いとしのチェリー

旭ガ丘ひつじ

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縁結び

6 優男

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三日前、猫月の世界
七つの世界を渡り歩いたが、桜桃にとっては、この世界が一番落ち着くようだ

その日、桜桃はスゴロク体験教室へ足を運んだ
こういった体験型クエストは家事から遊びまで幅広くある
以前、それで炊事や洗濯を学んだことがあった
目が覚めて家に帰った時、妻を労って家事を手伝おうと思いついたのだ

スゴロクのルールはもちろん知っていたが、囲碁だの将棋だのは難しく、これが一番簡単に遊べそうなので参加を決めた
参加すると好きなデザインのサイコロが貰えて、何より嬉しいのが好きなマップを一つ作れる
それで息子と遊びたいと考えている

なお、マップを一つ作ると、これからも四つまで自由に作ることが可能になる

体験教室ではルールを学んだあと、オンラインならば、みんなで遊ぶ実習が行われる
桜桃はとても緊張していた
周りはみんな子供だと思っていたからだ
しかし、一人だけ違った
一般的な日本人顔で着物を身につけている優男が裏切った

すみません
あなた、大人の方ですよね

初めて他のプレイヤーに声を掛けられた桜桃は分かりやすく戸惑う
その反応を受けて、優男は恭しく会釈した

急に話しかけてすみません
態度や受け答えでそうかなと思いまして、つい

ははは、そうです
いい大人ですよ私は!

それでは今回は大人と子供でチームを分けましょう、と人工知能は臨機応変で賢い
NPCの先生に促されて子供と対決することになった
子供達は相手が大人と知って、俄然やる気を燃やした
子供は大人を打ち負かすのが大好物なのである

先に二人ゴールすれば勝ち

というシンプルなルールで対決が始まる
子供はワーキャー言いながら楽しんでいる
それに感化されて、次第に大人達も童心に帰ってワーキャー楽しんだ

仲間がいなくて寂しい思いをしていた桜桃は負けても満足した

ところで失礼ですが、御年齢は?

そう切り出したのは桜桃だ

僕は四十六です
そちらは、と、女性に対して失礼ですね

「え、男ですよ。五十代の」

ん?
ああー
あ、あー!あはは!

優男は酷く混乱したが、それを悟られないよう必死に笑顔を取り繕う
桜桃は何も理解できず、とりあえず笑顔を返してあげた

いやーゲームだから見た目じゃ何も分からないものですね

優男は何も考えないことにした
相手の趣味趣向に軽く口を出すものではないと分をわきまえる

そうですなあ
私は大人だから、子供に声を掛けちゃいかん、と実はまだ誰にも話しかけたことがないんですよ

僕は掛けちゃいました
すみません

いやいや
構いやしませんよ
むしろ嬉しいです
ずいぶん寂しかったもんで

独身ですか
僕もです

や、私には妻と子供が二人おります

優男は関わらない方がよいのではと少し警戒する
あり得るだろうか
家族を持つ五十過ぎの親父が女装してゲームをするなど
ちょっと、、、こわい

訳を話しますと、わたし怪我人でして

怪我人?

ええ
仕事中に頭を打ってね、、、

桜桃は初めましての相手に一切合切を打ち明けた
親父のネットリテラシーは低い
個人情報を簡単に晒してしまった
これは後に息子から注意を受けることになる

大変ですね
実は僕も訳ありでして

優男は生まれつき目の見えない男だった
姪っ子の勧めでこのゲームを始めて、ゲームの中ではあるが初めて色々を目の当たりにしたと打ち明けた

それは良かった!
いやーほんとにいいことだ!
素敵な姪っ子さんで羨ましい!

そちらの息子さんこそ素敵ですよ!

すっかり意気投合した二人は友達になった
そして、お互いに必要な時に協力し合う約束を交わしたのだった

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