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恩返し
8 きみと雪合戦
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ぴゃ!
親父が少女の声で鳴く
足がすくんでプルプルしていた桜桃の顔面に雪玉が命中した
アシタカネコはまるでピッチングマシーンのように腕を回して雪玉を投げてくる
これでは思うように進めず、戦えない
雪玉には痛みはなくとも、ちゃんと冷やっこさと威力があって、当たればこちらのやる気と体力が削がれる
俺達に任せてくれ
そう言ってハダカデバネズミ達が一斉に潜行した
彼らは地面の下で暮らす動物である
ゆえに雪を掘るなど容易く、また、カマクラなどあっという間に作ることが出来るんだぞ
応戦するぞー!
かくしてアシタカネコ対ハダカデバネズミによる雪合戦が開幕
桜桃は木陰に隠れて傍観する
とんでもないことになったなあ
猫騙師さん
怖がってちゃいけないよ
桜桃に話し掛けたのは幽霊みたいに半透明の黒猫だった
彼は器用にも、もへじろうの肩の上に四つ足そろえて立っている
君がクロか
いかにも
それよりも、こんなに楽しそうなのに君は遊びたいと思わないのかな
ぶっちゃけ桜桃はウズウズしていた
子供の頃は、雪掻きをサボってよく雪合戦したもんだ
懐かしい思い出が元気になって全身にみなぎってくる
体が心から熱くなってきた気がする
みんにゃで一緒に遊ぼうにゃ
もへじろうは覆面を脱ぎ捨て源二になった
源二の頭には猫耳、頬には猫髭、そして妖気で形作った爪の生えた猫の手
それでも彼は人間らしい優しい瞳で桜桃を見詰める
行け!源二!
クロが叫ぶ
先に飛び出したのは源二だ
桜桃は彼の背に隠れるようにして後を追う
アシタカネコは雪玉を投げながら前進してくる
ここで最前線にあったカマクラが、アシタカネコのハサミによる一撃で破壊されてしまった
猶予はない
やった!
桜桃はスキルも必殺技もないユニーク装備のカカシでも自力で一体を倒すことに成功した
難しいことはない
たまに雪玉に顔を打たれながらもアシタカネコの脚とハサミを二本ずつ、ちょん切って、最後に胴体を叩けばいい
そうすると、中に隠る猫の怨念が飛び出して逃げていく
ハダカデバネズミ達による雪玉のサポートが隙を作ってくれるので戦いは楽だった
ねこぱんち!
もへじろうから源二になって変化したスキルだ
容易くアシタカネコの胴体を遠く吹っ飛ばしてやった
やはり彼は心強い
桜桃がハサミに捕まった時もすぐに助けてくれる
ありがとう源二くん
背中は俺が守るから安心してくれにゃ
仲間を信じて猛然と攻め込み、ついに残る二体まで追い詰めた
桜桃へ雪玉が迫る、距離が近く到達まで速い
それでも反射的に大剣の陰に隠れて雪玉を防いだ
だが、ゲームの仕様上、強く押されてしまう
それでバランスは崩したが、これを利用して続く雪玉はかわしてみせた
直ちに高く跳んで、反撃行動に移る
本体を直接狙うつもりだ
ハサミが左右から迫る
桜桃は全力で腕を振り腰を捻った
勢いを増して回転する
ハサミを断ち切り、胴体を打った
どうだっ!
しかし、残る一体が背後からハサミを伸ばしてきた
空中では万事休す大ピンチ
でかねこぱんち!
源二くん!
腹の下に潜った源二がアシタカネコを巨大化したネコパンチで打ち上げた
敵は見えなくなるほど高く打ち上がって鮮やかに爆発して散った
それは猫の顔の形をした花火だった
あにゃたの背中は守ると約束したにゃ
助かったよ
どういたしましてにゃ
みんなの助けで任務達成にゃ
これでめでたしにゃ
桜桃が振り返ると、ハダカデバネズミ達はこちらを一瞥して雪の中に消えた
そもそもの原因こそ彼らにあるが、今回は大いに助けられた
なによりネズミとネコとカニとみんなと遊んで、桜桃は胸いっぱいに満足している
珍妙な覆面を被ったもへじろうと町へ戻るとクエストはクリアとなった
彼は任務の報告をするため都へ戻ると言って走り去った
私からも礼を言うよ
にゃあー!
