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恩返し
6 にゃ
しおりを挟む桜桃は桜咲く都の真裏へ、例えるなら日本からブラジル、山の麓にひっそり作られた雪の薄く積もる温泉街へとやって来ていた
もへじろうのキャラクタークエストはここでの待ち合わせになる
草津温泉で有名な湯畑を眺めて待つ
ほのかに磯臭い
桜桃は、それほど寒くないけれど防寒対策にモコモコで身を包み、髪型を息子が好きそうなボブにした
特別な意味はない
マフラーに口もとを埋める
三分待っても来ない
そこへ、慌てた様子で駆けてきたのは一匹のハダカデバネズミ
市松模様の浴衣がお似合い
桜桃と変わらぬ背丈であることから、彼が猫研究同好会のネズミだということを見抜いて身構える
ま、待ってくれい
君は猫研究同好会のネズミだろう
何の用だ
どこか疲れた様子で肩で息をしている
桜桃は段々と心配になってきた
どうした?
それが、仲間がネコツキに襲われて
何?
君たちはネコツキを操れるんじゃなかったのか
それが、とんでもないネコツキだったのさ
ふーん
あんたのお供が今、仲間達を助けてくれている
え!まさか、もへじろうのことか!
その人が、あんたを呼んで来てくれって
分かった!
すぐ案内してくれ
彼の後について街を離れた
雪化粧した森の中へ入ろうという時、ネコツキがそこまで迫って来ていた
ハダカデバネズミ達が固まって怯えている
彼らを守るように、こちらに背を向けて戦う男が一人
いた!
もへじろうだ!
飛脚のもへじろうが二本脚の高脚蟹っぽい奇妙なネコツキと武器も持たず戦っていた
足の高さはキリンさん級、腕の長さはゾウさんの鼻級、そして口からハチワレ猫の顔が覗いている
名をアシタカネコという
長い腕と鋭いハサミを振り回して暴れている
もへじろうー!
もへじろうの顔をハサミが襲った
辛うじて避けたようではあるが、覆面が破けたようだ
こんな非常時に何故だ、武器を召喚出来ずバトルを始めることが出来ない
ん?
もへじろう、、、お前
はらり、破けた覆面が落ちて、もへじろうの素顔が露わになる
背は向けているが、その異常は一目で分かった
頭に、猫耳、それが生えていた
「まさかネコツキなのか」
もへじろうは一度こちらを振り返った
美しい横顔が見えたが、ハサミの気配を感じて直ちに戦闘を再開した
アシタカネコの腕が飛んで消滅した
さらに脚も消し飛んだ
瞬く間に形勢が逆転する
もへじろうの手が妖気で構成された猫の手に覆われているのを見る
動きは一変して身軽だ
アシタカネコは手も足も鋏も出ず、とうとう胴体だけになった
すると、猫足が四本生えて、あっという間に森の奥へ走って逃げた
もへじろうはそれを追わなかった
待たせて悪いにゃ
猫騙氏にゃん
中性的な美形だ
長くて綺麗な髪、キリリとした吊り目、頭の猫耳、左右三本ずつ生えた猫髭が萌え
そして引き締まった肉体
俺の名前は源二にゃ
今まで訳あって口を開かず失礼したにゃ
お京と同じだな
さしずめ正体を隠したかったんだろう
ご明察にゃ
この耳と髭と、変な言葉遣いを隠すためにゃん
うーん、、、
一体何がどうなってる?
桜桃が小首を傾げると、もへじろうはクスリと微笑した
その訳は町に戻って話そうにゃ
少し休みたいにゃ
分かった
もへじろうはポケットから新しい覆面を取り出して被った
やっぱり顔は、へのへのもへじ、で構成されていた
どうして、それを選んだのかは聞かない
二人はハダカデバネズミ達を連れて町へ戻ると、彼らと円満に別れて、足湯に寄った
なんだか磯臭い
もへじろうの心遣いで傍らに建つ茶屋からお茶と黒糖饅頭が運ばれてきた
饅頭が、餡子が苦手なら他の団子に変えられるがどうするにゃ
頂くにゃ
饅頭は好きにゃ
にゃふふふ
真似しにゃくていいんだよ
君だけに恥はかかせないにゃ
優しいにゃ
あにゃたは
桜桃はついでに頭に猫耳を生やした
もう、とことん役に成り切るつもりだ
ゲームだし恥ずかしいことは、、、
見られてる!?
みんなに見られてる!?
笑われてる!?
家族の存在も忘れてた!?
すまん
やっぱり、やめておく
それでいいにゃ
気にしないでくれにゃ
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