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両想い
22 海馬そして瀬戸
しおりを挟む目指すのは第二のミステリースポット
沈没した巨大宇宙船、ミルキー号
景色が多様に変化する楽しい海底を悠々と散歩しながら向かう
今回は戦いに慣れる目的で魚介類のネコツキとバトルを積極的に行った
それがいい特訓になった
泳ぐことが苦手だった山親父も随分と上達して、ただいま絶好調である
夢みたいだな
こうして海の中を自由に散歩できるなんて
他のゲームなら戦う必要もなくて
日本の海だけじゃなくって、世界中の海を冒険できるみたいだよ
へえ、そりゃいい
綾羽はよく知ってるな
二人とも速いって
待ってくれ
お兄ちゃんだけ足で泳ぐからでしょ
人魚とかダサい
その銀髪ロン毛のがダサい
まだ文句言うか
だって本当だもん
別にいいだろう
誰が好きにオシャレしたって
別にいいけど
余計なこと言うな
黙ってろ
はあーほんとやだ
お兄ちゃんすぐ怒るよね
そんなんだから鬼熊って皆んなに恐がられるんだよ
それだけは言うな
余計なこと言うなっていま言ったばかりだぞ
鬼熊って何だ?
親父は知らなくていい
お兄ちゃんね
学校で鬼熊って呼ばれてるの
はっはっはっ!熊か!
お前そんなに体が大きくなったんか!
親父のせいだぞ!
俺のせいにすんなや
親父の遺伝だ
これは譲らない
へーへー悪かったな
程なくして、視線の先にぼんやりとしたオレンジ色の明かりが見えた
それは珊瑚の洞窟に空いた亀裂から漏れ出たものだった
そこから中へ滑り込むと、奥からブクブクした小さな泡が流れてきて水が生温かくなってきた
何だか様子がおかしい
二人とも気を付けろ
通路は狭い、親父を先頭に進む
妹を挟んで最後尾は兄が任された
美少女になった親父のポニーテールが尾びれに合わせたように揺らぐ
度々、行き止まりにぶつかるほど中は入り組んでいた
明かりが見える通路を選べばいいのに親父にその考えはなかった
それでも息子は黙っていた
アイテムも手に入るしまあいいや、と呑気に構える
美少女になった親父のポニーテールが左右に揺れた
ようやっと最奥、目的地に到着したようだ
うわあ見ろ!すっげ!
宇宙船が突き刺さっているぞ!
しかも燃えてる!
素直に驚く親父の側で子供達は冷静でいられた
これゲームですけど、と現代っ子らしく冷めたところがあった
ところで、上下層の珊瑚礁を貫いて斜めに刺さっている東京タワー級の巨大宇宙船は本当に燃えているわけではない
珊瑚礁から這い寄る炎に包まれているのだ
それのせいで三十七度のお風呂くらい海水が温かい
どうして燃えているのか
このミステリーの謎は、まるで深海のようですわ
「バケモノだ!」
親父がついに酷い言葉を叫んだ
宇宙船の裏から姿を現したのは、黒珊瑚の髪飾りがお洒落でまつ毛の長い一匹の美しい馬だった
しかし、その下半身は魚のそれである
その形態は、さながら神話に登場する海馬ヒッポカムパスに相違ない
ご機嫌よう
ワタクシは猫研究同好会所属、いまは不肖の海洋ネコツキ博士
名をフィンセントと申します
以後よろしくどうぞ
ご機嫌よう
私は桜桃と申します
よろしくどうぞ
ハッとなって振り返ると、同じく子供達も背後を振り返った
こほん
これは君たち、猫研究同好会の仕業か?
いいえ
しかし、ネコツキが関わっているのは間違いないざます
と言うと?
それはまだハッキリとは分かりませんざます
何だそりゃ
そこで、あなた方に力を貸してくださるよう、どうかお願い申し上げますざます
まさか、、、
あの中に入って調査しろとは言わんだろうな
ひひん、と嘶いて笑う
仰る通り
ワタクシの力ならば少しの間だけ炎を鎮められるざます
ここで眼前に注意が表示される
一度進めば引き返せません
それでも進みますか?
もちろんだ
二人ともいいな
子供達は頷く
その意思を認めて、フィンセントが動いた
ここが運命の瀬戸際
タイミングを逃さず飛び込むざます
ゆっくりと走り出した、いや、泳ぎ出したかと思うとグングン加速して巨大な渦を生み出した
それが止んだ一瞬、ひひん、合図を受けた三人は炎が散ったその隙間を走り抜けた
無数に空いた穴の一つから進入した宇宙船の内部は、パイプやコードなどが剥き出しになっていた
ただならぬ雰囲気に圧倒されて息を呑む
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