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旅立ち
23 俺に任せとけ
しおりを挟むお釈迦様だよ
え!
仏教の開祖で、詳しいことはネットや図書館で調べてみるといい
あの方は人間を代表して、猫の怨念を鎮める旅に同行して下さった
屋上は淡く彩られた美しい花園になっていた
神輿の屋根に腰掛けていた猿、アルバートは過去を懐かしみ、時折ほほえんで桜桃の質問に答えてくれた
ほへー
そりゃおでれえたなあ
その旅の終わりに、お釈迦様は悪戯ばかりする猫を仏具に封じた
そして現在も猫寺で「まじない」を唱えていらっしゃる
アルバートは颯爽と神輿から飛び降りたが芝生に足を滑らせて赤い尻を打った
思わず身構えた桜桃もつい拍子抜けする
あいたたた、、、
おーい大丈夫か?
平気だ
気を取り直して目覚めの儀を始めよう
何をするつもりだ!
やめなさい!
親父の鮮やかな反応に息子は俯いて肩を震わせる
なんて素直なんだろう
一方でアルバートは制止など構わず、どこからともなく香炉を取り出して天に掲げた
さあ目覚めの時です!
七福神が一人、寿老人さま!
その呼び声に応えて、香炉からモクモクと煙が立ち上った
それは頭上で稲妻の走る雲と変わる
この神輿には、かつて猫の分神が操る恐ろしいネコツキ、蜃、その欠片が封じられている
人々は知らず知らず、こいつに祈りを捧げ力を借りて、除災招福を行っていたというわけどぅわ!
突如として全てのエネルギーが落雷という矢になって神輿に刺さった
激しい閃光と噴煙が広がる
ごほ、ごほ、除災とは良くないことが起こらないよう祈ることで、おほ、えほ、招福とは、えんっ、除災とは反対に良いことがあるよう祈ることだ
おい!大丈夫か!
雷が落ちたぞ!
平気だ
噴煙が少しずつ晴れて、アルバートの姿が朧気に見えた
それを認めた桜桃が心配になって駆け寄ろうとする
こちらへ来るんじゃない
どうして?
恐ろしいネコツキが誕生しようとしている
しかし、私が猫の分神に代わることで力を抑えることが出来る
私を倒せ
私に勝って寿老人さまを解放するのだ
何を言っているんだ
そんなこと出来るわけないだろう
人類を救う為には、ネコツキの親玉を退治して、この世界に囚われた七福神を解放しなければならない
それは君達にしか頼めないことなのだ
やってくれるね
何を言われても無理だ
安心したまえ
決して命を奪うわけではない
悪いものを祓ってほしい
出来ない!
もう止められない
頼む
どうして私なんだ!
皆さんはもうお気付きだろうが、はいと答えるまで進まないイベントである
仕方ないので息子が背中を押す
親父
あいつを助けてやろうぜ
いやでもな
戦うしかないんだ
それにあいつが言ったろう
命を奪うわけじゃない
今までのネコツキ退治と同じで
お祓いみたいなもんだよ
ううん、、、
田中孝一!
え!はい!
不意に違和感を覚えた息子は眉をひそめた
対してアルバートの表情は穏やかになる
間を置いて、優しく語りかける
君は立ち止まれないはずだ
家族のもとへ帰るために
それは、、、なんで、、、
私も同じだ
故郷へ、仲間のもとへ帰りたい
アルバートの顔がくしゃっとなった
その拍子に涙が一筋こぼれ落ちたとき、桜桃の心は決まった
「俺が救ってやる」
ありがとう
後をよろしく頼む
それでは、また会う日までご機嫌よう
ああ、またなアルバート
いつか飯でも食おうや
噴煙が生き物のように蠢いてアルバートと神輿を飲み込んだ
ラスボスの胎動を感じた桜桃は少し怖気付く
その肩に息子の手が優しく触れた
親父
俺も頼りにするぜ
桜桃はフッと微笑して頷いた
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