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帰りたくねえよ!

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明くる朝。
ココは友達に呼ばれて、ある噴水の前に向かいました。

ココ「お待たせ!」

オカユ「ココ!」ぎゅ

ココ「どうしたの」

オカユ「ココとチトとバイバイなんて、オカユやだ!」

オコゲ「二人は今夜、この町を発つんだろう」

ココ「うん」

リート「寂しくなるね」

オカユ「やだー……」ぎゅう

ココ「…………」なでなで

リート「でも、暗い顔なんてしないよ!」

ココ「ぼ!僕だって!」

オコゲ「また、遊びにでも帰ってくればいいさ!」

オカユ「ココ、帰ってくる?」

ココ「うん、きっと帰って来るよ!」

オカユ「本当に?」

ココ「本当さ」

オコゲ「ココ。これを受け取って」はい

ココ「わあ!素敵な羽ペン!」

オコゲ「それは僕達二人で作った!」

オカユ「お守りだよ!」

ココ「ありがとう、大切にするよ」

リート「私からも」

リートは、ココの頬に優しくキスしました。

ココ「え……ええ!」びっくり!

リート「何、どうしたの?」くびかしげ

ココ「う、ううん」てれ

リート「それと、はい!」

リートは、羊毛で丁寧に作ったオオカミの人形を、ココの手に握らせました。

オカユ「どうしてオオカミ?」

リート「忘れられない思い出だから」

ココ「……」じとー

リート「私たちのことも、忘れませんように。それを見て、私達のことを思い出してね!」

オコゲ「そういうことか」

ココ「ありがとう。ずっと忘れないよ……」ぐすっ

リート「泣くな泣くなよ!ほら、日が沈むまで、めいいっぱい遊ぼう!」

オカユ「遊ぼー!」

ココ「うん!」

リート「じゃ、今日はまた森に」

ココ、オコゲ「それは嫌だ!」

リート「……」ぷくー

その頃。
チトは買い物を終えて、家に帰り着きました。

チシャノ「や」てをふりふり

チト「また……」じとー

チシャノ「おかえりだね」

チト「どうやって鍵開けたのよ」

チシャノ「そっか」

チト「…………」じとー

チシャノ「これ読む?」

チト「読みません。で、何しに来たわけ?」

チシャノ「プレゼントがあるんだね。モミの木のハチミツと」ごと

チト「一つぼも貰っていいの?」

チシャノ「パセリだね」どさ

チト「それを、そんな山盛り……ん?何かいい匂いが」くんくん

カナリィ「チシャノ!見て下さい!」たたっ

チト「カナリィ」

カナリィ「あ!チト、お帰りなさい!」

チト「あなたまで勝手に……勝手に何作ってるのよ」

カナリィ「パセリの卵焼きです!」じゃじゃーん!

チシャノ「わあ!ハートなんだね!」

カナリィ「切り分けた卵焼きを、またナナメに半分に切って、その片方をひっくり返してもう片方と繋げると、こんな風にハートになるんですよ!」ふふん

ロリニア「わーお!とーっても!美味しそーだー!」

チト「うるさい!どこから叫んでるのよ!」

ロリニア「ここだ」ひょこ

チト「とっとと入れ!」

ロリニア「はーい」ととと

カナリィ「ロリニア、どうぞ召し上がれ!」はい

ロリニア「んー!パセリってうまいんだー!」きらきら

チシャノ「新鮮だからね」

カナリィ「カナリィの卵も、今朝採ったものですよ!」

チト「はあ……もう仕方ない。みんなで、お昼にしましょう」

ロリニア「それって、そのハチミツをパンに塗って食べていいってことで、その為にパンを買いに行かせるってことで、つまりパセリ……じゃなくてパシリだ!」びくびく

チト「その前に。その手に持ってる袋は何?」

ロリニア「そうだ。村のみんなから、パンを集めたんだ」

チシャノ「ロリニアちゃんもね、プレゼントなんだね」

ロリニア「そうなんだ!はい、チト!」がさっ

チト「私……あなたのこと、勘違いしていたみたいね」ふふっ

昼食後。

チト「勘違いは勘違いだったわ」ふっ

カナリィ「パン、なくなっちゃいましたね」

ロリニア「それってつまり、おうっ、ワタクシは自分勝手だってことで、うぷっ、許されないってことで、えほっ、つまり有罪で……あ、死ななきゃ」ふら…

チト「今回だけ特別に、無罪にしてあげる」

ロリニア「それは良かった!」にっこるん!

