いとしのチェリー

縁結び

３ 君達はネズミ

博士は猫みたいに顔を洗う
一行はドン引きして博士から距離を置いた

もしここにネコツキが、たーっくさん、集まったら君達は逃げられない
さしあたり袋のネズミというわけだねえ

どよめく
なぜ急にホラーが始まった
桜桃は子供達が泣き出すのではと緊張した

そこまでだ！

状況は深刻さを増した
とにかくヤバい
あれは泣く

「正義の虎さん、リンドウマン参上！」

良かった正義の虎さんだった
みんなは、ほっと胸を撫で下ろした

リンドウマン！お前がどうしてここに！

正義の虎さんだからだ！

迫力満点の生々しい虎の咆哮にみんなは萎縮した
やっぱ恐いじゃん

正体を表せ！
お前はネコツキだな！

ごろごろ、、、
トリモチ博士は喉を鳴らす

いかにもねこにも
わしはネコツキでありタヌキでもある

小太り博士の姿が怪しく揺らめいて小太り狸の置物に早変わりする
みんなは逃げようとしたが「前門の狸、後門の虎」状態に陥って動けない
そこ退いてください、と誰も言えない

にゃあー！

これは虎の叫びだ
軽々とみんなを飛び越えてタヌキオヤジにのしかかった

にゃあー！

こっちはタヌキオヤジの叫びだ
二人はゴロゴロと揉みくちゃになる
みんなは何故だろう誰一人として逃げ出そうとはせず、それを静観している

同じネコ科、つまりは猫の仲間として猫の悪巧みは私が止めてみせる！
にゃっはっはっ！

ここで声援を送る子供が現れた
もうヒーローショーみたいに楽しみだした
こうなったら止められない
みんながみんな虎さんを応援して、窪みに落ちたタヌキオヤジとリンドウマンは野生的なキャットファイトを始めた
しかしなんということだろう

虎さん弱い、、、

誰かは知らんが女の子が一人嘆いた

リンドウマンが、背中に乗られたタヌキオヤジにネズミの骨で乱打されている
ピンチだ
助けるべきか、いや見えない壁に阻まれて窪みへ降りられない
バトルの文字もない

みなさん！もっとです！
もっと応援をください！！

敬語で頼む虎さん
果たして逆転はあり得るのか
桜桃は口を固く閉じたままだったが、子供達は黙っちゃいなかった
虎さんの応援だけでなく、タヌキオヤジにヤジまで飛ばした

正義が唸るぜ！

虎さんが決め台詞を叫ぶとチャームポイントであるラピスラズリのブレスレットが輝く

何だこの光は、、、！

人間の勇気だ！

狸が人に化かされるとはあああ！

何かよう分からんが勝ったらしい
タヌキオヤジはブレスレットの光に包まれて消えた

ふうー危ないところ助かりましたあ

虎さんはまた軽々とみんなを飛び越えた

リンドウマンは先に帰るけど、みんなも気を付けて町へ帰るんだよ
研究施設に行けばバスで送ってもらう事もできるからね
じゃあね、本当に気を付けて、怪我のないように無事に帰ってね

君達は私の獲物なんだから

そんな言葉が最後に聞こえた気がする
リンドウマンは颯爽と走り去った