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❁笑顔のカナリィカトリネルエ
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この物語は後日談になります。
カナリィのお家は従兄弟のお兄様のおかげで、お菓子屋さんを開くことになりました。
そのある日。
チト、チシャノ、ロリニアの三人がお店のお手伝いをします。
カナリィカトリネルエは、グリム童話の『美人のカトリネルエ』より生まれたキャラクターです。
ฅ•ﻌ•ฅ
レンガの建物が美しい町に、それよりも心が美しいカナリィカトリネルエという少女がおります。
彼女は、町一番、汚れなく純粋な正直者と、みんなにこよなく愛されています。
ところが、なかには心があまり美しくない人達もいて、彼らはカナリィの性格を利用し、彼女をよく騙しました。
そうして借金を幾らか背負ってしまったカナリィなのですが、それでも愛されていた為にいつも幸せでした。
しばらくして、いよいよ借金の額が牛さんのお乳くらいに膨らんだ頃。
カナリィの従兄弟であるナリキンが彼女をたいへん世話してくれました。
おかげで、彼女はすっかり借金から解放されました。
そこでナリキンは、可愛いカナリィが二度と騙されぬよう、このように言いつけました。
ナリキン「カナリィ、お前は菓子屋を始めるのだ」
カナリィ「まあ、お菓子屋さんを?」
ナリキン「お前の親とは話をつけた。共に働くといいのだ。心配しなくとも必ず儲かるのだ」
カナリィ「ところで、突然どうしてこのようなご親切を?もしかしてカナリィ、お兄様にまた何かご迷惑を」
ナリキン「一人で売り買いするから騙される。だから常に誰かと一緒にいるといいのだ。何より箒も売れない掃除も頼まれないし、良い機会なのだ」
カナリィ「そうですか。わかりました。カナリィちからいっぱい頑張ります!」よーし!
こうして、町にチョコレート菓子をオススメにした。
『ポンポン・チョコラティエ』
というお菓子屋さんがオープンしました。
物珍しさもありましたが、何よりカナリィの愛嬌に惹かれて、たくさんのお客さんが訪れるようになりました。
そんな盛況の毎日のいつか。
カナリィの両親が隣町へと商談に向かうということで、この日、カナリィがお店を任されることになりました。
もちろん、一人では心配なのでお友だちに声を掛けました。
チシャノ「エプロン、よく分からないんだね」
ロリニア「こうだ」ぐちゃぐちゃ
チト「あーあ。余計にこんがらがったじゃない」
ロリニア「そうなんだ」
チト「たかだか紐を結ぶくらいで馬鹿らしいわ」きゅっ
チシャノ「わあ!ありがとうなんだね!」
チシャノはその場でくるりと一回転して、嬉しそうにエプロンを翻しました。
ロリニアも真似して、つまずいて、調理器具を見事にとっちらかしました。
チト「クソったれ!大人しくしやがれ!」きゅっ
ロリニア「おお、こう結ぶのか。ありがとう」
カナリィ「チトが今日いてくれて、本当に助かります」
チト「こっちは神を恨むわ。たまたまにしては最悪よ」いらぷん
ロリニア「チシャノ、何作る?」
チシャノ「んー。サラダかな」
チト「ここは菓子屋よ」じとー
カナリィ「二人は、今朝カナリィが作ったお菓子を、笑顔を添えて売ってください」
ロリニア「それって、笑顔を添えたらお客さんも笑顔になるってことで、それはみんな嬉しいからで、つまり誰もが幸せってことだ」
チシャノ「ね!」
チト「不安しかねえ……」ぼそっ
カナリィ「それでは皆さん、今日一日よろしくお願いいたします!みんなで頑張りましょう!」
チシャノ「ねー!」
ロリニア「頑張っていっぱいお菓子食べるぞー!」
チト「頼むから売り物を食うなよ」かたぽん
さて、チシャノとロリニアに接客を任せたチトとカナリィの二人は、地下室へと降りました。
地下室はとても心地よく、三つほど縦に積まれた木箱が、めいめいきちんと並べられていました。
チト「あら、すごく涼しい」すずやかー
カナリィ「真ん中に噴水を用意して、水路を壁に沿って作ることで、この地下室を常に涼しくしているんですよ」
チト「それで、いつでもチョコレート菓子が売れるってわけね」
カナリィ「はい!」
チト「このミルクはカナリィとこの?」
カナリィ「そうです。とても濃厚なミルクチョコになるんですよ」
カナリィはうっとりした表情でそう言いました。
チトは、ハッとなって、口から垂れるヨダレを拭きました。
チト「さっさと作りましょう!どんどんいっぱい!」きらきら
カナリィ「はい!」きらきら
一方。
ロリニア「笑顔ってどうやって添えるんだあああああ!」がくぶる!
