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優しさなんて捨てちまえ!
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チトが疲れて、いつもより早く、ぐっすりと眠った夜のこと。
その隣で、ココは熱心に夢中に、あるお話を読んでいました。
カフェ「あんた寝ないの?」
ココ「このお話を見て」
カフェ「どれ」
ある娘が、悪魔に騙され取引を行った父によって、両手を切りとることになりました。
悪魔はその娘を手に入れようと謀ったのですが、娘は信心深い子でしたので、結局、流した涙に清められた腕に触れることが出来ず、悪魔は娘を手に入れることが叶いませんでした。
それを嬉しくも嘆いた父は、悪魔から受け取った財宝で、これから一生、何の不自由もなくしてあげることを娘に誓いました。
けれど娘は。
もうこの家にはいられないわ。
必要とするものは、情け深い人が恵んでくれるでしょう。
と言いました。
そして、手のない腕を背中で縛ってもらい、家を出ました。
それから、ある王様の庭に迷いこみ、天使に導かれたことをきっかけに、優しい王様に愛されお妃となって、銀の手を貰いました。
ところが。
お妃が美しい男の子を産んだ時、あの悪魔が仕返しにやってきました。
王様達を巧みに騙し、二人の命を奪おうとします。
そこで神に使わされた天使が、お妃と息子を深い森の中の小屋へと隠し、長い間お世話しました。
そして神様のお恵みによって、お妃の切りとられた手は、すっかり元のように伸びました。
さて。
仕返しに失敗した悪魔はたいそう憤りましたが、そこに、あの父が現れました。
毎日かかさず深く反省した父は、神様のお恵みによって、悪魔と戦う力を与えられたのです。
壁ドン、股ドン、腹ドン、フルコンボダドン。
それによって悪魔に楽勝した父は、お妃と息子を失い悲しむ王様のもとへ行き、深い森の中の小屋へと案内すると、王様にも、娘であるお妃にも、自身の正体を明かすことなく立ち去りました。
銀の手をしていないお妃と成長した息子と再開した王様は、かなりパニくりましたが、天使が銀の手を持って来たことで、愛するお妃であると確信しました。
で、お城に帰って死ぬまでハッピー。
カフェ「長いくどいウザイ。で?」
ココ「僕の左手、指が四本しかないんだ」
カフェ「その親指、あたしが食べたっけ?」
ココ「違います」
カフェ「そう」
ココ「左手の親指は、生まれた時からないの」
カフェ「それで?」
ココ「神様が生やしてくれないかな、て」
カフェ「お馬鹿さん。これはメルヘンよ」
チト「メルヘンなんてクソくらえ!」ばしっ!
カフェ「ふにゃ!」
チト「ん~……」むにゃむにゃ
カフェ「あんた起きてるでしょう?ねえ、そうでしょう?」むかつき
ココ「寝てるよ。ほら」ほっぺつんつん
ぺちん!
ココ「痛い……」うるうる
カフェ「椅子に移動しましょうか」
ココ「うん……」
木製の椅子の上にココが座り、その膝の上に、カフェがちょこんと乗りました。
ココ「神様っているのかな?」
カフェ「疑ってるじゃない」くすくす
ココ「ち、違うよ!神様はいるよ!」
カフェ「でも、生えてこないねえ」
ココ「カフェってば、本当に意地悪だね」
カフェ「そう。あたしゃあ、意地悪な悪い猫さ」しっぽふりふり
ココ「えい」しっぽつかみ
カフェ「こら!離しなさい!」
ココ「ねえ。僕におまじないをかけてよ」
カフェ「え?」
ココ「お願い」
カフェ「そんなことしてみなさい。また、かまどで焼かれることになるじゃない」
ココ「お姉ちゃんには、僕から説得するよ」
カフェ「どうして、そこまで親指を生やしたいの?不便なの?」
ココ「うん。だから、親指を生やして、お姉ちゃんのお手伝いをもっと頑張りたいんだ!」
カフェ「…………」
ココ「だめ?」
カフェ「うー……にゃー……」むむむ
ココ「あ、嫌ならそれでいいんだよ」
カフェ「嫌?」
ココ「カフェは僕達のこと、嫌いでしょう」
カフェ「それはお互い様」
ココ「僕は!僕は……」
カフェ「言いたいことがあるなら、はっきり言って結構よ」
ココ「苦手!そうだ、苦手なんだよ」
カフェ「そうきましたか」
ココ「うん。嫌いじゃなくて、苦手だよ」
カフェ「じゃあ、どちらにせよ。おまじないはかけられないわね」
ココ「ええ!どうして!」
カフェ「あたしは。自分のことを嫌いだの苦手だのと思う人に、おまじないをかけてあげるほど、お人好しじゃないわ」
ココ「そっか……。わかった、仕方ないね」
カフェは、するりとココの膝から降りて言います。
カフェ「さ、そろそろ寝なさい。夜ふかしすると悪魔が来るわよ」がおー
ココ「魔女がいるから平気さ」
カフェ「今はただの猫よ」
ココ「身代わりにするの」
ココは、そう意地悪に返してアクビをひとつすると、チトの隣に並んで横になりました。
カフェ「その言葉、チトに教わったわね」
ココ「忘れたの?カフェに教わったんだよ」ねむねむ
カフェ「そうだっけ?」
ココ「おやすみ……」すや…
カフェは、ベッド脇にあるロウソクの火を、ふっ、と吹き消しました。
そしてココの左手を、ジッーと見つめるのでした。
続け!
その隣で、ココは熱心に夢中に、あるお話を読んでいました。
カフェ「あんた寝ないの?」
ココ「このお話を見て」
カフェ「どれ」
ある娘が、悪魔に騙され取引を行った父によって、両手を切りとることになりました。
悪魔はその娘を手に入れようと謀ったのですが、娘は信心深い子でしたので、結局、流した涙に清められた腕に触れることが出来ず、悪魔は娘を手に入れることが叶いませんでした。
それを嬉しくも嘆いた父は、悪魔から受け取った財宝で、これから一生、何の不自由もなくしてあげることを娘に誓いました。
けれど娘は。
もうこの家にはいられないわ。
必要とするものは、情け深い人が恵んでくれるでしょう。
と言いました。
そして、手のない腕を背中で縛ってもらい、家を出ました。
それから、ある王様の庭に迷いこみ、天使に導かれたことをきっかけに、優しい王様に愛されお妃となって、銀の手を貰いました。
ところが。
お妃が美しい男の子を産んだ時、あの悪魔が仕返しにやってきました。
王様達を巧みに騙し、二人の命を奪おうとします。
そこで神に使わされた天使が、お妃と息子を深い森の中の小屋へと隠し、長い間お世話しました。
そして神様のお恵みによって、お妃の切りとられた手は、すっかり元のように伸びました。
さて。
仕返しに失敗した悪魔はたいそう憤りましたが、そこに、あの父が現れました。
毎日かかさず深く反省した父は、神様のお恵みによって、悪魔と戦う力を与えられたのです。
壁ドン、股ドン、腹ドン、フルコンボダドン。
それによって悪魔に楽勝した父は、お妃と息子を失い悲しむ王様のもとへ行き、深い森の中の小屋へと案内すると、王様にも、娘であるお妃にも、自身の正体を明かすことなく立ち去りました。
銀の手をしていないお妃と成長した息子と再開した王様は、かなりパニくりましたが、天使が銀の手を持って来たことで、愛するお妃であると確信しました。
で、お城に帰って死ぬまでハッピー。
カフェ「長いくどいウザイ。で?」
ココ「僕の左手、指が四本しかないんだ」
カフェ「その親指、あたしが食べたっけ?」
ココ「違います」
カフェ「そう」
ココ「左手の親指は、生まれた時からないの」
カフェ「それで?」
ココ「神様が生やしてくれないかな、て」
カフェ「お馬鹿さん。これはメルヘンよ」
チト「メルヘンなんてクソくらえ!」ばしっ!
カフェ「ふにゃ!」
チト「ん~……」むにゃむにゃ
カフェ「あんた起きてるでしょう?ねえ、そうでしょう?」むかつき
ココ「寝てるよ。ほら」ほっぺつんつん
ぺちん!
ココ「痛い……」うるうる
カフェ「椅子に移動しましょうか」
ココ「うん……」
木製の椅子の上にココが座り、その膝の上に、カフェがちょこんと乗りました。
ココ「神様っているのかな?」
カフェ「疑ってるじゃない」くすくす
ココ「ち、違うよ!神様はいるよ!」
カフェ「でも、生えてこないねえ」
ココ「カフェってば、本当に意地悪だね」
カフェ「そう。あたしゃあ、意地悪な悪い猫さ」しっぽふりふり
ココ「えい」しっぽつかみ
カフェ「こら!離しなさい!」
ココ「ねえ。僕におまじないをかけてよ」
カフェ「え?」
ココ「お願い」
カフェ「そんなことしてみなさい。また、かまどで焼かれることになるじゃない」
ココ「お姉ちゃんには、僕から説得するよ」
カフェ「どうして、そこまで親指を生やしたいの?不便なの?」
ココ「うん。だから、親指を生やして、お姉ちゃんのお手伝いをもっと頑張りたいんだ!」
カフェ「…………」
ココ「だめ?」
カフェ「うー……にゃー……」むむむ
ココ「あ、嫌ならそれでいいんだよ」
カフェ「嫌?」
ココ「カフェは僕達のこと、嫌いでしょう」
カフェ「それはお互い様」
ココ「僕は!僕は……」
カフェ「言いたいことがあるなら、はっきり言って結構よ」
ココ「苦手!そうだ、苦手なんだよ」
カフェ「そうきましたか」
ココ「うん。嫌いじゃなくて、苦手だよ」
カフェ「じゃあ、どちらにせよ。おまじないはかけられないわね」
ココ「ええ!どうして!」
カフェ「あたしは。自分のことを嫌いだの苦手だのと思う人に、おまじないをかけてあげるほど、お人好しじゃないわ」
ココ「そっか……。わかった、仕方ないね」
カフェは、するりとココの膝から降りて言います。
カフェ「さ、そろそろ寝なさい。夜ふかしすると悪魔が来るわよ」がおー
ココ「魔女がいるから平気さ」
カフェ「今はただの猫よ」
ココ「身代わりにするの」
ココは、そう意地悪に返してアクビをひとつすると、チトの隣に並んで横になりました。
カフェ「その言葉、チトに教わったわね」
ココ「忘れたの?カフェに教わったんだよ」ねむねむ
カフェ「そうだっけ?」
ココ「おやすみ……」すや…
カフェは、ベッド脇にあるロウソクの火を、ふっ、と吹き消しました。
そしてココの左手を、ジッーと見つめるのでした。
続け!
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