びっくりしちゃう
突然、桜桃の傍らにクロが浮いて現れたもん
君は彼について行かないのか
どこへだろうと、いつであろうと
側にいることは出来るよ
そうか
お化けだもんな
ネコツキだ!
言われてみれば、、、お化けみたいなものではあるけど、、、それはさておき
あらためて感謝する
桜桃の肩に触れた肉球はしっかり柔らかかった
ここだけの話だよ
私は源二のお兄さんなんだ
源二には伝えていないけどね
にゃ、、、!?
お母さんのお腹から産まれてすぐ亡くなったらしい
それからどうしてかネコツキと合体したようで、こんな姿になったのさ
それは大変ですね
このことは源二には内緒にしてくれよ
私は名もない、もう死んだ人間だからね
でも、それって寂しくないですか?
これでいいんだよ
世界が救われる時、私もネコツキと一緒に成仏するだろう
その時に、源二にまで悲しい思いをさせたくない
、、、分かりました、内緒にします
こうして打ち明けたのは、君に源二と友達になってほしいと思ったからなんだ
これからも、どうぞよろしくね
はい
あ、クロさん、、、
クロは墨のように消えてしまった
ほんのり切なさが残ったけど、もっと温かいものが確かに心に残った
桜桃は頬を二度叩いて気合いを入れる
さーて
ここからもうひと頑張りだ!
そう、ここからが正念場
桜桃は二人のお供を連れて解放した七つの世界を再び巡り、七匹の神様の力を借りて、強力な裏ボスを討伐するつもりだ
その果てに得られるのは神の祝福を受けた特別な仏器
好きな種類から一つ選べる
桜桃は大剣に含まれる刀を狙っている
それを手にしてラスボスに臨む
大切な家族と共に
親父が少女の声で鳴く
足がすくんでプルプルしていた桜桃の顔面に雪玉が命中した
アシタカネコはまるでピッチングマシーンのように腕を回して雪玉を投げてくる
これでは思うように進めず、戦えない
雪玉には痛みはなくとも、ちゃんと冷やっこさと威力があって、当たればこちらのやる気と体力が削がれる
俺達に任せてくれ
そう言ってハダカデバネズミ達が一斉に潜行した
彼らは地面の下で暮らす動物である
ゆえに雪を掘るなど容易く、また、カマクラなどあっという間に作ることが出来るんだぞ
応戦するぞー!
かくしてアシタカネコ対ハダカデバネズミによる雪合戦が開幕
桜桃は木陰に隠れて傍観する
とんでもないことになったなあ
猫騙師さん
怖がってちゃいけないよ
桜桃に話し掛けたのは幽霊みたいに半透明の黒猫だった
彼は器用にも、もへじろうの肩の上に四つ足そろえて立っている
君がクロか
いかにも
それよりも、こんなに楽しそうなのに君は遊びたいと思わないのかな
ぶっちゃけ桜桃はウズウズしていた
子供の頃は、雪掻きをサボってよく雪合戦したもんだ
懐かしい思い出が元気になって全身にみなぎってくる
体が心から熱くなってきた気がする
みんにゃで一緒に遊ぼうにゃ
もへじろうは覆面を脱ぎ捨て源二になった
源二の頭には猫耳、頬には猫髭、そして妖気で形作った爪の生えた猫の手
それでも彼は人間らしい優しい瞳で桜桃を見詰める
行け!源二!
クロが叫ぶ
先に飛び出したのは源二だ
桜桃は彼の背に隠れるようにして後を追う
アシタカネコは雪玉を投げながら前進してくる
ここで最前線にあったカマクラが、アシタカネコのハサミによる一撃で破壊されてしまった
猶予はない
やった!
