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縁結び
11 百キロババア
しおりを挟むここはドールハウスと呼ばれる世界
名前の通り、レンガと木材を合わせたモダンな二階建ての一軒家、そして庭を含めた箱庭で構成されている
その周りはオシャンティーな町の風景を描いたハリボテに囲まれて、ネコツキの強さは二階、屋根裏と上がるごとに強くなる
台所市場、廊下街道、お風呂氷原、階段の街、寝台下の洞穴、屋根裏神殿、、、
家の中にだって世界は広がっている
最後にドールハウスの扉は全てスライド式で開け放たれていることを念のため伝えておこう
さてさて
この世界の最たる特徴はやはり、プレイヤーが小さくなることだ
現実で例えれば、桜桃は十センチほどになる
桜桃は幼少期、こんな風に小人になる物語を漫画で読んだことがあって、一つの憧れであった
子供達だろう
よっぽど楽しいのか駆け回る子が多い
桜桃にはその気持ちがよく分かった
ところで、今はトイレ兼図書館を訪れている
真ん中に巨大洋式トイレのある図書館をイメージしてもらえればよい
まあ無理か
余ったところを無理矢理に図書館に選んだとしか考えられないが、トイレで読書はよくある話なので納得する部分もあるかも知れない
うっすらとラベンダーの香りのする館内は純白で清潔
桜桃はワザとらしい便器型の椅子に深く腰掛けて雑誌を読んでいた
モリネズミ今月号の特集は最大のネズミ、水豚を紹介していた
彼は不思議と他種の動物が寄り添う癒しの存在
鳥が乗り、猫に戯れ、猿はもてなし、亀と寝る
老若男女に人気で、まれにホームセンターのペットショップなんかで売られていてビックリする
人間で言う尾てい骨辺りを掻いてやると寝転ぶらしい
最後のヒント
温泉に入る姿がチャーミング
みんなもう分かったよね
「カピバラさん可愛いなあ、、、」
桜桃も思わずうっとりしちゃう
満足の長いため息を吐いて雑誌を閉じた
それから図書館を後にして、召喚したおもちゃの扉を開いてコレクションルームへ転移する
家の隣に小さな倉庫があって、そこには年代物の玩具から骨董品まで多様なコレクションが展示されている
雀卓の上に巨大な鳥籠があって、ミニチュアがレースの為に組まれて収まっていた
とりさんぱたぱたれーす
それは鳥さんに乗って一周するというシンプルなレース
コースは立体映像の二本のリボンで表現され、鳥さんはセミオートでリボンの間を走る
ところで近頃、このような都市伝説が囁かれている、、、
最弱候補のニワトリをガチ育成
地上を爆走して一位をかっさらう
恐ろしい百キロババアがいる
百キロババアが二ヶ月振りにエントリーしたぞ!
という訳の分からない噂話を耳にした桜桃はホイホイ釣られて活気の溢れる鳥籠の前にやって来た
派手な装飾、雑多な露店、雰囲気はアゲアゲ
胸が踊りテンション絶好調
鳥籠内にある観覧席の座席に着くや、我慢ならず一口、炭の香りがアクセントの甘辛いタレが絡む肉厚な丸ごとイカ焼きを口いっぱいに頬張った
観覧席にはエレベーターを使って上がる
鳥籠の金網に沿う形でミニチュアを一望できる高い所に設けられている
桜桃はもちろん最前席を取った
イカ焼きの後にスイカソーダをチューチューする
百キロババアだ!!
突然に背後で誰かが叫んでスイカジュースを吹いてしまう
爆発したみたいに一気に歓声が湧いた
まるでアイドルのような大人気
桜桃は目の前にサブスクリーンを表示して、百キロババアのカメラを選んだ
これでレース全体と百キロババアと両方を楽しむことが出来る
百キロババア、そう呼ばれてはいるが見た目は桜桃と変わらぬ、お人形さんみたいに綺麗な美少女だった
しかし名前はババアと表示されている
悪い子がいるもんだ
いや、もしかすると大人、それよりマジのババアの可能性もある
確かに、百キロババアはニワトリに乗っていた
他の男女が空を飛ぶ鳥さんに乗っているのでひとり目立つ
彼らは村の端で一列に並んでレースが始まるのを今かと待っている
カウントダウンが始まった
赤、黄、青で一斉に飛び立つ!
されどニワトリは駆ける!
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