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❁伝えるオコゲ届けるオカユ
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このお話は後日談になります。
オコゲくんとオカユちゃんの二人が、両親と一緒に隣町へと手紙を運び、オコゲくんが夢をみるお話です。
ฅ•ﻌ•ฅ
とある夜、オコゲとオカユのお家にて。
父上「オコゲ、オカユ」
オコゲ「はい、お父さん」
オカユ「どしたの?」
父上「明日、お父さんとお母さんと一緒に、馬車に乗って隣町へ行きましょう」
オカユ「ほんと!?」
父上「本当ですよ」
オコゲ「でも突然、どうして?」
母上「隣町は今までは物騒というか、少し良くない雰囲気でしたから、優しい人の多いこの町へ二人を残したのだけれど。最近、ずいぶんと穏やかになりましてね」
父上「それで一度、家族旅行を兼ねて行こうかなと考えたのです」
オカユ「やったー!やったねおにさん!」
オコゲ「うん!」
こうして、二人は翌朝早くに隣町へ向かうことになりました。
眠る時間になっても、その興奮は収まりません。
オカユ「んー!たのしみー!」
オコゲ「明日は早いんだから、そろそろ寝なよ」
オカユ「おにさん!楽しみだね!」
オコゲ「うん。とてもね」
オカユはこうして、いっぱいワクワクして眠ることが出来ず、隣町へ向かう馬車の中でぐっすりです。
父上「どうかな。そろそろ慣れましたか」
オコゲ「はい!」
一方で、オコゲは馬に繋がる手綱を握って上機嫌でした。
母上「背中があなたに似てきましたね」ふふっ
父上「そうかな」
オコゲ「お母さん、どういうこと?」
母上「立派になりました、てことですよ」
オコゲ「変わりないように思うけど」
父上「オカユの面倒をよく見て、様々なことから守ってあげたじゃないですか」
オカユ「おにさんは、オカユを悪い人から助けてくれたり、オオカミさんから守ってくれたよ」ねむねむ
母上「頼りになるお兄さんでよかったね」なでなで
オカユ「うん。オカユ、おにさん大好き」にこー
オコゲ「よせよ。何だか照れるじゃないか」てれ
父上「自信を失わないで、これからもオカユのことよろしくお願いしますね。お兄さん」
オコゲ「はい!」
馬車は半日以上かけて、ようやく隣町へと着きました。
隣町は花が咲き溢れ、人が多く行き交い、とても活気に満ちていました。
どこからか喧騒が聞こえるほどです。
ところで。
お父さんは、にわかに角笛を取り出してオコゲに渡しました。
オコゲ「これは?」
父上「それを吹いて、手紙をお持ちしました、という合図を送るのです」
オカユ「いいないいな!」ぱたぱた
母上「オカユには、お手紙を届けてもらいましょう」
オカユ「オカユ届ける!」うきうき!
それから、一軒一軒、家々を巡ることになりました。
小さな家から大きな家まで、あっちからこっちへと、日がすっかり傾く前に忙しく町を走り巡ります。
オカユ「おにさん!」
最後に訪れたのは、青が映えるコーンブルーメの花が庭を美しく飾る邸宅でした。
その前に馬車を停めると、オカユに催促されてオコゲが角笛を吹きます。
少し不格好な音がして、オカユが悪戯に笑いました。
オコゲ「早く行っておいで」
オカユ「はーい!」ぴょんと!
