いとしのチェリー

旭ガ丘ひつじ

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縁結び

12 とりさんぱたぱたれーす

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この世界ではネコツキも鳥さんもプレイヤーに合わせて縮小するが、レースに参加する鳥さんだけはプレイヤーが背中に乗れるサイズに調整されている

小さいスズメやメジロは、背中に抱きつく形で乗る
中くらいのカラスやニワトリはヒト一人座れる
大きいハクチョウは寝転ぶことも出来る

ではまず、とりさんぱたぱたれーすについて幾らか説明しておこう

初めに操縦方法について
背中に乗ったプレイヤーは指示をイメージするだけでよい
鳥さんはそれに従って飛行してくれる
なお、背面飛行だろうと落ちることはない安全仕様になっている

続いて、鳥さんの大きさには有利不利が存在する
小さくなるほど操縦は軽いが衝突に弱い
大きくなるほど操縦は重いが衝突に強い

衝突による速度低下にサイズの差はない
よって、互いになるだけ衝突を避けることが望ましい
足の引っ張り合いになるだけだ

最後に鳥さんごとにパッシブスキルという個性が存在する
例えば、、、

スズメは障害物を自動で回避する

メジロはコントロールが上昇する

カラスは障害物をマーキングする

ハクチョウは水面に降りて泳ぐことが出来る

そしてニワトリは必ずスタートダッシュする
これこそ最弱と呼ばれる由縁
他の鳥さんでもスタートダッシュは可能なのだ

さて、いよいよ
ここからはレースの模様をリポートする

第一関門は森
プレイヤーは飛行する鳥さんへ、伸びた枝葉やライバルにぶつからないよう必死に指示を送る
もし衝突しても墜落することはないので御安心を

と、スズメとメジロが衝突してしまった
あちらではカラスが葉に突っ込んでしまった

その一方で、地面を疾走するニワトリにとって障害となるのは倒木だ
避けるよりも越える方が時間短縮になる
百キロババアはあるコツを知っていた
速度は全く落ちる気配がない
木の根を姿勢を低くしてくぐり抜けるのも上手い

第二関門は川の流れる狭い渓谷となる
ここでは鳥さん同士の接触が頻発する
カーブが多いためだ

ハクチョウがカラスを弾いて川に降りた
これで何にも邪魔をされず進行できる
接触を避けて速度を維持する考えだ
残る三羽はバチバチのポジション争いをすることになった

その傍らでニワトリも曲がりくねる崖道を走っていた
右往左往の操作はシビアになる
また、落下することはないが、途中途中にある隙間を先の倒木同様に必ず跳び越えなければならず、このタイムロスが悩ましい
しかしそれを縮める指示を出すのが百キロババアの凄さ
上体を前に伸ばし、低い跳躍で速度を限りなく落とさない
カーブの曲がりも実に細やかで美しい

百キロババアと言われるだけある
先頭は譲らない

第三関門、洞窟
松明があるが薄暗くて見通しが悪い
ここでは上下にうねる道がプレイヤーを混乱させる
坂を上昇する時にその頂点は見えても先が見えない
左右に別れる道もあり、そこで障害となるツララ石の配置も変わる

今回参加したプレイヤー達はみな腕が立つようだ
回避に専念して衝突はなく、スムーズに縦横無尽に舞い踊る
その鮮やかなプレーに観客席が湧いた

百キロババアはどうだろう
突き出す鍾乳石を軽やかにかわしながらも中央を選んで走っている
坂を上がるときは歩幅を短くして速度を落とさず、反対に下るときは大胆にも歩幅を長くして加速する

鳥さんの最大速度や最大加速度に大きな差はない
しかし、育成の度合いや、こういった小さなテクニックで大きく差が出る
それが勝敗に大きく関わる

なかでも見落とされているのが、歩幅など細かい調整の利く二足の優位性
百キロババアはそれを女の勘で熟知していた

まさしく圧倒的
他のプレイヤーをグンと引き離す
それを人為的に埋める手段は容赦なく無い
速いやつが勝つ
単純な競争

ラスト第四関門、山の中腹を急降下して廃墟となった都市へ入る
ビルの間、横倒れになったビルの中、陥没した道路から地下鉄に潜る、目まぐるしく難度が変化する

それは山の麓から飛び出して地上を走るニワトリも例外では無い
割れて凹凸の激しい道路、地上に飛び出した列車の中、埋没したコンクリート建造物の屋上を跳ねる

その最後に巨大な鉄橋を渡る
飛行する鳥は地下鉄の線路に沿って鉄橋の下を通る

遠く、海に反射する夕日が綺麗だ

ゴールは巡って盆地の村に戻る
地上へ飛び出して沿岸を滑空する
林の間の道路を駆け抜ける

障害はない

羽を上手く扱い海風に乗せて速度を上げていく
まるで放たれた矢のように
それでも憧れは遠い

首位独走

百キロババアは足裏の接地面を増やして歩幅を広げる指示をニワトリへ出す
こんな指示は子供に出せるはずもない
ババアだからこそ

ゴールテープを切った

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