桜桃はスキルも必殺技もないユニーク装備のカカシでも自力で一体を倒すことに成功した
難しいことはない
たまに雪玉に顔を打たれながらもアシタカネコの脚とハサミを二本ずつ、ちょん切って、最後に胴体を叩けばいい
そうすると、中に隠る猫の怨念が飛び出して逃げていく
ハダカデバネズミ達による雪玉のサポートが隙を作ってくれるので戦いは楽だった
ねこぱんち!
もへじろうから源二になって変化したスキルだ
容易くアシタカネコの胴体を遠く吹っ飛ばしてやった
やはり彼は心強い
桜桃がハサミに捕まった時もすぐに助けてくれる
ありがとう源二くん
背中は俺が守るから安心してくれにゃ
仲間を信じて猛然と攻め込み、ついに残る二体まで追い詰めた
桜桃へ雪玉が迫る、距離が近く到達まで速い
それでも反射的に大剣の陰に隠れて雪玉を防いだ
だが、ゲームの仕様上、強く押されてしまう
それでバランスは崩したが、これを利用して続く雪玉はかわしてみせた
直ちに高く跳んで、反撃行動に移る
本体を直接狙うつもりだ
ハサミが左右から迫る
桜桃は全力で腕を振り腰を捻った
勢いを増して回転する
ハサミを断ち切り、胴体を打った
どうだっ!
しかし、残る一体が背後からハサミを伸ばしてきた
空中では万事休す大ピンチ
でかねこぱんち!
源二くん!
腹の下に潜った源二がアシタカネコを巨大化したネコパンチで打ち上げた
敵は見えなくなるほど高く打ち上がって鮮やかに爆発して散った
それは猫の顔の形をした花火だった
あにゃたの背中は守ると約束したにゃ
助かったよ
どういたしましてにゃ
みんなの助けで任務達成にゃ
これでめでたしにゃ
桜桃が振り返ると、ハダカデバネズミ達はこちらを一瞥して雪の中に消えた
そもそもの原因こそ彼らにあるが、今回は大いに助けられた
なによりネズミとネコとカニとみんなと遊んで、桜桃は胸いっぱいに満足している
珍妙な覆面を被ったもへじろうと町へ戻るとクエストはクリアとなった
彼は任務の報告をするため都へ戻ると言って走り去った
私からも礼を言うよ
にゃあー!
びっくりしちゃう
突然、桜桃の傍らにクロが浮いて現れたもん
君は彼について行かないのか
どこへだろうと、いつであろうと
側にいることは出来るよ
そうか
お化けだもんな
ネコツキだ!
言われてみれば、、、お化けみたいなものではあるけど、、、それはさておき
あらためて感謝する
桜桃の肩に触れた肉球はしっかり柔らかかった
ここだけの話だよ
私は源二のお兄さんなんだ
源二には伝えていないけどね
にゃ、、、!?
お母さんのお腹から産まれてすぐ亡くなったらしい
それからどうしてかネコツキと合体したようで、こんな姿になったのさ
それは大変ですね
このことは源二には内緒にしてくれよ
私は名もない、もう死んだ人間だからね
でも、それって寂しくないですか?
これでいいんだよ
世界が救われる時、私もネコツキと一緒に成仏するだろう
その時に、源二にまで悲しい思いをさせたくない
、、、分かりました、内緒にします
こうして打ち明けたのは、君に源二と友達になってほしいと思ったからなんだ
これからも、どうぞよろしくね
はい
あ、クロさん、、、
クロは墨のように消えてしまった
ほんのり切なさが残ったけど、もっと温かいものが確かに心に残った
桜桃は頬を二度叩いて気合いを入れる
さーて
ここからもうひと頑張りだ!
そう、ここからが正念場
桜桃は二人のお供を連れて解放した七つの世界を再び巡り、七匹の神様の力を借りて、強力な裏ボスを討伐するつもりだ
その果てに得られるのは神の祝福を受けた特別な仏器
好きな種類から一つ選べる
桜桃は大剣に含まれる刀を狙っている
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大切な家族と共に
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