74 / 96
両想い
17 親父と娘
しおりを挟むうざい、マジで過保護なんだから
間一髪
素直じゃない娘の前に親父が飛び出して、頼もしく、ユニコーンの体当たりを盾で受け止めた
うざくて結構
「どうしても子供を守りたい」のが親ってもんだ
お前が、歳いくつになってもな
スキルを使ってお弁当箱の盾からオカズを飛ばしユニコーンを弾き返す
タイミングのいいカウンターが決まって、敵はややななめ上方高く吹っ飛んだ
親父と入れ替わりに娘が前へ
武器を突き出して先端を敵に向ける
白い息を吐いて、冷静に照準を合わせる
当たれー!
叫んで、斧の尻に付いているグリップに指を掛けて引く
火花を散らして勢いよく滑り出したバターは追尾機能のおかげもあってユニコーンの腹に直撃
炸裂して派手に爆発した
スキル、英国式バターグレネードが決まる
やった!
小さくガッツポーズ
でも喜びも束の間
爆煙の中から光の球が飛び出して、姿をユニコーンへ戻し、雪上へ着地した
それでもダメージは致命的で姿形が歪になっている
綾羽は後先考えず、まるで親父そっくりに、真正面から猛然と迫る
先ほどのバターの射出時の熱で刃の食パンがこんがり焼けている
これがこの武器の特徴で、スキルをトリガーに必殺技を温める
いい匂い
とおりゃあー!!
踏ん張って豪快に
不恰好なフルスイング
雪を巻き上げ、瞬間溶かして水蒸気が広がり、それを切り裂いて
高熱の一撃がユニコーンの胸へ突き刺さる
チン、という音がした
その刹那、食パン型の刃が柄を離れた
さながら一昔前のトースターから焼き上がったパンが飛び出したような勢い
必殺技、英国式トースト・テイク・アウェイ
敵は霧散した
よくやったぞ綾羽!
親父の、なでなで攻撃はするりと回避して、娘は拍手するケモナのもとへ一目散
ぎゅっと胸に抱き締めて勝利を分かち合う
ありがとー!
ケモナちゃんのおかげだよー
いい子だねー
よしよしー
俺は?
お父ちゃんもありがと
早口のお礼に親父の眉が八の字になる
次行こう
時間ないし
うん
そだな
ちょっぴり元気を落とした親父と上機嫌な娘は湖を迂回して先へ進む
都市と要塞の両面で機能していた古代遺跡ムーンメローンのほとんどは雪に埋もれていた
明かりが漏れている、いかにもな崩れた瓦礫の隙間を見つけて、そこから中へ入る
天井に設置された魔法のランプが点々と火を灯し続けていたので見通しは良い
綾羽がパパッと謎を解いて仕掛けを解いて、二人は順調に奥へ進んだ
実はここ、高難度ダンジョンで、、、
ネコティがいるの
は?なに?
ネコティていう名前のネコツキが住み着いてるんだけど、たまーに色違いのレアな奴がいるの
ああ、レアネコツキな
お父さん知ってるぞ
前に何度か会ったからな
そいつが超レアなアクセサリーを必ず落とすから
それを、お父ちゃんにプレゼントするね
アクセサリーなら、もう幾つもあるぞ
いいの
お父ちゃんにとって絶対に良い物だから
綾羽を信じて
分かったよ
お前がくれるプレゼントなら何でも喜んで貰おう
それでよし
ネコティーーー!!!
うるっさ
にわかに親父の絶叫が遺跡中に響き渡り娘とケモナは耳を塞ぐ
廊下に並ぶ小部屋からヌッと姿を現したのは雪男のような猫男
類人猿ぽいし類人猫ぽい
背丈と筋肉量はゴリラゴリラ級
手には茨を巻いた棍棒を握っている
レベルはなんと六十を超える
すっかり気圧された親父は指を差したまま固まってしまった
お父ちゃん、ほらやっつけて
え!俺ひとりで戦うのか!
今まで何回も、手を出すな、て言って
ひとりで戦ってたじゃん
それに仕掛けを全部解いたの綾羽だよ
そうだけども、、、
あ、レアネコティは綾羽が倒すからね
こいつも倒してくれや
お父さん疲れた
ええー
レベル上げは大事だよ
お前はズル賢いな
まったく
親父は仕方なく武器を手に取る
Aランクの槍、大黒柱
スキルも必殺技もないユニーク武器
ドールハウスの屋根裏に眠っていたお宝をアヒルのピータンと一緒に見つけた
浅黒い木の柱そのものを脇に抱えて持つ重量級の武器で(ケモナのバフも込みで)ネコティをたった二突きで成仏させるほどの威力を誇る
お父ちゃんやるじゃん!
この調子で頑張って!
小走りする娘の後を追ってネコティが飛び出してきた部屋に入ると、そこは昔は市場だったらしい広場になっていた
ズタボロの小店舗が幾つか残っている
娘とケモナはその物陰に素早く隠れて応援を続ける
ネコティはここによく集まる習性があり、親父は一時間以上もネコティを突くことになった
まるで除夜の鐘突きだ、、、
と、つまらない親父ギャグを口にするほどクタクタになった頃
時刻は九時を回った
綾羽
そろそろ帰りなさい
お父さんはもう戦い疲れたから
という本心は内に秘めて優しい口調で帰宅を促す
やだ!
プレゼントなら今度でいいよ
だめ!
スーパーでお菓子の袋を二つ抱えて無言で親を睨み頑なに譲らない、あの雨の日の、幼稚園児だった娘の姿が重なる
昔から、こうと決めたら曲げない性格だったんだなあ
俺よりも吉江に似たんだなあ
親父は諦めることにした
きた!
え!
起死回生チャンスオーライ
親父は嬉しさよりも、心が安らいだ
綾羽、約束だからな
お前がやっつけなさい
分かってるって
ケモナちゃん、またね
ケモナを退いて、新たなペットを呼び出す
パパティ!あいつをやっつけろ!
娘は奇抜なネーミングセンスを発揮して、ネコティを色違いのネコティにけしかけた
化物には化物をぶつけてやればよい
しかし油断は禁物
色違いネコティはレベルが八十を超える
体毛が赤く棍棒を両手に握る攻撃的な見た目をしており、それに違わず獰猛だ
しかも桁違いに身軽
二匹のネコティが棍棒で殴り合う目を覆いたくなるような夜の恐怖劇場
その幕が引き裂かれる
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
6人の勇者の中にチーター勇者がいるけどそれ私です
みさにゃんにゃん
ファンタジー
どこにでも居る普通の女子高校生佐々木瞳羽、死んで気が付いたら神様に会い転生を進められよく有り触れた魔法を使うRPGの世界へ召喚という形で転生!
そこから巻き起こる勇者ライフをお届けいたします。
だがしかし彼女はチートである
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる