いとしのチェリー

旭ガ丘ひつじ

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旅立ち

8 図書館

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桜桃は都にある図書館へやって来ていた
煉瓦造りの綺麗な建物は住宅街の外れにある林の中に、ひっそりと佇んでいた

メニュー画面のヘルプを見ている時に図書館があることを知り、マップでその場所を確認して真っ直ぐに向かった

目的は、第一のミステリースポットに向かう道中の中ボスと戦う為、迷いの森の攻略方法を知ることだった
しかし芳しくない

昔そこには村があった
大人たちは子供が森で迷わぬように動物達に案内をさせた

というように具体的な攻略方法は書かれていなかった
もう面倒になった桜桃は本を棚にしまった
見上げると、ゲームのこうりゃくはこちらで、という案内が書かれている
それを訝しげに睨んで、ふいとそっぽを向いた

館内の中心に戻って、そこに置いてあるふかふかのソファーに腰を沈めた
そして、モリネズミ今月号に目を落とす
ネズミといった「げっし目」は、なんと哺乳類の半分を占める
主に、その齧歯目に注目したゲーム内でしか読めない月刊誌こそモリネズミである

桜桃はネズミが好きだった
子年生まれなのだ

今月号はトウキョウトガリネズミというホッカイドウのモグラを特集していた
つまり齧歯目ではないのだが、、、
彼はまだまだ未知の多い動物で、その生態とグラビアにしっかり目を通した

そうして満足しているところへ息子からメッセージが届いた
夜の七時には合流しようとのこと

最初のボスは一緒に戦ってくれるらしい
それならば、まず迷いの森の攻略を手伝ってくれりゃいいのに、と一瞬思ったが、息子に頼りっぱなしというのはプライドが許さない

息子に中ボスは倒しておくと送り返した
モリネズミ今月号にさよならを告げて桜桃は旅立つ

昼飯にカツ丼をかきこんだ

それから卯月山までやって来た
今日は仲間の二人も連れている
おたふく侍ともへじろうには大いに期待している

道中に出てくるキボリグマやマルイノシシを倒しながら、どんどん山道を登ってゆく
やがて、迷子に注意という看板を見つけた

ここが迷いの森
広場を中心に道が十字に伸びていて、その先は薄暗く見通しがきかない
正しい道を選ばなければ入口へ戻るという、まあゲームによくある仕様になっている

桜桃はまた適当に進んでみた
ダメだった
進む
戻る
進む
戻る
進む
戻る
進む戻る
進む戻る進む戻る

「ああ、、!あああ、、、!!」

とうとう桜桃は頭を抱えて膝をついた
どうすればいいのか全く分からず、考えあぐねて、無性に腹が立つ
と、そんな彼の肩をおたふく侍が優しく叩いた

彼女はある一点を指さしている
何かに気付いたらしい
そこへ向かってみると、木の根元にウサギの陶器が置いてあるのを見つけた
もへじろうが、進んでみよう、という風に先を促す

桜桃は素直に従って、うさぎの陶器の置いてある道を選んだ
しばらくして広場に着いた
そこで気付く
注意書きの看板がない
それは先へ進んだことを示していた

にっこり

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