チシャノ「か、紙に、にこにこ描くんだね!」あせあせ
ロリニア「それだ!」にっこるん!
ココ「大変なことになってる……」びくびく
マーゴ「だから来るの嫌だったのよ……」
ロリニア「紙がない、ああ駄目だあ」
チシャノ「どうしよう。困ったね」
それを調理場にて複雑な面持ちで聞くチトとカナリィ。
チト「はあ……言わんこっちゃねえ」
カナリィ「ちょっといってきます」たたっ
カナリィは急いで二人のもとへ駆けつけると、優しく二人に伝えました。
カナリィ「笑顔を添えるというのは、相手のことを想って、にっこりと笑えばいいのです!」にっこり!
ロリニア「そういうことか!」にっこるん!
カナリィ「そうです!」ぱちぱち!
カナリィの拍手に合わせて、店の外まで溢れるお客さん達からも大きな拍手が起こりました。
チシャノ「笑顔ってすごいんだね……!」かんどー
カナリィ「笑顔は幸せのおまじないですよ!」うぃんく!
チシャノ「おまじない……あ」
ココ「しっー!」
チシャノ「そっか」
マーゴが前に出てカナリィに言います。
マーゴ「あんたの言う通り。笑顔は幸せのおまじない、誰にでも使える、一番かんたんなおまじないよ」
チシャノ「私にもできる?」
マーゴ「もちろん」
チシャノ「んふふ!」にこっ!
そこから笑顔が、そよ風のように流れ、お店の外にまで広がりました。
マーゴ「いいお店ね。頑張りなさい」
カナリィ「はい!ありがとうございます!」ぺこり
チト「ちょっとカナリィ。お菓子作りどうするのよ」
カナリィ「ごめんなさいチト!カナリィは今から笑顔を配ります!」
チト「何、ふきこんだの」じー
マーゴ「何で、あたしのせいにするの」じー
ココ「僕が手伝うよ!」
チト「ありがとう、ココ!お姉ちゃんは誇らしい!」
カナリィ「ココくんなら、任せて安心ですね。お願いできますか?」
ココ「うん!任せてよ!」
マーゴ「仕様のない。じゃ、あたしも」
チト「あっち向いて帰れ」
マーゴ「あんたねえ!」
カナリィ「あの、失礼ですがあなたは?」
マーゴ「マーゴフェレーナ。二人の尊敬するお婆ちゃんよ」
チト「ちっ、嘘つくなし」
カナリィ「お婆様」
マーゴ「マーゴさんでいいわよ」
カナリィ「マーゴさん、あなたにも、お願いしてもよろしいのですか?」
マーゴ「もちろんよ。あたし、お菓子作りは得意なの」
チト「かまどに転んで改めて灰になれ」
カナリィ「チト!さっきからいけませんよ!」
チト「ごめんなさい……」しゅん
マーゴ「あんた、この子には頭が上がらないようねえ」にやにや
チト「あなたと違って、本当に尊敬するからね」
カナリィ「え?」
チト「なんでもないし!ほら、二人ともやるよ!」すたすた
ココ「はーい!」ととっ
ロリニア「カナリィ助けて!かなり人が多いんだ!」
チシャノ「くらくらするんだね……」ふらー
カナリィ「頑張ってください!笑顔はいつまでも、曇りない空の太陽のように、ですよ!」にっこり!
