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両想い
5 マリモッツォ2
しおりを挟む壁に、ここだよ、と示す親切な矢印を見つけて鍵を手に入れた
後は中庭へ向かうだけ
子供達が手伝ってくれるというので親父はバトルが楽しみになる
歩く速度も自然と早くなった
お前、レベル100だからあんまり手を出すなよ
え?なんで?
敵をすぐ倒したら親父が戦う意味なくなるだろ
あーそだね
分かった
ていうか、いつの間にゲームやってたんだ
興味ないんじゃなかったのか
無いけど、別にいいじゃん
妹の綾羽は、スマホでレベルをコツコツ上げていたらしい
それが今回、なんとなく気が変わって兄に相談、データを引き継いでゲームの世界へやって来た
何で最初の世界でレベルを最大まで上げた?
高い方がいいと思ったから
そりゃそうだけど
普通はそこまでしねーよ
仕方ないじゃん
ゲーム全然やったことないからよく分かんないし
お父ちゃんの足引っ張りたくなかったし
偉い!
うるさい
何で!
いちいち声が大きい
親父の声が大きいのは老化である
いや、昔からそうだった
思い返せば綾羽が耳を塞いで大袈裟に嫌がっていたことがあった
というのはさておき
三人はようやく中庭へ出た
バスケコート級の広さで、雑草が生えて荒れている
そこに、浅黒い液体で描かれた魔法陣が地面にこびりついていた
これが魔法の剣かな
親父の視線は魔法陣の中心に刺さった一本の剣に注がれる
柄は革と銀、刃は真鍮
見るからに古い物のようだ
誠清、これ抜いていいのか?
抜かなきゃどうにもならないだろ
でも大丈夫か?
どうも嫌な感じだなあ、、、
賢い皆さんならもうお分かりだろう
これは触れた途端に怪物が召喚される仕組みになっている
触手が伸びてきてスッと剣をのみ、親父は飛んで逃げた
魔法陣より稲妻が天へと迸り大地は激しく震える
不気味な咆哮が全身を這い回り、恐怖を増長する
ぬるりぬるりと邪悪が邪神へ昇華する
ひゃあ!悪魔だあ!
女の子らしい悲鳴を上げる親父を見た子供たちは、にっこり
でっけえぞ!
二人ともお父さんの後ろに来なさい!
コンビニ級の大きさを誇るジュウモンジダコの神話級ネコツキ、名をキャスパリーという
体はマジョーラカラーという紫を基調として七変化する特殊な色をしている
頭の耳はネコと同じく三角、八本の触手の先には鉤爪があり、それに混じって背中に猫の尾が生えている
誠清!綾羽!
お父さんを手伝ってくれ!
咄嗟に警備服に着替えて、デコレーションブレイドを握り締めて叫ぶ
こいつは親子で協力しなければ倒すことは難しいだろう
及び腰でも覚悟は決まっている
お父ちゃん
任せて
娘の綾羽は臆することなく毅然とした態度で静かに言い切ると、猫缶を召喚して地面に置いた
すると、それはひとりでに開いて、中から何か巨大な生物が飛び出した
え!
そいつは過去に親父を追い詰めた強敵
ムキムキ手足の生えた巨大マリモのネコツキ
マリモッツォだった
これには兄の誠清も驚いた
お前、どんだけガチャ回したんだよ
え?一回
お試しの一回でこいつが出たのか!?
そだよ
何だ?凄いことなんか?
プレイヤーが使役する特別なネコツキをスペシャルハッピーパートナー、略してペットと呼ぶ
数は100種を超え、ザコネコツキからボスネコツキ、さらにシークレットまで存在する
戦いがとにかく苦手な人、あるいはゲームを簡単に進めたい人、そんな人達への救済措置になっている
それは町や村にあるガチャを回すことで召喚可能なのだが、単価が一万と高い
そのため初めの一回に限り無料サービスとなっている
しかし、確率はシビアだ
ボスネコツキとなれば当然、かなり低い
それでも綾羽はマリモッツォを一発で引き当ててみせた
これはかなりの強運である
と、息子が早口に説明したのに、親父はどうでもいいことを気にする
名前は決めたのか?
「マリオ」
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