前の望むものは何でも用意しよう。限度はあるが、幸いある程度豊かな暮らしはさせてやれる……」
「でも玉の輿って言ったけど、別に俺そんな成金趣味じゃねーし。毎日メシウマ京一郎の作る美味いもん食って、あったかくて寝心地の良いベッドで寝て、そこそこヤりまくったらそれで満足……」
率直にそう伝えたら、京一郎は真面目な顔で「ヤりまくるのが好きなのは良かった。性の不一致は夫婦関係の破綻の原因になるからな」と言ったのでぷっと噴き出した。
「でも、俺ばっか良くして貰いっ放しなのも良くねーな。俺だって、何か生産しないとな。家事とかだけじゃなくて」
「別に、俺は無償でお前に良くしている訳ではない。現に会ってすぐに孕ませたしな」
「京一郎って孕ませるって言うの好きだよな」
俺は京一郎の言い様に呆れてそう応えたが、確かにそういう見方もあるな、と思った。男として俺を孕ませるのが彼の一番の目的だったのだろう。
「まあ確かに、今んとこ何の問題もねーけど、赤ちゃん産むのって命懸けだからな。億が一死んだらゴメンな」
「……」
軽い気持ちで言ったのに、京一郎は僅かに青褪めたからぎょっとした。するといきなりギュッと抱き締められたので目を見開く。
「もしお前が死んだら、俺も死ぬ……」
「おい!」
そういえば、京一郎の母親は自殺していたのだった。俺は自らの発言を悔やんだけれどもう遅い。けれども、彼を見上げて言う。
「俺が死んだとして、もし赤ちゃんが生きてたらそれこそ死んじゃダメだぞ。ちゃんと育ててくれよな」
「嫌だ。あずさが居ないと生きていけない」
京一郎の顔は見えないが、僅かに震えているのに気付いて俺ははあ、とため息を吐いた。
「分かった。それじゃ泥水を啜ってでも生き残ってやるから安心しろ。全く、京一郎ちゃんは弱虫なんだから」
「あずさ、ずっと一緒に居てくれ……」
「分かった分かった。不安にさせるようなこと言ってゴメンな」
俺は京一郎の背中をポンポン叩いてやりながら、再びふうとため息を吐いた……。
「本当か? 実は俺もそうだ」
ささやかなパーティーの片付けをして風呂に入り、歯磨きもきっちり済ませた俺達は、二人並んでベッドに横になっていた。珍しくえっちな雰囲気ではなくて、京一郎は優しい表情で俺を見つめている。
「あー。来年から忙しくなるけど、ずっとこんな風に祝って貰えるの? 俺」
「そうだ。俺は絶対にお前を手放さないからな」
「なんか言い方怖いけど、嬉しいぞ! こんな玉の輿、なかなか乗れねーかんな!」
「……」
照れ隠しに態と即物的な言い方をしたら、京一郎はやや興醒めした顔付きになったが、フッと笑った。それから優しい声で言う。
「お前の望むものは何でも用意しよう。限度はあるが、幸いある程度豊かな暮らしはさせてやれる……」
「でも玉の輿って言ったけど、別に俺そんな成金趣味じゃねーし。毎日メシウマ京一郎の作る美味いもん食って、あったかくて寝心地の良いベッドで寝て、そこそこヤりまくったらそれで満足……」
率直にそう伝えたら、京一郎は真面目な顔で「ヤりまくるのが好きなのは良かった。性の不一致は夫婦関係の破綻の原因になるからな」と言ったのでぷっと噴き出した。
「でも、俺ばっか良くして貰いっ放しなのも良くねーな。俺だって、何か生産しないとな。家事とかだけじゃなくて」
「別に、俺は無償でお前に良くしている訳ではない。現に会ってすぐに孕ませたしな」
「京一郎って孕ませるって言うの好きだよな」
俺は京一郎の言い様に呆れてそう応えたが、確かにそういう見方もあるな、と思った。男として俺を孕ませるのが彼の一番の目的だったのだろう。
「まあ確かに、今んとこ何の問題もねーけど、赤ちゃん産むのって命懸けだからな。億が一死んだらゴメンな」
「……」
軽い気持ちで言ったのに、京一郎は僅かに青褪めたからぎょっとした。するといきなりギュッと抱き締められたので目を見開く。
「もしお前が死んだら、俺も死ぬ……」
「おい!」
そういえば、京一郎の母親は自殺していたのだった。俺は自らの発言を悔やんだけれどもう遅い。けれども、彼を見上げて言う。
「俺が死んだとして、もし赤ちゃんが生きてたらそれこそ死んじゃダメだぞ。ちゃんと育ててくれよな」
「嫌だ。あずさが居ないと生きていけない」
京一郎の顔は見えないが、僅かに震えているのに気付いて俺ははあ、とため息を吐いた。
「分かった。それじゃ泥水を啜ってでも生き残ってやるから安心しろ。全く、京一郎ちゃんは弱虫なんだから」
「あずさ、ずっと一緒に居てくれ……」
「分かった分かった。不安にさせるようなこと言ってゴメンな」
俺は京一郎の背中をポンポン叩いてやりながら、再びふうとため息を吐いた……。
51
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
奴の執着から逃れられない件について
B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。
しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。
なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され...,
途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。
孤独を癒して
星屑
BL
運命の番として出会った2人。
「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、
デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。
*不定期更新。
*感想などいただけると励みになります。
*完結は絶対させます!
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。
柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。
頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。
誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。
さくっと読める短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる