1 / 17
運命の出会い
しおりを挟む
遠いどこかの都会で生まれた彼は、生まれつき難病を患っていました。
それは技術の発達した現代医療でも治療するのが不可能な病気でした。
彼は少しずつ体の自由、風景、音、世界を失いました。
それでも最後まで立派に闘って、彼は家族に囲まれて穏やかに眠りました。
クレイド・フォーエバー
彼との出会いは幼い頃になります。
静養のため、彼は両親と共に私の暮らす小さな島へと移り住みました。
山に沿ってなだらかに続く町の上、たくさんの花が咲き溢れる原っぱに建つ家で彼ら一家は暮らしていました。
幼い私は好奇心がとても旺盛で、新しく子供が越して来たぞという話を聞いてすぐに飛んで向かいました。
原っぱに立つ私は、一本の木の傍らに開けた窓を見つけます。
私はそこへ駆けて、背伸びをしながら無邪気に顔を出しました。
幼い彼はベッドの上に座っていたのですが、とても驚いたまま固まってしまいました。
「私はアレッタ。はじめまして」
挨拶をして、うんと手を伸ばしてみましたがうまく届きません。
はっと正気に戻った彼は、私の手をそっと優しく握ってくれました。
「僕はクレイド。はじめまして」
とても小声だったので、大きな声でもう一度、と大きな声でお願いすると、何事かと彼のお母さんが部屋にやって来ました。
彼のお母さんは喜んで私を歓迎してくれました。
部屋に招待されて、私たちは二人でお茶会をしました。
この島はいいところだよ、町には優しい人がたくさんいるよ、そんなありふれた紹介を彼は楽しそうに聞いてくれました。
次に彼が病気について話したので私は。
「お外で遊ぶことはできないの」
と問いかけました。
それに対して彼は。
「少しだけなら」
と答えたので、私はそのまま彼の手を引いて原っぱへと走りました。
この時の彼はまだ走ることが出来ました。
すぐに疲れてしまったけれど、その度に休憩を挟んで、また何度も走りました。
すっかりクレイドがくたくたになって、ようやく私は家に帰りました。
今では無茶に振り回したことを反省しています、ごめんね。
それから私たちはよく遊ぶようになりました。
といっても、一方的に私が押し掛ける形になります。
彼のお父さんが作ってくれたブランコに二人で乗ったのが特に楽しい思い出です。
たくさんお茶会というおしゃべりもしました。
私が女の子に彼が男の子に成長すると、私は学校に通うようになって、彼と遊ぶ時間がいくらか減るようになりました。
彼は後に、少し寂しかったと白状しました。
これもごめんね。
そしてこの頃です。
私が図書館で本を借りて、彼の家でそれを一緒に読むようになりました。
特に神話や民話、なにより冒険物をよく読みました。
彼も私と同じで好奇心が旺盛だったのです。
いつからになるでしょう。
私たちは二人だけの世界を描き始めました。
少女を世界を守る、星飾りの騎士の物語です。
それは技術の発達した現代医療でも治療するのが不可能な病気でした。
彼は少しずつ体の自由、風景、音、世界を失いました。
それでも最後まで立派に闘って、彼は家族に囲まれて穏やかに眠りました。
クレイド・フォーエバー
彼との出会いは幼い頃になります。
静養のため、彼は両親と共に私の暮らす小さな島へと移り住みました。
山に沿ってなだらかに続く町の上、たくさんの花が咲き溢れる原っぱに建つ家で彼ら一家は暮らしていました。
幼い私は好奇心がとても旺盛で、新しく子供が越して来たぞという話を聞いてすぐに飛んで向かいました。
原っぱに立つ私は、一本の木の傍らに開けた窓を見つけます。
私はそこへ駆けて、背伸びをしながら無邪気に顔を出しました。
幼い彼はベッドの上に座っていたのですが、とても驚いたまま固まってしまいました。
「私はアレッタ。はじめまして」
挨拶をして、うんと手を伸ばしてみましたがうまく届きません。
はっと正気に戻った彼は、私の手をそっと優しく握ってくれました。
「僕はクレイド。はじめまして」
とても小声だったので、大きな声でもう一度、と大きな声でお願いすると、何事かと彼のお母さんが部屋にやって来ました。
彼のお母さんは喜んで私を歓迎してくれました。
部屋に招待されて、私たちは二人でお茶会をしました。
この島はいいところだよ、町には優しい人がたくさんいるよ、そんなありふれた紹介を彼は楽しそうに聞いてくれました。
次に彼が病気について話したので私は。
「お外で遊ぶことはできないの」
と問いかけました。
それに対して彼は。
「少しだけなら」
と答えたので、私はそのまま彼の手を引いて原っぱへと走りました。
この時の彼はまだ走ることが出来ました。
すぐに疲れてしまったけれど、その度に休憩を挟んで、また何度も走りました。
すっかりクレイドがくたくたになって、ようやく私は家に帰りました。
