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縁結び
1 蒸気の世界
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アルバートとの決戦後
エーデルワイスというバカでかい丸い犬が不意に現れた
アルバートは僕の一番の友達だった
彼の願いを叶えてくれてありがとう
彼は神様の世界へと帰った
君たちが幸せにしてくれたんだ
そんな風に気を落とすことはないんだよ
むしろ胸を張って誇りたまえ!
わーはっはっ!
親父はエーデルワイスから手鏡を一つ貰った
それは彼の被毛の奥に隠されていた
ぐっと腕まで突っ込んで、もふもふを掻き分けて入手した
それは、こことは異なる世界を映し出す桃源鏡
鏡を覗いてごらん
言われたままに覗いてみると、鏡面が怪しく揺らめいて異なる世界が写し出された
指で横にスッと、スライドして選んで、鏡を裏返して突き出すと、その世界へ行けるようになるよ
親父は迷って息子を振り返った
好きな世界を選んで大丈夫だと、息子の代わりにエーデルワイスが答えた
自由に行き通うことができるらしい
待ったをかけるよりも早く、エーデルワイスの笑顔は朧げになって消えた
初めに選んだのは蒸気の世界
機械都市、水晶の洞窟、金銀財宝山、古代の森、地下湖、、、
大冒険の期待に胸躍る
桜桃は息子から汽車や恐竜がいると聞いてすぐに決めた
いざ境界の蜃気楼を飛び越えて、いざいざ新世界へ
鉄骨の都、セメントタウン
山の中、広大な空洞に築かれた鋼のビルには太いパイプが走り、大小様々な歯車が町の機能を全て担っている
銅色の町には緑もあって、空気も悪くなかった
もっとガスや黒煙が充満しているかと思いきや意外とエコでクリーンだった
その一つを紹介する
ハイドロトレイン
水素と電気で走る蒸気機関車で、桜桃が子供の頃に何度か乗った蒸気機関車と見た目はさほど変わりなく、レトロな装飾がカッコいい
特徴的なのは黒煙を吐かず、水蒸気を煙突から吐き出すところにある
桜桃は過去を振り返る
その昔は蒸気機関車がトンネルに入る時は窓を閉めるのが当たり前だった
しかし、それが遅れると車内に黒煙が充満して大変なことになる
高校生の田中孝一は修学旅行で、悪戯に少しだけ隙間を開けて車内をパニックにした
友達とはしゃいだ思い出が懐かしい
水晶の森を抜けて、汽車は外へ出た
この世界の人達は巨大空洞で暮らしている
町にあった植物も、もともと生えていたものらしい
そう、古代の巨大生物の生息地に現在は人が暮らしているのだ
汽車は山脈に沿う線路を颯爽と駆け抜けて隣の山を目指す
窓から下を覗くと、陽光をいっぱいに浴びて煌めく樹海がどこまでも広がっていた
視線を上げると、彼方に大河を見つけた
雄大な大自然が色濃く残っている
グレイトジャーニー
新たな冒険の始まり
隣町はまた趣が違っていた
鋼や歯車はあまり見当たらない
木造建築がほとんどで高いビルもなく、町を縦横無尽に流れる河川には水車が多く見られた
これはこれでワクワクする
大きな滝を見上げて桜桃は心を躍らせた
桜桃がこれからの世界で行うべきメインクエストは同じ
三つのミステリースポットを順に巡りネコツキを退治すること
それはどの世界をどの順番でもいつ何時でも自由でよい
なのでバトルを避けて、探検隊の服が一式もらえるサブクエストを初めに引き受けることにした
この町へやって来たのはその目的のため
石灰で造られた白亜の恐竜博物館にお邪魔して、受付で考古学の博士を訪ねる
恐竜を研究し、その化石を発掘する人
このクエストはオンラインだと他のプレイヤーと同行することになると説明にあった
まるで歴史探訪ツアーじゃないか!
桜桃は嬉々としてそれに参加したのだが、周囲の言動を観察するとほとんどが子供らしい
分かってはいたが少し寂しい
「仲間がほしいなあ」
ぽつねんと思い悩む、、、
エーデルワイスというバカでかい丸い犬が不意に現れた
アルバートは僕の一番の友達だった
彼の願いを叶えてくれてありがとう
彼は神様の世界へと帰った
君たちが幸せにしてくれたんだ
そんな風に気を落とすことはないんだよ
むしろ胸を張って誇りたまえ!
わーはっはっ!
親父はエーデルワイスから手鏡を一つ貰った
それは彼の被毛の奥に隠されていた
ぐっと腕まで突っ込んで、もふもふを掻き分けて入手した
それは、こことは異なる世界を映し出す桃源鏡
鏡を覗いてごらん
言われたままに覗いてみると、鏡面が怪しく揺らめいて異なる世界が写し出された
指で横にスッと、スライドして選んで、鏡を裏返して突き出すと、その世界へ行けるようになるよ
親父は迷って息子を振り返った
好きな世界を選んで大丈夫だと、息子の代わりにエーデルワイスが答えた
自由に行き通うことができるらしい
待ったをかけるよりも早く、エーデルワイスの笑顔は朧げになって消えた
初めに選んだのは蒸気の世界
機械都市、水晶の洞窟、金銀財宝山、古代の森、地下湖、、、
大冒険の期待に胸躍る
桜桃は息子から汽車や恐竜がいると聞いてすぐに決めた
いざ境界の蜃気楼を飛び越えて、いざいざ新世界へ
鉄骨の都、セメントタウン
山の中、広大な空洞に築かれた鋼のビルには太いパイプが走り、大小様々な歯車が町の機能を全て担っている
銅色の町には緑もあって、空気も悪くなかった
もっとガスや黒煙が充満しているかと思いきや意外とエコでクリーンだった
その一つを紹介する
ハイドロトレイン
水素と電気で走る蒸気機関車で、桜桃が子供の頃に何度か乗った蒸気機関車と見た目はさほど変わりなく、レトロな装飾がカッコいい
特徴的なのは黒煙を吐かず、水蒸気を煙突から吐き出すところにある
桜桃は過去を振り返る
その昔は蒸気機関車がトンネルに入る時は窓を閉めるのが当たり前だった
しかし、それが遅れると車内に黒煙が充満して大変なことになる
高校生の田中孝一は修学旅行で、悪戯に少しだけ隙間を開けて車内をパニックにした
友達とはしゃいだ思い出が懐かしい
水晶の森を抜けて、汽車は外へ出た
この世界の人達は巨大空洞で暮らしている
町にあった植物も、もともと生えていたものらしい
そう、古代の巨大生物の生息地に現在は人が暮らしているのだ
汽車は山脈に沿う線路を颯爽と駆け抜けて隣の山を目指す
窓から下を覗くと、陽光をいっぱいに浴びて煌めく樹海がどこまでも広がっていた
視線を上げると、彼方に大河を見つけた
雄大な大自然が色濃く残っている
グレイトジャーニー
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隣町はまた趣が違っていた
鋼や歯車はあまり見当たらない
木造建築がほとんどで高いビルもなく、町を縦横無尽に流れる河川には水車が多く見られた
これはこれでワクワクする
大きな滝を見上げて桜桃は心を躍らせた
桜桃がこれからの世界で行うべきメインクエストは同じ
三つのミステリースポットを順に巡りネコツキを退治すること
それはどの世界をどの順番でもいつ何時でも自由でよい
なのでバトルを避けて、探検隊の服が一式もらえるサブクエストを初めに引き受けることにした
この町へやって来たのはその目的のため
石灰で造られた白亜の恐竜博物館にお邪魔して、受付で考古学の博士を訪ねる
恐竜を研究し、その化石を発掘する人
このクエストはオンラインだと他のプレイヤーと同行することになると説明にあった
まるで歴史探訪ツアーじゃないか!
桜桃は嬉々としてそれに参加したのだが、周囲の言動を観察するとほとんどが子供らしい
分かってはいたが少し寂しい
「仲間がほしいなあ」
ぽつねんと思い悩む、、、
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