誰もがほのかに思い初めるほど、カナリィの笑顔は朗らかに晴れやかなのでしたとさ。
カナリィのお家は従兄弟のお兄様のおかげで、お菓子屋さんを開くことになりました。
そのある日。
チト、チシャノ、ロリニアの三人がお店のお手伝いをします。
カナリィカトリネルエは、グリム童話の『美人のカトリネルエ』より生まれたキャラクターです。
ฅ•ﻌ•ฅ
レンガの建物が美しい町に、それよりも心が美しいカナリィカトリネルエという少女がおります。
彼女は、町一番、汚れなく純粋な正直者と、みんなにこよなく愛されています。
ところが、なかには心があまり美しくない人達もいて、彼らはカナリィの性格を利用し、彼女をよく騙しました。
そうして借金を幾らか背負ってしまったカナリィなのですが、それでも愛されていた為にいつも幸せでした。
しばらくして、いよいよ借金の額が牛さんのお乳くらいに膨らんだ頃。
カナリィの従兄弟であるナリキンが彼女をたいへん世話してくれました。
おかげで、彼女はすっかり借金から解放されました。
そこでナリキンは、可愛いカナリィが二度と騙されぬよう、このように言いつけました。
ナリキン「カナリィ、お前は菓子屋を始めるのだ」
カナリィ「まあ、お菓子屋さんを?」
ナリキン「お前の親とは話をつけた。共に働くといいのだ。心配しなくとも必ず儲かるのだ」
カナリィ「ところで、突然どうしてこのようなご親切を?もしかしてカナリィ、お兄様にまた何かご迷惑を」
ナリキン「一人で売り買いするから騙される。だから常に誰かと一緒にいるといいのだ。何より箒も売れない掃除も頼まれないし、良い機会なのだ」
カナリィ「そうですか。わかりました。カナリィちからいっぱい頑張ります!」よーし!
こうして、町にチョコレート菓子をオススメにした。
『ポンポン・チョコラティエ』
というお菓子屋さんがオープンしました。
物珍しさもありましたが、何よりカナリィの愛嬌に惹かれて、たくさんのお客さんが訪れるようになりました。
そんな盛況の毎日のいつか。
カナリィの両親が隣町へと商談に向かうということで、この日、カナリィがお店を任されることになりました。
もちろん、一人では心配なのでお友だちに声を掛けました。
チシャノ「エプロン、よく分からないんだね」
ロリニア「こうだ」ぐちゃぐちゃ
チト「あーあ。余計にこんがらがったじゃない」
ロリニア「そうなんだ」
チト「たかだか紐を結ぶくらいで馬鹿らしいわ」きゅっ
チシャノ「わあ!ありがとうなんだね!」
チシャノはその場でくるりと一回転して、嬉しそうにエプロンを翻しました。
ロリニアも真似して、つまずいて、調理器具を見事にとっちらかしました。
チト「クソったれ!大人しくしやがれ!」きゅっ
ロリニア「おお、こう結ぶのか。ありがとう」
カナリィ「チトが今日いてくれて、本当に助かります」
チト「こっちは神を恨むわ。たまたまにしては最悪よ」いらぷん
ロリニア「チシャノ、何作る?」
チシャノ「んー。サラダかな」
チト「ここは菓子屋よ」じとー
カナリィ「二人は、今朝カナリィが作ったお菓子を、笑顔を添えて売ってください」
ロリニア「それって、笑顔を添えたらお客さんも笑顔になるってことで、それはみんな嬉しいからで、つまり誰もが幸せってことだ」
チシャノ「ね!」
チト「不安しかねえ……」ぼそっ
カナリィ「それでは皆さん、今日一日よろしくお願いいたします!みんなで頑張りましょう!」
チシャノ「ねー!」
ロリニア「頑張っていっぱいお菓子食べるぞー!」
チト「頼むから売り物を食うなよ」かたぽん
さて、チシャノとロリニアに接客を任せたチトとカナリィの二人は、地下室へと降りました。
地下室はとても心地よく、三つほど縦に積まれた木箱が、めいめいきちんと並べられていました。
チト「あら、すごく涼しい」すずやかー
カナリィ「真ん中に噴水を用意して、水路を壁に沿って作ることで、この地下室を常に涼しくしているんですよ」
チト「それで、いつでもチョコレート菓子が売れるってわけね」
カナリィ「はい!」
チト「このミルクはカナリィとこの?」
カナリィ「そうです。とても濃厚なミルクチョコになるんですよ」
カナリィはうっとりした表情でそう言いました。
チトは、ハッとなって、口から垂れるヨダレを拭きました。
チト「さっさと作りましょう!どんどんいっぱい!」きらきら
カナリィ「はい!」きらきら
一方。
ロリニア「笑顔ってどうやって添えるんだあああああ!」がくぶる!