今では無茶に振り回したことを反省しています、ごめんね。
それから私たちはよく遊ぶようになりました。
といっても、一方的に私が押し掛ける形になります。
彼のお父さんが作ってくれたブランコに二人で乗ったのが特に楽しい思い出です。
たくさんお茶会というおしゃべりもしました。
私が女の子に彼が男の子に成長すると、私は学校に通うようになって、彼と遊ぶ時間がいくらか減るようになりました。
彼は後に、少し寂しかったと白状しました。
これもごめんね。
そしてこの頃です。
私が図書館で本を借りて、彼の家でそれを一緒に読むようになりました。
特に神話や民話、なにより冒険物をよく読みました。
彼も私と同じで好奇心が旺盛だったのです。
いつからになるでしょう。
私たちは二人だけの世界を描き始めました。
少女を世界を守る、星飾りの騎士の物語です。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-
星井柚乃(旧名:星里有乃)
ファンタジー
旧タイトル『美少女ハーレムRPGの勇者に異世界転生したけど俺、女アレルギーなんだよね。』『アースプラネットクロニクル』
高校生の結崎イクトは、人気スマホRPG『蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-』のハーレム勇者として異世界転生してしまう。だが、イクトは女アレルギーという呪われし体質だ。しかも、与えられたチートスキルは女にモテまくる『モテチート』だった。
* 挿絵も作者本人が描いております。
* 2019年12月15日、作品完結しました。ありがとうございました。2019年12月22日時点で完結後のシークレットストーリーも更新済みです。
* 2019年12月22日投稿の同シリーズ後日談短編『元ハーレム勇者のおっさんですがSSランクなのにギルドから追放されました〜運命はオレを美少女ハーレムから解放してくれないようです〜』が最終話後の話とも取れますが、双方独立作品になるようにしたいと思っています。興味のある方は、投稿済みのそちらの作品もご覧になってください。最終話の展開でこのシリーズはラストと捉えていただいてもいいですし、読者様の好みで判断していただだけるようにする予定です。
この作品は小説家になろうにも投稿しております。カクヨムには第一部のみ投稿済みです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【禁術の魔法】騎士団試験から始まるバトルファンタジー
浜風 帆
ファンタジー
辺境の地からやって来たレイ。まだ少し幼なさの残る顔立ちながら、鍛え上げられた体と身のこなしからは剣術を修練して来た者の姿勢が窺えた。要塞都市シエンナにある国境の街道を守る騎士団。そのシエンナ騎士団に入るため、ここ要塞都市シエンナまでやってきたのだが、そこには入団試験があり……
ハイファンタジー X バトルアクション X 恋愛 X ヒューマンドラマ
第5章完結です。
是非、おすすめ登録を。
応援いただけると嬉しいです。
祝福の居場所
もつる
ファンタジー
動植物を怪物に変える、呪わしい<瘴気>が古代科学文明を滅ぼして数千年。人類は瘴気に怯えながら細々と暮らしていた。マーシャとジェラの暮らす小さな村もそのひとつだ。だが兄妹はある日、自らに瘴気への耐性があることを知る。その謎を解明するため、二人は古代文明の遺産に触れるが、古代文明はまだ存続し地上奪還を目論んでいた。祝福の因子を持つ兄妹に、怪物が、怪人が、空飛ぶ巨大戦艦が迫り、そしてかれらも知らない過去の因縁が襲いかかる――。
◇
Pixivで掲載していたオリジナル小説の改稿版です。
2022/08/23 『BLESSED VANQUISH』から改題しました。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
竜焔の騎士
時雨青葉
ファンタジー
―――竜血剣《焔乱舞》。それは、ドラゴンと人間にかつてあった絆の証……
これは、人間とドラゴンの二種族が栄える世界で起こった一つの物語―――
田舎町の孤児院で暮らすキリハはある日、しゃべるぬいぐるみのフールと出会う。
会うなり目を輝かせたフールが取り出したのは―――サイコロ?
マイペースな彼についていけないキリハだったが、彼との出会いがキリハの人生を大きく変える。
「フールに、選ばれたのでしょう?」
突然訪ねてきた彼女が告げた言葉の意味とは――!?
この世にたった一つの剣を手にした少年が、ドラゴンにも人間にも体当たりで向き合っていく波瀾万丈ストーリー!
天然無自覚の最強剣士が、今ここに爆誕します!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる