いとしのチェリー

縁結び

１７ おっきなー

桜桃は発見した！
地図上にたった一つだけ見覚えのあるものがあった
それは

○の中に×だよ
ほら

おーよく見つけたね
それでこれ何？

これは警察署の地図記号だな
説明がここに書いてある

ふむふむ、今はそれだけが手掛かりだ
デカネコに気をつけて警察署に行ってみよう

見つかっては襲われてその度にヒツジさんが猫パンチから体で守ってくれてとてんやわんやあったけど警察署に無事辿り着いた

怪我はない？

ありがとう、モネカさん
何度も助けてもらって

いえいえー

警察署は不気味なほど静まり返っている
どこからか子猫が食事するカリカリ音でも聞こえてきそうだ

こういう時はやっぱり地下牢だよね

地下牢だって？

地下にある牢屋のことだよ
行ってみよー

ヒツジさんが先行して案内してくれる
桜桃は後について行くだけで楽をした
階段を降りると、すぐ、廊下に沿って地下牢が並んでいた
その奥に本物の彼がいた

おお、、、助けに来てくれたか！

あなたは！
まさか本物の！？

組合長の孝一です

え！

あなたは私の依頼を受けて、ここに来られたのですね
良かった、人形にバレないようにヒントを地図に残して
必ず分かってくださると信じてました

ははっ
そう難しいことじゃありませんでした

桜桃は得意気に胸を張って鼻の下を人差し指で擦った
嘘つき

もし人気のない路地裏なんかでネコツキに連れて行かれる時に、そのようなヒントを残すよう部下に伝えておいたのです

あなたは何故、一人ここに？

人質として
そして猫の知恵として残されました

辛いだろうなあ
猫の言いなりになって人を騙すのは

もうやめてくれとお願いしても、聞いてくれませんでした

モネカが牢の扉を体当たりでぶち壊し彼を解放してあげた
桜桃は組合長から町の人達の行方を聞くと、彼らのところへ急ぐ
デカネコはいなくなっていた
諦めたのだろうか
いやそんなことあろうはずもない

猫さんは遊ぶことが大好きだからね
あと縄張りから離れないから
絶対に諦めないよ

モネカの言う通りデカネコは諦めた訳では無かった
町の外れまで来た時、ヌッと建物の影から姿を現して立ちはだかった
桜桃は反射的にヒツジさんに飛びついた

ひゃあ！出た！

安心して
こうなったらギリギリまで全力を出す！

ヒツジさんは桜桃を背中に乗せると、むくむくむく、もこもこもこ、あっという間に膨らんで大きくなりました

おお
温かくていい匂いがする、、、

下半身を羊毛に埋めて、くんかくんかして、気持ちほっこりしている場合ではない
決戦の時が来たのだ
桜桃の手元に雲形のリモコンが現れる
ボタンはシンプルに三つ、グーチョキパー

難しくないから安心してね
デカネコとジャンケンをして勝てばいいの

ヒツジさんは優しく説く
ルールは簡単、後出しジャンケンなので滅多に負けることはない
が、桜桃は一発目にパニックになって負けた
猫パンチがヒツジさんの鼻に、ふにっと突き刺さる

す、すまん！

気にせず頑張って！

デカヒツジとデカネコはモッサリドッシリぶつかり合う
プレイヤーは羊毛が絡まって固定されるので落ちる心配はない
それでもビルの建つ都市の真ん中で巨大な生き物が行う戦闘に巻き込まれるというのは、胸の鼓動が加速するほどインパクトがある
なおデカネコの目からビームが放たれても、デカヒツジが叩きつけられても、積み木の建造物が崩れることは決してない

悪い！

だいじょぶだいじょーぶ！

戦いは激しさを増した雰囲気で、二体の怪獣はビルの上を跳び回る
恐怖はプログラムで一定までコントロールされている
桜桃は興奮しながらも冷静にジャンケンをすることが出来た
デカネコの猫騙しに目が眩んでヒツジさんが一方的に猫パンチ連打を食らっても落ち着いていられる

ごめんね

平気

桜桃よりもデカヒツジの健闘により、デカネコは次第に追い詰められていく
すると狡賢く建造物の影に隠れて、不意にジャンケンを仕掛ける攻撃に切り替えてきた
アイコが五回続いて、デカネコによる引っ掻き攻撃がデカヒツジの脇腹に柔らかく炸裂した
それでもどんなに傷付いてもデカヒツジは諦めない

すみません

頑張れ

戦いは息子が夕食を食べ始めてから終えるまで続いた
息子が、いつまでジャンケンに手こずってるんだよ、と嫌味を送ってきたことで桜桃の闘志が激しく燃え上がった
三連続でジャンケンに勝ってスキルを発動、メリーヘッドが決まる
その衝撃にデカネコの髭が縮こまる

やった！

いいよその調子ー！

さらに二連続追加、計五連続勝利で必殺技を発動、メリーエコーがデカネコの鼓膜を苛める
しおしおしお、、、にゃふ
ついに長きに及ぶボス戦は決着した
晴れて二人の活躍あって、テントの中に閉じ込められていた人間達は、そして町は無事に解放されたのであった

こんど会う時は、残念だけど敵になるよ

「それでも友達だろう。モネカさん」

桜桃の迷いのない純粋な言葉に、ヒツジさんは驚いた顔をして、空気が抜けるように表情がほぐれた

いつまでも友達だよ
いえーい！！