チシャノ「か、紙に、にこにこ描くんだね!」あせあせ
ロリニア「それだ!」にっこるん!
ココ「大変なことになってる……」びくびく
マーゴ「だから来るの嫌だったのよ……」
ロリニア「紙がない、ああ駄目だあ」
チシャノ「どうしよう。困ったね」
それを調理場にて複雑な面持ちで聞くチトとカナリィ。
チト「はあ……言わんこっちゃねえ」
カナリィ「ちょっといってきます」たたっ
カナリィは急いで二人のもとへ駆けつけると、優しく二人に伝えました。
カナリィ「笑顔を添えるというのは、相手のことを想って、にっこりと笑えばいいのです!」にっこり!
ロリニア「そういうことか!」にっこるん!
カナリィ「そうです!」ぱちぱち!
カナリィの拍手に合わせて、店の外まで溢れるお客さん達からも大きな拍手が起こりました。
チシャノ「笑顔ってすごいんだね……!」かんどー
カナリィ「笑顔は幸せのおまじないですよ!」うぃんく!
チシャノ「おまじない……あ」
ココ「しっー!」
チシャノ「そっか」
マーゴが前に出てカナリィに言います。
マーゴ「あんたの言う通り。笑顔は幸せのおまじない、誰にでも使える、一番かんたんなおまじないよ」
チシャノ「私にもできる?」
マーゴ「もちろん」
チシャノ「んふふ!」にこっ!
そこから笑顔が、そよ風のように流れ、お店の外にまで広がりました。
マーゴ「いいお店ね。頑張りなさい」
カナリィ「はい!ありがとうございます!」ぺこり
チト「ちょっとカナリィ。お菓子作りどうするのよ」
カナリィ「ごめんなさいチト!カナリィは今から笑顔を配ります!」
チト「何、ふきこんだの」じー
マーゴ「何で、あたしのせいにするの」じー
ココ「僕が手伝うよ!」
チト「ありがとう、ココ!お姉ちゃんは誇らしい!」
カナリィ「ココくんなら、任せて安心ですね。お願いできますか?」
ココ「うん!任せてよ!」
マーゴ「仕様のない。じゃ、あたしも」
チト「あっち向いて帰れ」
マーゴ「あんたねえ!」
カナリィ「あの、失礼ですがあなたは?」
マーゴ「マーゴフェレーナ。二人の尊敬するお婆ちゃんよ」
チト「ちっ、嘘つくなし」
カナリィ「お婆様」
マーゴ「マーゴさんでいいわよ」
カナリィ「マーゴさん、あなたにも、お願いしてもよろしいのですか?」
マーゴ「もちろんよ。あたし、お菓子作りは得意なの」
チト「かまどに転んで改めて灰になれ」
カナリィ「チト!さっきからいけませんよ!」
チト「ごめんなさい……」しゅん
マーゴ「あんた、この子には頭が上がらないようねえ」にやにや
チト「あなたと違って、本当に尊敬するからね」
カナリィ「え?」
チト「なんでもないし!ほら、二人ともやるよ!」すたすた
ココ「はーい!」ととっ
ロリニア「カナリィ助けて!かなり人が多いんだ!」
チシャノ「くらくらするんだね……」ふらー
カナリィ「頑張ってください!笑顔はいつまでも、曇りない空の太陽のように、ですよ!」にっこり!
誰もがほのかに思い初めるほど、カナリィの笑顔は朗らかに晴れやかなのでしたとさ。
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