チト「この馬鹿ともお別れか……」

カナリィ「チト」

チト「何?」

カナリィ「カナリィからもプレゼントです」はい

チト「この手袋、もしかして手編み?」

カナリィ「はい。もうすぐ雪が降りますから、編んでみました」

チト「そう。助かるわ!」

カナリィ「喜んでもらえて、何よりです!」にこっ

チト「……帰りたくない」ぼそっ

カナリィ「チト?」

チト「私、帰りたくない!」

ロリニア「それって」

チト「だって金稼ぎに困るもの!薪を寂れた村に安く売りに行く、あの生活に戻りたくない……!」しゅん

ロリニア「ワタクシの村に来るといい。遠いと思うけど、来たらワタクシが、どこより、必ず高く買ってあげるんだ」

チト「ロリニア」

ロリニア「それって必ず来いってことだ!つまり約束だー!」たたた!

ロリニアはそう叫んで、チトの家を走って出ていきました。

チシャノ「ロリニアちゃん。きっと寂しいんだね、我慢してたの」

カナリィ「私達も、チトも同じ思いです。そうでしょう」

チト「寂しくなんてないし」

カナリィ「どうして?」

チト「寂しいと思うと悲しくなるから。私は何があっても、寂しいだなんて思わない」

チシャノ「そっか」

カナリィ「……うぅ」ぐすっ

チト「カナリィ」

カナリィ「どんなに迷っても、会いに行きますから!必ず!必ず!必ずです!」ぐすっ

チト「うん、待ってるわ」

カナリィ「それまでお元気で!」

カナリィは涙を見せまいと、顔を隠して帰って行きました。

チト「…………」

チシャノ「…………」

チト「チシャノ」

チシャノ「ん?」

チト「今度、遊びに行っていい?」

チシャノ「もちろんだね」

チト「そう」

チシャノ「……行くね」すくっ

チト「うん」

チシャノ「…………」とぼとぼ

チト「っ!チシャノ!」

チトは、強くチシャノを抱き締めました。

チシャノ「チトちゃん……」

チト「あなたと友達になれて、本当に良かった」

チシャノ「私と同じだね」

チト「そっか……」ほっ

チシャノ「ん!これからも友達なんだね!」にこー!

チト「だね!」にこー!

そうして、笑顔でチシャノと別れ、チトは一人になりました。

チト「魔女に出会って、この町に辿り着いて、たくさんの人に巡り会って、色んな出来事があって、悪い人に追われて」

チトは、おもむろに一冊の本を手に取ります。

チト「これじゃまるで、メルヘンじゃない」

適当なページをめくると、お菓子の家というお話がありました。

チト「お菓子の家か。あれ、美味しかったなあ……」

さて。
夜になり、チトは二階に上がって言いました。

チト「さあ!荷物を荷車に積み終えたし、そろそろ行くよ!」

ココ「うん」

チト「大好きな家に帰るのよ、元気出しなさい」

ココ「ここも、大好きな家だよ」

チト「……そうだね。この家も町も大好き」

ココ「だから、また、帰って来ようね。今度は家族みんなで」

チト「うん。それが理想ね」

カフェ「ちょっと。何か油臭いわ……それに」くんくん

チト「急に何言い出すの」

カフェ「しまった!囲まれた!」

その時、窓を割って家の中へ。
石を包んだ、燃える布が投げ込まれましたとさ。

続け!
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