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旅立ち
22 第三のミステリースポットへ
しおりを挟む陽炎の中を進んでいると波が激しく荒れてきた
プレイヤーは、たとえ転んだとしても、システムにより海に投げ出されることはない
ところで、息子は親父の荒い運転によって右へ左へ転がされていた
面白がって、や、もしかしたら運転上手と勘違いしているのかも知れない
文句を言ってやりたくても言えず、目的地までただ転がり続けるハメになった
やがて、海上に突き出た銀の装飾が目立つ銅色の楼閣へ辿り着いた
海賊船は速度を緩めず、重厚な鋼の門をぶち破って侵入した
重い音を立ててマストがへし折れて、ゆっくりと背後に倒れた
息子はひっくり返って、海賊船はここで役目を終えた
天井が遥か遠く吹き抜けになっていて、一階に床はない
正面には幅の広い赤い絨毯の敷かれた階段と昇降機があって、ずっと上まで、一巡りする廊下に左右三つずつ扉が並んでいる
と、いつの間にか元気を取り戻した猫研究同好会の面々が廊下の手すりに素早く鉄板を固定して、アルバートを先頭に神輿をせっせと運び出している
ああー!
それを桜桃が目敏く発見して指さした
追いかけようと走り出したところへ海中から海猫のネコツキが飛び出して行手を阻む
みゃー、なのか、にゃー、なのか
彼らは鳴き声を上げて激しい突風を巻き起こし、全身が禿げるほど羽毛を散らかした
その妨害は視界を奪い、ひっくり返った桜桃を羽毛で埋めるほど
それが終わる頃には猫研究同好会の面々を完全に見失った
また逃げられた!
桜桃は口から羽毛を吹き出して声を荒らげた
そんなこと言ってる場合じゃないぞ
足元から不安になる怪しい揺れが伝わる
船が沈みます!急いで脱出しましょう!
という警告が出た
「え!ややばいやばいしんししずっぞおおお!!」
もちろんプレイヤーが脱出するまで沈むことはない
しかし親父はゲームなんてもの遊んだことはなく、そんなご都合など知らないので、素直に大パニックを起こして息子の手を引いて疾走した
沈む海賊船を見送りながらやっと、息子はその手を振り払った
ふー、、、危機一髪だったな
あとは上まで行ってボスと戦うだけなんだけど、途中の部屋にアイテムがあるかも知れないから
別にいいや
それより急ごう
ゲームだから急ぐ必要はないよ
関係ない
あいつらが悪いことする前に何とかしなきゃいけないだろう
とは言え、どうしたって間に合わないんだけどな
と息子は心の中で呟いた
桜桃は跳ぶように正面階段を上がると、古い型の昇降機のボタンを連打して呼び出し最上階を目指す
しかし、そこはまだ最上階ではなかった
あれ?ここが最上階なのか?
反対側から外に出て、外階段で屋上へ上がる
塔の中を上がるから怖くはないよ
へー
じゃあ、せっかくだし寄り道して行くか
寄り道すんの?
お前が勧めたんじゃないか
そうだけど
急ぐんじゃなかったのかよ
どっちなんだ!
どうすりゃいい!
いちいち怒鳴んなって
寄り道して行こう
ここで補足
取っていいアイテムはマークが付いていてアイテムボックスに入るが、ダメなのものは取れませんと案内が出てアイテムボックスには入れられないしマップ移動も出来ない
さて、桜桃の提案で右回りに部屋を一巡することに決まった
まずはウサギの印が扉に描かれた部屋に入った
まるでウサギ小屋のようで、宝箱からは薬草が手に入った
これは状態異常を回復するアイテム
ここから先は状態異常を付与する敵が増えてくる
変な部屋しかないぞ
桜桃が愚痴をこぼすのも仕方ない
うさぎ、ひつじ、うま、とら、いぬ、うし
ここまで人の部屋とは趣の異なる内装だった
そこで薬草にコイン、素早さと命中率の上がるアクセサリー、そしてホネガムが見つかった
そうして最後に訪れたのは猿の部屋である
特にここは嫌な予感がする
アルバートを思い出すからな
嫌いなの
嫌いじゃあないが、あいつは怖い
猿にビビってどーすんだよ
ビビってるわけじゃない
お父さんは子供のとき猪と闘ったことがあるんだぞ
それ何回も聞いた
恐る恐る扉を開けると意外
机やタンスに本棚と人間が利用する家具が揃っていた
中へ進んで桜桃があるものを発見した
それは机に置かれた一枚の写真だった
少し色褪せてはいるが、大事に写真立てに収められている
綺麗なお寺の前、扉に描かれていたのと同じ動物達が写っていた
そのうち二匹はよく知るアルバートとエーデルワイスである
これは一体、、、
この人は誰だ?
その中心に若い僧が一人いた
錫杖に寄りかかって柔和な笑顔で立っている
誰だ?
さてな
アルバートに訊いてみたら
これは特別なイベントを起こすためのヒントだ
息子は然りげ無く親父を手伝ってやる
その為に一度このゲームを自力でクリアした
あいつ答えてくれっかなあ
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