オカユが、馬車から飛び降りて駆け出すのと同じくして、戸口から痩せこけた老人の使用人が現れました。
オコゲがオカユの背中をぼっーと見守っていると、お父さんが窓の方を示して言いました。
父上「あそこに見える青年は、現在、恋をしています」
オコゲ「え?」
父上「前に彼が、僕に直接話してくれました。角笛の音色が待ち遠しく、聞こえると胸が高鳴るのだと」
オコゲ「へえ」
父上「私達は手紙と一緒に、いつも誰かの想いを届けているのです。これがお父さん達の仕事です」
オコゲ「それは、とても大切なお仕事ですね」
父上「はい。とても大切です」
母上「……彼の想いが叶うといいわね」
ぽつりと、目を細めて、にこやかな表情でお母さんが言いました。
オコゲ「いつも、そう願っているの?」
母上「ええ。みんなの想いが伝わって、願いが届きますように、てね」
オコゲ「僕もそう思うよ」
母上「あら、いい子」ぎゅ
オコゲ「ちょっと、お母さん!」
オカユ「いいなー!オカユもオカユも!」
お父さんがオカユを抱き上げて、そっと馬車に乗せてあげました。
オコゲ「また、お菓子を貰ったんだね」
オカユ「うん!」にこにこ
オカユは今まで通った全ての家でお菓子を貰いました。
よほどかわいいお客さんと思われたのでしょう。
父上「きちんとお礼は言いましたか?」
オカユ「言いました!」
母上「えらいね」なでなで
オカユ「んーふふ!」すりすり
父上「さ、みんなで夕食にしましょう」
オカユ「それからどうするの?」わくわく!
父上「それからはですね……」
オカユ「…………」ときとき!
父上「この町を日が暮れるまで観光して、夜には、みんなで星を眺めましょう」
オカユ「きゃー!ぶんだばよー!」ぱちぱち!
父上「ぶんだば?」
オコゲ「あー、気にしないで」
オカユ「ねえねえ、どこで星を見るの?」
母上「お母さんとお父さんが出会った宿ですよ」
オコゲ「え!お母さんとお父さんが出会った宿!?」
母上「ええ。今までは二人の思い出でしたけれど、今日からは家族みんなの思い出にしましょう」
オカユ「わーい!」
それからこの家族は、美味しいご馳走を食べたり、不思議な小物に目を惹かれたり、町中で奏でられる音楽に耳を傾けたりと、それはもう楽しく町を観光しました。
そして夜には。
オカユが星にめいいっぱい手を伸ばして、その隣で、オコゲがこれからの幸せを願うのでした。
オコゲ「僕もいつか……!」
オコゲくんとオカユちゃんの二人が、両親と一緒に隣町へと手紙を運び、オコゲくんが夢をみるお話です。
ฅ•ﻌ•ฅ
とある夜、オコゲとオカユのお家にて。
父上「オコゲ、オカユ」
オコゲ「はい、お父さん」
オカユ「どしたの?」
父上「明日、お父さんとお母さんと一緒に、馬車に乗って隣町へ行きましょう」
オカユ「ほんと!?」
父上「本当ですよ」
オコゲ「でも突然、どうして?」
母上「隣町は今までは物騒というか、少し良くない雰囲気でしたから、優しい人の多いこの町へ二人を残したのだけれど。最近、ずいぶんと穏やかになりましてね」
父上「それで一度、家族旅行を兼ねて行こうかなと考えたのです」
オカユ「やったー!やったねおにさん!」
オコゲ「うん!」
こうして、二人は翌朝早くに隣町へ向かうことになりました。
眠る時間になっても、その興奮は収まりません。
オカユ「んー!たのしみー!」
オコゲ「明日は早いんだから、そろそろ寝なよ」
オカユ「おにさん!楽しみだね!」
オコゲ「うん。とてもね」
オカユはこうして、いっぱいワクワクして眠ることが出来ず、隣町へ向かう馬車の中でぐっすりです。
父上「どうかな。そろそろ慣れましたか」
オコゲ「はい!」
一方で、オコゲは馬に繋がる手綱を握って上機嫌でした。
母上「背中があなたに似てきましたね」ふふっ
父上「そうかな」
オコゲ「お母さん、どういうこと?」
母上「立派になりました、てことですよ」
オコゲ「変わりないように思うけど」
父上「オカユの面倒をよく見て、様々なことから守ってあげたじゃないですか」
オカユ「おにさんは、オカユを悪い人から助けてくれたり、オオカミさんから守ってくれたよ」ねむねむ
母上「頼りになるお兄さんでよかったね」なでなで
オカユ「うん。オカユ、おにさん大好き」にこー
オコゲ「よせよ。何だか照れるじゃないか」てれ
父上「自信を失わないで、これからもオカユのことよろしくお願いしますね。お兄さん」
オコゲ「はい!」
馬車は半日以上かけて、ようやく隣町へと着きました。
隣町は花が咲き溢れ、人が多く行き交い、とても活気に満ちていました。
どこからか喧騒が聞こえるほどです。
ところで。
お父さんは、にわかに角笛を取り出してオコゲに渡しました。
オコゲ「これは?」
父上「それを吹いて、手紙をお持ちしました、という合図を送るのです」
オカユ「いいないいな!」ぱたぱた
母上「オカユには、お手紙を届けてもらいましょう」
オカユ「オカユ届ける!」うきうき!
それから、一軒一軒、家々を巡ることになりました。
小さな家から大きな家まで、あっちからこっちへと、日がすっかり傾く前に忙しく町を走り巡ります。
オカユ「おにさん!」
最後に訪れたのは、青が映えるコーンブルーメの花が庭を美しく飾る邸宅でした。
その前に馬車を停めると、オカユに催促されてオコゲが角笛を吹きます。
少し不格好な音がして、オカユが悪戯に笑いました。
オコゲ「早く行っておいで」
オカユ「はーい!」ぴょんと!
オカユが、馬車から飛び降りて駆け出すのと同じくして、戸口から痩せこけた老人の使用人が現れました。
オコゲがオカユの背中をぼっーと見守っていると、お父さんが窓の方を示して言いました。
父上「あそこに見える青年は、現在、恋をしています」
オコゲ「え?」
父上「前に彼が、僕に直接話してくれました。角笛の音色が待ち遠しく、聞こえると胸が高鳴るのだと」
オコゲ「へえ」
父上「私達は手紙と一緒に、いつも誰かの想いを届けているのです。これがお父さん達の仕事です」
オコゲ「それは、とても大切なお仕事ですね」
父上「はい。とても大切です」
母上「……彼の想いが叶うといいわね」
ぽつりと、目を細めて、にこやかな表情でお母さんが言いました。
オコゲ「いつも、そう願っているの?」
母上「ええ。みんなの想いが伝わって、願いが届きますように、てね」
オコゲ「僕もそう思うよ」
母上「あら、いい子」ぎゅ
オコゲ「ちょっと、お母さん!」
オカユ「いいなー!オカユもオカユも!」
お父さんがオカユを抱き上げて、そっと馬車に乗せてあげました。
オコゲ「また、お菓子を貰ったんだね」
オカユ「うん!」にこにこ
オカユは今まで通った全ての家でお菓子を貰いました。
よほどかわいいお客さんと思われたのでしょう。
父上「きちんとお礼は言いましたか?」
オカユ「言いました!」
母上「えらいね」なでなで
オカユ「んーふふ!」すりすり
父上「さ、みんなで夕食にしましょう」
オカユ「それからどうするの?」わくわく!
父上「それからはですね……」
オカユ「…………」ときとき!
父上「この町を日が暮れるまで観光して、夜には、みんなで星を眺めましょう」
オカユ「きゃー!ぶんだばよー!」ぱちぱち!
父上「ぶんだば?」
オコゲ「あー、気にしないで」
オカユ「ねえねえ、どこで星を見るの?」
母上「お母さんとお父さんが出会った宿ですよ」
オコゲ「え!お母さんとお父さんが出会った宿!?」
母上「ええ。今までは二人の思い出でしたけれど、今日からは家族みんなの思い出にしましょう」
オカユ「わーい!」
それからこの家族は、美味しいご馳走を食べたり、不思議な小物に目を惹かれたり、町中で奏でられる音楽に耳を傾けたりと、それはもう楽しく町を観光しました。
そして夜には。
オカユが星にめいいっぱい手を伸ばして、その隣で、オコゲがこれからの幸せを願うのでした。
オコゲ「僕もいつか……!」
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